自覚

僕の手元の折り紙を、期待に満ちた瞳で凝視していた。折り紙を完成して見せるたび、彼女は大袈裟なほどにたくさん褒めてくれて、気分がよかったのを覚えてる。

襧豆子は長女だから、下のきょうだいの面倒をよく見ていたらしい。それを後に炭治郎から聞いた。


『襧豆子は、食べ物でなにが一番好き?』

『うーん………いっぱいある…けど、こんぺーと!』

『金平糖か。甘くて美味しいよね。きらきらしてて綺麗だし』

『う、うん!…むーちろーは?』

『僕はね、ふろふき大根』

『ふろふき、だい…こん』

『そう。大根はこれだよ』
完成した大根の折り紙を、襧豆子へ見せてみた。

『母さんが作ってくれるのも好きだったけど、兄さんが作ってくれたふろふき大根も、すごく美味しかったんだよ』
彼女はにこにこと頷いてくれた。それはまるで自分のことのように。いつも楽しそうに、話を聞いてくれたっけ。

ほんの少しの時間。ほんの少しの会話の中で、僕の言ったことを覚えてくれていた。人間に戻っても、僕との記憶を忘れないでいてくれた。

自分の胸の高鳴りを静かに感じる。
ゆっくりと鼓動を打ち始めた胸が、少しだけ苦しい。僕が黙っているのを見て、宇髄さんがまた笑って言った。


「だから、ちゃんとお礼を言わなきゃだよな」
大きな手のひらが頭に乗ってきて、髪をくしゃくしゃに撫で回される。

よけいなお世話、なんかじゃない。
うじうじ悩んでいる僕を見かね、宇髄さんはきっかけを届けに来てくれたんだ。
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