自覚

人間観察。主に襧豆子の座卓周辺ばかりに意識をとられ、自分がまだ何も食べていないことに気づいた。

料理の中にふろふき大根を見つけ、迷わず手に取る。出汁が効いた大根に、甘めの味噌がよく絡んでいて美味しかった。好物を口にしても、なぜだか気分は一向に晴れてこない。


僕は襧豆子とどんな話をしていただろう。

彼女が鬼だった頃、よく一緒に折り紙をして遊んでいたのは覚えてる。紙ひこうきを飛ばして見せてあげると、きらきらした瞳でもう一回と何度もせがまれた。精神状態が幼子のようだったから、おんぶをしたり、くすぐってみるだけでも無邪気に笑ってくれた。

けれど、今の襧豆子はれっきとした十四歳。僕と同い年の女の子だ。鬼の頃とまったく同じような接し方はできない。

………そうか。同い年だった。
今更なに言ってるんだと自分につっこんだ。

頭にあるのは襧豆子のことばかりなのに、彼女のことを想えば想うほど、体が動けなくなる。あらかじめ用意していたかのように、あれだけの褒め言葉が次々とでてくる善逸が、今は羨ましかった。
4/12ページ
スキ