伝えたい言葉
──。
───。
────。
あたたかくなった部屋と火鉢の音が、襧豆子を夢の中へ誘った。薬がよく効いているのか、熱に苦しむ様子もなく、すっかり熟睡しきっている。
そんな彼女の寝顔を見ていると、自分まで眠ってしまいそうだった。長い黒髪に手を伸ばすと、さらさらと指の隙間からこぼれおちた。
「かっこつかないなぁ…」
彼女の左手の薬指に視線をやり、自然とため息が出る。やっと咲き場所にたどり着けたというのに。
梅の花の指輪は少しだけ大きくて、彼女の白い指とわずかな隙間があった。
本当にかっこわるい。
こんな自分に、はたして彼女は何と言うのだろう。冨岡さんに諭した内容が、やまびこのように自分に返ってくるとは。自分に呆れてしまうのに、それでも彼女の反応を楽しみにしている気持ちもあった。まるでイタズラでもしかけた気分だ。
───はやく、起きないかな。
様々な想像をめぐらせるうちに、パチパチと心地よい火鉢の音が瞼を重くさせていく。体があたたかいのは、火鉢のおかげだけではない。起こさないように、襧豆子の左手をそっと握る。
君と過ごす本格的な冬を目前に、ゆっくりと目を閉じた。
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あたたかくなった部屋と火鉢の音が、襧豆子を夢の中へ誘った。薬がよく効いているのか、熱に苦しむ様子もなく、すっかり熟睡しきっている。
そんな彼女の寝顔を見ていると、自分まで眠ってしまいそうだった。長い黒髪に手を伸ばすと、さらさらと指の隙間からこぼれおちた。
「かっこつかないなぁ…」
彼女の左手の薬指に視線をやり、自然とため息が出る。やっと咲き場所にたどり着けたというのに。
梅の花の指輪は少しだけ大きくて、彼女の白い指とわずかな隙間があった。
本当にかっこわるい。
こんな自分に、はたして彼女は何と言うのだろう。冨岡さんに諭した内容が、やまびこのように自分に返ってくるとは。自分に呆れてしまうのに、それでも彼女の反応を楽しみにしている気持ちもあった。まるでイタズラでもしかけた気分だ。
───はやく、起きないかな。
様々な想像をめぐらせるうちに、パチパチと心地よい火鉢の音が瞼を重くさせていく。体があたたかいのは、火鉢のおかげだけではない。起こさないように、襧豆子の左手をそっと握る。
君と過ごす本格的な冬を目前に、ゆっくりと目を閉じた。
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