自覚
───大広間の机を、色とりどりの豪華な料理たちが埋めつくしていた。各々の机には、いくつかの飲み物も用意されている。一部の大人たちのためにと、お酒も置かれてあった。
今日は輝利哉様が、鬼殺隊の隊士たちに改めて感謝をしたいということで、宴会を催してくださった。鬼舞辻無惨を倒し、この世から鬼を滅することができたこと。療養していた隊士たちが、皆無事に回復できたこと。そして、戦死した仲間たちへの弔いもこめての、大規模な宴会になりそうだ。
真っ先にお酒へ手を伸ばしたのは宇髄さんだった。何杯飲んだのかなんて知らないけど、空いた酒瓶の数を見るかぎり、なかなかの量を飲んでいるにちがいない。それなのにお酒を飲む前と、さほど様子は変わらない。ずっと上機嫌のままだ。
不死川さんは静かに飲んでいたと思えば、いきなり冨岡さんの名を叫びながら本人に悪絡みをしだした。手にしていた鮭大根を取り上げられ、代わりにお酒を勧められている。冨岡さんは困惑してるみたいだけど、それでもなんだか楽しそうだった。
次に炭治郎たちのいる席を見やる。
彼は相変わらずの長男っぷりを発揮し、天ぷらばかり食べてる伊之助を注意していた。もちろん伊之助は全く聞いてなどいない。
宇髄さんの奥さんや蝶屋敷の女の子たちは、各々でおしゃべりを楽しんでいた。それでも、たまに空いた皿を片づけたり、奥から新しい食事を運んできてくれたりと、交代で動いてくれてるようだ。隊士たちの豪快な食べっぷりを見て、料理を追加してくれているらしい。気を使わせたことへの輝利哉様の謝罪も、女性陣たちの活気溢れる声が、すぐにかき消した。
周囲をぐるりと見渡す。たぶん、無意識に探してたんだと思う。桃色の麻の葉。艶やかな長い黒髪。心地のよい、あの凛とした声。視線をさ迷わせていると、特徴的な高音が耳に入ってきて、思わず顔をしかめそうになる。今まさに探している人物の名を口にしていたのだ。
「襧豆子ちゃ〜ん!」
「善逸さん。お手伝いありがとう」
「なんのなんの〜!襧豆子ちゃんのためならどんなことでも、この我妻善逸やりますよ!お任せくださいな!」
「善逸さん。それ落とさないでくださいね」
大広間へ順に入ってきたのは、襧豆子と善逸、神崎アオイの三人だった。料理が盛り付けられた皿をお盆に持っていて、卓上が最初の豪勢な状態に戻っていく。それを見渡した雛鶴さんが声をかけた。
「三人ともありがとう。料理も飲み物も足りてるようだし、みんなもうゆっくりしましょ」
襧豆子たちが席につくのと同時に、追加された天ぷらへ伊之助が飛びついた。大勢の叫び声が、騒がしい大広間をさらに騒がしくさせる。
今日は輝利哉様が、鬼殺隊の隊士たちに改めて感謝をしたいということで、宴会を催してくださった。鬼舞辻無惨を倒し、この世から鬼を滅することができたこと。療養していた隊士たちが、皆無事に回復できたこと。そして、戦死した仲間たちへの弔いもこめての、大規模な宴会になりそうだ。
真っ先にお酒へ手を伸ばしたのは宇髄さんだった。何杯飲んだのかなんて知らないけど、空いた酒瓶の数を見るかぎり、なかなかの量を飲んでいるにちがいない。それなのにお酒を飲む前と、さほど様子は変わらない。ずっと上機嫌のままだ。
不死川さんは静かに飲んでいたと思えば、いきなり冨岡さんの名を叫びながら本人に悪絡みをしだした。手にしていた鮭大根を取り上げられ、代わりにお酒を勧められている。冨岡さんは困惑してるみたいだけど、それでもなんだか楽しそうだった。
次に炭治郎たちのいる席を見やる。
彼は相変わらずの長男っぷりを発揮し、天ぷらばかり食べてる伊之助を注意していた。もちろん伊之助は全く聞いてなどいない。
宇髄さんの奥さんや蝶屋敷の女の子たちは、各々でおしゃべりを楽しんでいた。それでも、たまに空いた皿を片づけたり、奥から新しい食事を運んできてくれたりと、交代で動いてくれてるようだ。隊士たちの豪快な食べっぷりを見て、料理を追加してくれているらしい。気を使わせたことへの輝利哉様の謝罪も、女性陣たちの活気溢れる声が、すぐにかき消した。
周囲をぐるりと見渡す。たぶん、無意識に探してたんだと思う。桃色の麻の葉。艶やかな長い黒髪。心地のよい、あの凛とした声。視線をさ迷わせていると、特徴的な高音が耳に入ってきて、思わず顔をしかめそうになる。今まさに探している人物の名を口にしていたのだ。
「襧豆子ちゃ〜ん!」
「善逸さん。お手伝いありがとう」
「なんのなんの〜!襧豆子ちゃんのためならどんなことでも、この我妻善逸やりますよ!お任せくださいな!」
「善逸さん。それ落とさないでくださいね」
大広間へ順に入ってきたのは、襧豆子と善逸、神崎アオイの三人だった。料理が盛り付けられた皿をお盆に持っていて、卓上が最初の豪勢な状態に戻っていく。それを見渡した雛鶴さんが声をかけた。
「三人ともありがとう。料理も飲み物も足りてるようだし、みんなもうゆっくりしましょ」
襧豆子たちが席につくのと同時に、追加された天ぷらへ伊之助が飛びついた。大勢の叫び声が、騒がしい大広間をさらに騒がしくさせる。