君と僕の花(完)

時折こうして訪れる感覚は、俺が死者だからなのか、それとも俺とあいつが双子だからなのか、それはわからない。

けど確信できる。これだけはわかる。
あいつは数年後、きっとここに来るだろう。

もう痛みなんて感じないのに、感じてしまいそうなほど強く手を握りしめた。


無一郎。おまえはまだ来ちゃだめだ。
せっかくまた笑えるようになったんだから。

殴ってでも蹴り飛ばしてでも絶対に戻してやる。まだまだ幸せになってもらわないと困るんだから。俺の分まで───。




改めて決意をすると、また遠くから声が近づいてきた。


「──………ァ…オギャア…オギャア…!」
先ほど聞いた赤ん坊の声よりも、少しだけ高いような声音だ。さっきの赤ん坊の声と、似ているようで似ていない。不思議に思っていると、すぐにひとつの答えにたどり着いた。


「え………」


「「双子!?」」

自身の声に被さるように。
弟の声が聞こえた気がした。


「………ふふっ、あはははっ…!」
大慌ての無一郎の姿がまた脳裏に浮かんだ。

その光景の中には、出産を終えた襧豆子さんもいる。汗を流して疲れきっているが、それでも元気に笑っていた。双子を授かっていたことをどうやら内緒にしていたらしく、百面相する夫を見て嬉しそうだった。


「………よかったなぁ。無一郎」

空を見上げる。



青空に浮かぶのは、思い出の霞雲。
優しい風が自身を包んでいく。
あたたかい、日だまりの匂い。


心からの祈りを届ける。


どうか家族みんな幸せに。
二人の未来が優しさで包まれますように。


ふわり。

白い花がゆっくりと舞い落ちてきた。
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