繋いでいく奇跡

───二人の祝言は、僕が十七を迎えた夏に行なう予定にしている。縁側に座り、足をぷらぷらさせながら、襧豆子はまだ指輪を眺めていた。

「…はやく、籍入れたいね」
彼女はまるで心を読んだように、僕の胸の内と全く同じことをつぶやいた。歯がゆいほどに、その日がくるのを今か今かと待ち望んでいる。

「襧豆子、おいで」
両手を広げると、素直に僕の胸に入りこんできた。背中に回された手は、愛おしいほどに小さい。

「指輪、可愛い。本当にありがとう」

「こちらこそ。受け取ってくれてありがとう」
頬を擦り寄せてくる襧豆子を抱きしめて、お互いの体温を交換するかのように、その熱を噛みしめた。

「私も無一郎くんに、何か贈りたいな」

「…その時がきたら、ちゃんと貰うよ」
胸に顔を埋めていた襧豆子が、不思議そうに見上げてきた。その時とはどういう意味かを、聞こうとしたんだろう。そのまま口づけて、襧豆子の唇を優しく捕える。小さな唇から漏れる吐息は、僕を惑わす媚薬のようなものだった。

全てを投げ捨てて、このまま溺れていってしまいそうなほど、惹きつけられる。離したくないと本能が言っている。ゆっくりと味わうかのように唇を甘噛みしていると、襧豆子の吐息がだんだん荒くなってくる。

「…ん…っ…ぁ……ひゃっ!」
たまらなく首すじに吸いつくと、また可愛い声を上げるから、このまま押し倒してしまいたい衝動に駆られた。次第に襧豆子の首すじに、赤い花びらができあがる。

赤い花びらと、梅の花が咲く指輪。

誰にも渡さない。
───僕のものだという証。

「十七になったら、襧豆子の全てを僕にちょうだい」


耳元で囁くと、水気を帯びた瞳と重なる。
愛しい人がゆっくりと頷いた。
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