繋いでいく奇跡

襧豆子の長女っぷりは流石と言ったところだった。しっかりと家のことを炭治郎や母と担ってきたのだろうと、その熱弁ぶりにはしばし呆気を取られる。

指輪の値段に対して米がこれだけ買えるとか、着物が何枚買えるとか、頭の中ですばやい計算をして力説し始めた。そういえば、家のお金の管理を任されていた話を以前に聞いたことがある。それでよくそろばんを破壊した話は、竈門兄妹との会話でよく話題に上がっていた。

好みの品物を見つけては、うっとりと眺めている店内の女性客に対し、襧豆子の話はまるで夢から覚めさせるようなものに見える。その差がおもしろくて、気づけば声にだして笑っていた。

絶対に男の僕よりも男らしい。ただただ真面目で、頭の固い彼女がおかしくて、それでいて愛おしいと思えた。

「…っ、あははははっ…!」

「だって、これからお金も必要だし、サイズなんて直さなくても、私気にしないよ─」襧豆子の唇に人差し指をあてて、話の続きを制した。不意打ちに弱い恋人は、すぐに押し黙る。

「襧豆子は僕の奥さんになる人でしょ?それを証明する大事な指輪なんだから、ちゃんとしたのをつけてほしいんだよ。ね?」

そう言うと、みるみるうちに彼女の頬が赤く染まっていく。口づけを堪えた僕を、誰かほめてほしい。ようやく心から納得してくれたのか、彼女はゆっくりと頷いた。

気づかぬうちに、店の奥から戻ってきた店員が僕たちのすぐそばで立っていた。

「可愛らしいご夫婦ですね」

ほほえましいものを見たと言わんばかりに、店員に笑いかけられる。恋人はますます顔を赤くさせて、僕の袖を掴んできた。
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