繋いでいく奇跡
*無一郎side*
梅の花を咲かせた指輪が、襧豆子の左手の薬指にその存在を示していた。左指をぴんと伸ばし、彼女は鼻歌でも歌いだしそうなほどに上機嫌で指輪を眺めている。
見覚えのない指輪がはめられていることに、彼女は最初笑ってしまいそうなほどに驚いていた。ぴったり指にはまってさえいれば、こんな自分でも少々はかっこよくついたかもしれない。しかし勢いに任せて買った指輪は、襧豆子の指にわずかな隙間を作っていた。
サイズを直しにいこうという僕の提案に、彼女が納得してくれるまでは時間がかかった。倹約家の性格がゆえだろうと思っていれば、大事そうに指輪を包んで恋人は言う。
『…無一郎くんが選んでくれたのが、この指輪でしょ?デザインも大きさも、無一郎くんが決めてくれたんだもん。このままがいい…』
頬を赤らめてそんな可愛いことを言うのだから、自分としてはますます指輪をつけてほしくなる。この子には自分という存在がいること。梅の花には、その証明になってもらわなければいけなかった。
───やっと彼女を宝飾店に連れていけたのは、今から数週間前だった。
店員が準備を進めている間に、襧豆子は初めて入った宝飾店の中を興味津々で見ていた。そんな姿が可愛らしく、やっときちんとした指輪を贈れることに安堵していた。
そして油断していた。迂闊だった。
指輪の陳列棚を見ていた襧豆子が、ゆっくりとこちらを振り返って言った。心なしか、青ざめた顔色で。
「………無一郎くん。指輪って、こんなに高いの?」
梅の花を咲かせた指輪が、襧豆子の左手の薬指にその存在を示していた。左指をぴんと伸ばし、彼女は鼻歌でも歌いだしそうなほどに上機嫌で指輪を眺めている。
見覚えのない指輪がはめられていることに、彼女は最初笑ってしまいそうなほどに驚いていた。ぴったり指にはまってさえいれば、こんな自分でも少々はかっこよくついたかもしれない。しかし勢いに任せて買った指輪は、襧豆子の指にわずかな隙間を作っていた。
サイズを直しにいこうという僕の提案に、彼女が納得してくれるまでは時間がかかった。倹約家の性格がゆえだろうと思っていれば、大事そうに指輪を包んで恋人は言う。
『…無一郎くんが選んでくれたのが、この指輪でしょ?デザインも大きさも、無一郎くんが決めてくれたんだもん。このままがいい…』
頬を赤らめてそんな可愛いことを言うのだから、自分としてはますます指輪をつけてほしくなる。この子には自分という存在がいること。梅の花には、その証明になってもらわなければいけなかった。
───やっと彼女を宝飾店に連れていけたのは、今から数週間前だった。
店員が準備を進めている間に、襧豆子は初めて入った宝飾店の中を興味津々で見ていた。そんな姿が可愛らしく、やっときちんとした指輪を贈れることに安堵していた。
そして油断していた。迂闊だった。
指輪の陳列棚を見ていた襧豆子が、ゆっくりとこちらを振り返って言った。心なしか、青ざめた顔色で。
「………無一郎くん。指輪って、こんなに高いの?」