繋いでいく奇跡

お供えと掃除を終えた墓前で居住まいを正した。軽く前かがみになり、顔を伏せて手を合わせる。目を閉じだした彼と一緒に、ご家族へ語りかけた。

『初めまして。竈門襧豆子と申します。僭越ではありますが、この度無一郎さんとの良縁に恵まれ、ご挨拶へと参りました』

こうして心の中ですらすらと言えても、きっと本人たちを目の前にすれば、緊張で言葉なんて出てこなかっただろう。兄と同じ赤い瞳をしていたというお父さん。我が子の結婚を、自分のことのように喜んでくれただろうか。働き者だったというお母さんに、時透家の味を教えてもらいたかった。

そして、兄の有一郎さん。
ご両親が亡くなって、弟の無一郎くんを必死で守ってきたに違いなかった。自分と立場を置き換えてみても、それは容易に想像がつく。

彼の家族に会ってみたかった。
私の家族にだって会ってほしかったのに。
そんな想いがどんどん膨らんでいった───。
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