繋いでいく奇跡

───あのときの恋人の顔を思い出して、自然と口元が緩む。あの後、炭治郎が改めて僕と襧豆子に祝いの言葉をくれた。天にも昇る気持ちというのは、ああいうことをいうんだ。襧豆子が泣いて、つられるように炭治郎が泣いて、引き継がれていくように再び僕も目頭が熱くなった。

…襧豆子と結婚。
しみじみとその事実を噛みしめる。
また空を見上げると、白い雪の粒が下界に降りてくるのが見えた。

「降ってきちゃった」
雪を見ると、一気に気温が下がった気になる。実際に撫でる程度だった冷気が、肌に張りつく氷のようなものに変化していた。

今日はもう自室に戻ろう。そう思い立ち上がると、ふと門前から気配を感じた。誰かが門前で佇んでいる。襧豆子と会うのは明日だから、襧豆子ではない。仮に別の誰かだとしても、門前で立ち尽くすことなく、声をかけながら土地に入ってきているはずだ。この家に入ってくるのを躊躇する気配が、その人物からは感じとれた。

門へ近づき、警戒しながら扉を開ける。灰色がかった景色の中、煌々と光を灯すような黄色い頭がすぐ近くにあった。

「…え、善逸…?」
ふてくされるように、睨みつけるように、我妻善逸がそこに立っていた。

「よぉ。ちょっと…話があるんだけど」

さほど驚きはしなかった。どこかで予感していたんだ。この人とは、いつか対峙する日がくるのだろうと。
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