繋いでいく奇跡
「襧豆子でないとだめなんです。必ず幸せにすると約束します。結婚を認めてください。お願いします!」
畳の跡がつきそうなほどに額を押しつけて、誠心誠意の頭を下げた。心臓の鼓動が早くなり、祈るように固く目を閉じる。顔を上げたら、炭治郎が落胆した表情で自分を見ているかもしれない。そんな想像を必死で振り払う。
固唾を呑んで、その瞬間を待った。
しかし、いくら待っても反応が返ってこない。不思議に思い恐る恐る顔を上げると、炭治郎は僕に負けないくらいの深いお辞儀をしていた。
「…時透くん…襧豆子を…よろしくお願いします…!」
肩を震わせながら、涙声でそう言った。やりきれない思いが込み上がり、駆け寄って炭治郎の肩を掴んだ。
「炭治郎、顔上げてよ!僕が頭を下げなきゃいけないんだから…!」
「…いや」
ゆっくりと顔をあげた友人は、やはり父さんと同じ赤い瞳をしていて、穏やかな表情を僕に向けた。
「時透くんになら、襧豆子を安心して任せられる」
「…寿命のこと、気にならないの?」
思っていたことを率直に聞いた。自分は間違いなく、襧豆子より先に死んでしまうのに。それも、いくばくもないあと数年後に。そうしたら彼女をひとりにしてしまうのに。
「…好き合っている二人が夫婦になるのは、ごく自然な流れだよ。寿命のことなんて関係ない。死ぬまで一緒にいたい。そう思える相手と出会えたなんて、こんな奇跡はないんだから」
奇跡。その言葉が、僕の懐へ優しく降ってきた。肩に手を置かれたときには、いつもの慈愛に満ちた彼の瞳に戻っていた。
「襧豆子と時透くん、二人が選んだ道なんだ。俺からは祝福の言葉以外、言うことなんてないよ」
本当にそっくりな兄妹だ。炭治郎と襧豆子、二人の姿が重なる。多幸感と安心感が体中を巡り、自身の瞳にも涙があふれていた。
「…ありがとう…っ…炭治郎…!」
嗚咽を堪えながら絞りでた声と、鼻をすする音が二人分、竈門家の居間に流れていった。
畳の跡がつきそうなほどに額を押しつけて、誠心誠意の頭を下げた。心臓の鼓動が早くなり、祈るように固く目を閉じる。顔を上げたら、炭治郎が落胆した表情で自分を見ているかもしれない。そんな想像を必死で振り払う。
固唾を呑んで、その瞬間を待った。
しかし、いくら待っても反応が返ってこない。不思議に思い恐る恐る顔を上げると、炭治郎は僕に負けないくらいの深いお辞儀をしていた。
「…時透くん…襧豆子を…よろしくお願いします…!」
肩を震わせながら、涙声でそう言った。やりきれない思いが込み上がり、駆け寄って炭治郎の肩を掴んだ。
「炭治郎、顔上げてよ!僕が頭を下げなきゃいけないんだから…!」
「…いや」
ゆっくりと顔をあげた友人は、やはり父さんと同じ赤い瞳をしていて、穏やかな表情を僕に向けた。
「時透くんになら、襧豆子を安心して任せられる」
「…寿命のこと、気にならないの?」
思っていたことを率直に聞いた。自分は間違いなく、襧豆子より先に死んでしまうのに。それも、いくばくもないあと数年後に。そうしたら彼女をひとりにしてしまうのに。
「…好き合っている二人が夫婦になるのは、ごく自然な流れだよ。寿命のことなんて関係ない。死ぬまで一緒にいたい。そう思える相手と出会えたなんて、こんな奇跡はないんだから」
奇跡。その言葉が、僕の懐へ優しく降ってきた。肩に手を置かれたときには、いつもの慈愛に満ちた彼の瞳に戻っていた。
「襧豆子と時透くん、二人が選んだ道なんだ。俺からは祝福の言葉以外、言うことなんてないよ」
本当にそっくりな兄妹だ。炭治郎と襧豆子、二人の姿が重なる。多幸感と安心感が体中を巡り、自身の瞳にも涙があふれていた。
「…ありがとう…っ…炭治郎…!」
嗚咽を堪えながら絞りでた声と、鼻をすする音が二人分、竈門家の居間に流れていった。