繋いでいく奇跡
自宅の縁側で空を見上げる。
寒空の下、吐く息が上空に向かって消えていくのを目で追った。灰色に覆われた雲が空を支配していくと、また雪が降りそうだとぼんやり考える。空を眺めていたら落ちついてくるかと思ったが、まだ高揚感は収まらず、胸が熱い。
思いきり深呼吸すると、熱気冷めやらぬ体が、冷たい空気を肺に入れることで少しやわらぐ。
───今日、炭治郎と襧豆子の住む山へ赴いた。今日だけは炭治郎のことを友人として見れず、鬼狩りをしていた頃とは、また別の緊張感を抱えていた。襧豆子との結婚を許してもらうための挨拶で、気づけば自分は冬にもかかわらず手汗をかいていた。
余命数十年の僕が襧豆子との結婚を申し出たら、どう考えても悲痛に歪んだ炭治郎の顔しか思い浮かばなかった。炭治郎も自分と同じ痣者だ。だからなおのこと、共に年老いていけるような相手の方が、家族として安心できるはずなのだ。
竈門家に招かれるまま家の中へ入ると、すぐに炭治郎と善逸、伊之助は何かを察知したらしい。同席したがる襧豆子を制し、まずは炭治郎と二人きりにさせてもらった。
竈門家の居間。大切な女の子の、大切な兄と向かい合った。彼の瞳の奥底は、僕の心を見定めようとするかのように、真っ直ぐと伸びてくる。まるで怒っているようにも見える表情に、一瞬だけ怯んだ。だが、この気持ちを崩す気など微塵もない。
「この命が続く限り、襧豆子を守り抜くと誓います。命が尽きたって、襧豆子のことだけを想い続けます」
早くに死にゆく者が何を言っているのか。
炭治郎じゃない、僕が僕自身に問いかけていた。一呼吸置いて、今一度炭治郎を見据える。
寒空の下、吐く息が上空に向かって消えていくのを目で追った。灰色に覆われた雲が空を支配していくと、また雪が降りそうだとぼんやり考える。空を眺めていたら落ちついてくるかと思ったが、まだ高揚感は収まらず、胸が熱い。
思いきり深呼吸すると、熱気冷めやらぬ体が、冷たい空気を肺に入れることで少しやわらぐ。
───今日、炭治郎と襧豆子の住む山へ赴いた。今日だけは炭治郎のことを友人として見れず、鬼狩りをしていた頃とは、また別の緊張感を抱えていた。襧豆子との結婚を許してもらうための挨拶で、気づけば自分は冬にもかかわらず手汗をかいていた。
余命数十年の僕が襧豆子との結婚を申し出たら、どう考えても悲痛に歪んだ炭治郎の顔しか思い浮かばなかった。炭治郎も自分と同じ痣者だ。だからなおのこと、共に年老いていけるような相手の方が、家族として安心できるはずなのだ。
竈門家に招かれるまま家の中へ入ると、すぐに炭治郎と善逸、伊之助は何かを察知したらしい。同席したがる襧豆子を制し、まずは炭治郎と二人きりにさせてもらった。
竈門家の居間。大切な女の子の、大切な兄と向かい合った。彼の瞳の奥底は、僕の心を見定めようとするかのように、真っ直ぐと伸びてくる。まるで怒っているようにも見える表情に、一瞬だけ怯んだ。だが、この気持ちを崩す気など微塵もない。
「この命が続く限り、襧豆子を守り抜くと誓います。命が尽きたって、襧豆子のことだけを想い続けます」
早くに死にゆく者が何を言っているのか。
炭治郎じゃない、僕が僕自身に問いかけていた。一呼吸置いて、今一度炭治郎を見据える。
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