溢れる想いの先に
「そもそも、襧豆子の指のサイズ知ってるんですか?」
「…サイズ?」
「…ちゃんと指にぴったりのものでないと。大きすぎたら外れちゃうし、小さすぎたら入らないですよ」
今言われて気づいたとばかりに、再び目をまん丸くさせた。つい最近の自分を見ているようで、冨岡さんもサイズを知らないことにひそかに安堵した。
「もし贈ったときにサイズが違えば、買い直せばいいのではないか?」
「そんなのだめですよ。買い直すだなんて、よけいに困らせるだけです。ただでさえ遠慮してしまう子なんですから、襧豆子がなるべく気を使わないものがいいです。我慢を我慢と思わない子だし、ちゃんと汲み取ってあげないとすぐに………!」
しまった、と口走りすぎたことに気づき、慌てて口許を抑えた。なんで自分が偉そうに助言まがいなことをしてるんだ。顎に手をかけ思案する仕草の後、冨岡さんが口を開く。
「そうか…時透は襧豆子のことをよく知っているんだな」
「なんとなくそうだろうなってだけで…」
「いや、そのとおりだと思う。指輪はやめよう」
納得したらしき冨岡さんは、そう言ってあっけなく引き下がった。棚から離れ、店を出ていこうとする背中を目で追っていると、入り口から足を踏みだす寸前で振り返った。
「指輪は、おまえが襧豆子に贈るといい」
「!?なっ……!」
そう言い残し、羽織をひるがえしながら外へ走り去っていく。振り向きざまに見えた元水柱は、優しい含み笑いを浮かべていた。
───やられた。
茫然とした思考の中で、直感的に思った。
まるで試された気分だ。じゃあ僕が何も言わなければ、あのまま冨岡さんは指輪を買っていたというのか。
力が抜けて、思わず頭を抱えた。
『指輪は、おまえが襧豆子に贈るといい』
冨岡さんの言葉が胸の中で反響していた。
整列された指輪たちへ視線を向ける。自分にはもうあの指輪しか目に入らなかった。
梅の花は、ずっと咲き場所を探している───。
「…サイズ?」
「…ちゃんと指にぴったりのものでないと。大きすぎたら外れちゃうし、小さすぎたら入らないですよ」
今言われて気づいたとばかりに、再び目をまん丸くさせた。つい最近の自分を見ているようで、冨岡さんもサイズを知らないことにひそかに安堵した。
「もし贈ったときにサイズが違えば、買い直せばいいのではないか?」
「そんなのだめですよ。買い直すだなんて、よけいに困らせるだけです。ただでさえ遠慮してしまう子なんですから、襧豆子がなるべく気を使わないものがいいです。我慢を我慢と思わない子だし、ちゃんと汲み取ってあげないとすぐに………!」
しまった、と口走りすぎたことに気づき、慌てて口許を抑えた。なんで自分が偉そうに助言まがいなことをしてるんだ。顎に手をかけ思案する仕草の後、冨岡さんが口を開く。
「そうか…時透は襧豆子のことをよく知っているんだな」
「なんとなくそうだろうなってだけで…」
「いや、そのとおりだと思う。指輪はやめよう」
納得したらしき冨岡さんは、そう言ってあっけなく引き下がった。棚から離れ、店を出ていこうとする背中を目で追っていると、入り口から足を踏みだす寸前で振り返った。
「指輪は、おまえが襧豆子に贈るといい」
「!?なっ……!」
そう言い残し、羽織をひるがえしながら外へ走り去っていく。振り向きざまに見えた元水柱は、優しい含み笑いを浮かべていた。
───やられた。
茫然とした思考の中で、直感的に思った。
まるで試された気分だ。じゃあ僕が何も言わなければ、あのまま冨岡さんは指輪を買っていたというのか。
力が抜けて、思わず頭を抱えた。
『指輪は、おまえが襧豆子に贈るといい』
冨岡さんの言葉が胸の中で反響していた。
整列された指輪たちへ視線を向ける。自分にはもうあの指輪しか目に入らなかった。
梅の花は、ずっと咲き場所を探している───。