溢れる想いの先に

店の入り口が開くと外の冷気が店内になだれこんでくる。出入りする客は皆慌てて閉めて、甘味に満足して帰る者と、今から甘味を楽しむ者でわかれた。

椀に残っているしるこを飲みほす。餡の甘さと、つぶあんが数粒喉に張りついた。一杯目と二杯目は美味しいと楽しめたが、三杯目になると、どうにか食べきらなければと気持ちが変わっていた。せっかく不死川さんが甘味処に誘ってくれたから、寒い時期に人気だというしるこを勧められるまま食べた。

「もう一杯いるかァ?」

「………大丈夫です。ありがとうございます」
不死川さんはすでに六杯目を終えていた。


誘ってくれたことと奢ってくれたことへの礼を述べ、不死川さんとは甘味処の前で別れた。

「今度嬢ちゃんも連れてきてやれェ」
そう言い残し、背中ごしに手を振って帰っていく。竈門妹から嬢ちゃんへ呼び方が変わっていた。

同い年ぐらいの女の子が二人、寒さに身を震わせながら甘味処の中へ吸いこまれていく。それを横目で見ながら、ふと彼女のことが浮かんだ。

──今、なにしてるんだろう。
帰ろうとした足が、自然と町の大通りへ向かっていた。
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