君よ進め

町に戻り、まずはひったくりから被害に遭った場所へ向かった。ここが一番可能性が高いと踏んでいたけど、見当たらない。

次に呉服屋、最後に仕立て屋と順番に回っていった。佳代さんや呉服屋の店員さんに訊ねてみても、双方とも首を振って心当たりはないという。通りを何度も往復しているうちに、少しずつ辺りを闇が侵食してくる。地面を照らすものがなくなって、これでは小瓶が転がっていても気づけない。目を凝らして地面を探しても、手探りで探しだそうと試みても、何も見つからなかった。

無一郎くんに初めてもらった思い出の金平糖。もうあれしか、私と無一郎くんを繋いでるものはないのに。泣きそうになりながら鼻をすすった。

家に置いておけばよかった。今さら後悔したって遅い。善逸さんまで巻き込んでしまって、本当に最低だ。あと少し、あと少しだけ。そう思っていても、これ以上は時間切れだった。本格的に辺りが闇に染まり、町にぽつりぽつりと街灯が点き始めていた。

…明日また来てみよう。


もう一度呉服屋さんを探すと言ったきり、善逸さんは戻ってきていない。呼び戻しに行こうと店の方角へ足を向けると、善逸さんの走ってくる姿が見えた。

「襧豆子ちゃん!これじゃない!?」

息を切らせて駆け寄ってきた善逸さんの手には、身知った小瓶が握られていた。からん、と音が鳴る小瓶。数粒しか残っていない金平糖。

それを確認できたとき、力が抜けてまた泣きそうになってしまった。
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