君よ進め
もう少し厚着をしてくればよかった。
自然と体が縮こまって、歩く速度が上がった。頬を撫でる風が、水のように冷えきっている。今日の空にも分厚い雲が広がっていて、しばらく太陽を見ていないような気がした。
もう少ししたら火鉢を出そう。そんなことを考えながら町までの道のりを急ぐ。
今日は頼まれていた帯の修繕がおわったので、お世話になっている仕立て屋へ届けに行く日だった。今まで着物や羽織等、いろんなものを修繕してきたが、不合格をもらったことは一度もない。それでもこんな日は必ず緊張する。女将の佳代さんの目利きに叶っているかどうか、引き渡しのときは心臓が脈打って痛いくらいだった。
軽く深呼吸をする。
歩くたび、懐にしまってある金平糖が小瓶の中でからからと揺れる。無一郎くんがそばにいてくれてるようで、こんなときはいつも勇気をくれた。
「───うん!合格!さすが襧豆子ちゃん!」
「…よ、よかったぁ…!」
佳代さんからの"合格"という二文字をもらって、やっと肩の荷がおりる。へなへなと座りこむ私を見て、佳代さんが豪快に笑った。
自然と体が縮こまって、歩く速度が上がった。頬を撫でる風が、水のように冷えきっている。今日の空にも分厚い雲が広がっていて、しばらく太陽を見ていないような気がした。
もう少ししたら火鉢を出そう。そんなことを考えながら町までの道のりを急ぐ。
今日は頼まれていた帯の修繕がおわったので、お世話になっている仕立て屋へ届けに行く日だった。今まで着物や羽織等、いろんなものを修繕してきたが、不合格をもらったことは一度もない。それでもこんな日は必ず緊張する。女将の佳代さんの目利きに叶っているかどうか、引き渡しのときは心臓が脈打って痛いくらいだった。
軽く深呼吸をする。
歩くたび、懐にしまってある金平糖が小瓶の中でからからと揺れる。無一郎くんがそばにいてくれてるようで、こんなときはいつも勇気をくれた。
「───うん!合格!さすが襧豆子ちゃん!」
「…よ、よかったぁ…!」
佳代さんからの"合格"という二文字をもらって、やっと肩の荷がおりる。へなへなと座りこむ私を見て、佳代さんが豪快に笑った。