この街の奴らはput ya hands up!
。*゚+──おばけが苦手なメンツでおばけ屋敷に入る話
ある人気テーマパークに、新しいアトラクションがオープンした。今回そこのキャストの衣装をデザインした飴村乱数は、テーマパークに特別招待され楽しい時間を満喫している。
「ボクが担当した衣装、すっごく可愛かったな〜! お客さんも楽しそうだったし、幻太郎と帝統にも見て欲しかったよ〜」
夢野幻太郎は創作の為の取材、有栖川帝統は一世一代の大勝負があるとの事で、珍しく今日は乱数一人だった。
「やっぱひとりはツマンナイし、誰か今から来てくれる人居ないかなぁ」
そう呟きながら、乱数がポケットからスマートフォンを取り出した時、誰かが彼の名前を呼んだ。
「あれぇ? ジューシー、どったの?」
乱数に声を掛けた主、それはナゴヤディビジョンの四十物十四だった。十四は今にも泣き出しそうな表情で、乱数に懇願する。
「飴村さん! お時間があれば、一緒におばけ屋敷に行ってくれないっすか!?」
「えっ、おばけ屋敷……?」
乱数はおばけの類 が大の苦手だ。同じく十四もである。
「くーこーと、ヒトヒトは? ジューシーひとり? インフォメーションセンターに案内したげよっか?」
「人を迷子みたいに言わないで欲しいっす! 今日は、好きなキャラクターとこのテーマパークがコラボしたスタンプラリーに参加しに来たんすよ! 指定のアトラクションに乗ってスタンプを集めると、キャラクターのぬいぐるみが貰えるんす!」
十四は興奮気味に伝える。しかしすぐに声を震わせながら続けた。
「でも、そのひとつにおばけ屋敷があって……ひとりは絶対に無理っす! なので着いて来て欲しいんすよ〜〜!」
「ジューシーの頼みでも無理だよぉ!」
乱数も声を震わせて拒否をする。そして辺りを見渡すと、偶然にもシンジュクディビジョンの観音坂独歩が歩いているのが見えた。
「あ! どっぽぽ〜! こっちこっち!」
大きく手を振りながら叫ぶと、独歩は肩を跳ねさせながら乱数達に視線を向ける。そして小走りで二人の元へ辿り着くと、困惑した表情をしながらも挨拶をした。
「こんにちは。飴村さん、四十物さん。二人が一緒なんて珍しいですね」
「まぁね〜。さっきたまたま会ったんだ。どっぽぽはひとり? まさか寂雷も来てたりしないよね? 今ヒマ? ヒマじゃなくても、これからボク達とおばけ屋敷に行かない?」
「質問が多いな……。先生は今日はお仕事で居ません。一二三を待たせているので、僕は失礼します……」
足早に去ろうとする独歩の腕を、乱数と十四が強く掴んだ。
「観音坂さん! そう言わずに! 人助けだと思ってお願いするっす!」
「こんなにか弱いボク達だけでおばけ屋敷に行かせるなんて、どぽちは心が痛まない訳〜!?」
ぐいぐいと独歩の腕を引き寄せる乱数と十四。そんな二人に、独歩は眉を下げながら反論する。
「そんなに怖いなら、無理して行く必要も無いんじゃないですか……?」
しかし、無理をしてでも行かなければならない理由がある十四は、独歩の腕を揺すり涙ながらに訴える。
「スタンプラリーの景品のぬいぐるみが欲しいんす! あとおばけ屋敷だけなんすよ〜! そうだ! ご飯をご馳走するので、それでなんとか手を打って欲しいっす……!」
「いや、遥かに年下の子に奢られるなんて申し訳無さ過ぎるよ……。うん、分かった。そこまで言うなら、着いて行くよ。だから泣かないでくれ……」
「うわああん! 観音坂さん、ありがとうございます!」
「結局泣くのか……」
十四のあしらい方に困惑しつつ、独歩がおばけ屋敷に向かおうとすると、乱数が急に弾ける笑顔で口を開いた。
「良かったね、ジューシー! んじゃ、ボクはこの辺で……」
そう言いながら逃げ出そうとする乱数の肩を、十四と独歩ががっしり掴む。
「話が違いますよ、飴村さん!」
「三人寄ればなんとやらっすよ!」
「ジューシー、それは使い方間違ってるよ〜! 逃げないから離して〜!」
そんなこんなで、テーマパークの隅に位置するおばけ屋敷に辿り着いた。外観を見上げ足が竦む三人。この辺りだけ、どんよりと暗い感じがするのは気の所為だろうか。
「そういえば、伊弉冉さんの事は大丈夫っすか?」
「あいつに連絡したら『ファイト〜!』って他人事な返信が来たので、大丈夫だと思います」
「いっそ、ひふみんも誘えば良かったかもね〜」
おばけ屋敷にはそれなりに人が並んでいる。顔色を悪くさせながら、三人は列に混ざった。
特に誰も口を開く事無く、じっと待っているだけだったにも関わらず、あっという間に順番が来てしまった。
「夜の学校がモチーフなのか……。どうしてこうも不気味なんだ……」
「うぅ、空却さんにお守りのお札でも書いてもらえば良かったっす……」
「なんか、すっご〜く寒気がして来たかも……」
かくれんぼが好きな双子の霊に見付からないよう、夜の教室を回り学校を脱出するというコンセプトのおばけ屋敷。
音などの演出のみでおどかし役は出て来ないが、三人は小さな音や影にいちいち驚いてばかりだった。
骨格標本が不気味に揺れる理科室を抜けて音楽室が近付くと、次はピアノの不協和音が響く。
「ぎゃああああああ!! すみませんすみません!」
「わあああああああ!! ちょ、ちょっと置いてかないでよ〜!」
「びええええええん!! 手! 皆さん、手繋がないっすか〜!?」
暗闇をどたどたと走りながら、恥も外聞も捨て手を繋ぎ合う三人。そのまま叫びながら、一目散に出口へ向かった。
明るい外に出ると、それぞれぱっと手を離して地面に座り込む。肩で息をして、全員疲弊しきった表情だ。
深呼吸をして落ち着いた頃、十四は出口の所に居たキャストに、スタンプラリーの台紙を渡した。
「な、なんとかゴールしたっす……! えっと、スタンプお願いします……!」
星形のスタンプを押され、これで全ての枠が埋まった。キャストが「おめでとうございます!」と笑顔でぬいぐるみを手渡す。
「ジューシー、無事にゲット出来て良かったね〜」
「お二人のお陰っす! 手を繋いでくれた時、真ん中だったので怖くなかったっす!」
ぬいぐるみを抱き締めながら放つ十四の言葉に、乱数と独歩は首をかしげた。
「え? 真ん中は俺だったと思うが……」
「ちょっと、嘘はやめてよ〜。ボクが真ん中だよ?」
お互い顔を見詰め合いながら、鳥肌と嫌な汗が止まらない。十四はぬいぐるみを抱く手に力を込める。
何処からか、二人の子供の笑い声が聞こえた気がした。
─ END ─
【あとがき】
夏だ!怪談話だ!
2026/07/21
ある人気テーマパークに、新しいアトラクションがオープンした。今回そこのキャストの衣装をデザインした飴村乱数は、テーマパークに特別招待され楽しい時間を満喫している。
「ボクが担当した衣装、すっごく可愛かったな〜! お客さんも楽しそうだったし、幻太郎と帝統にも見て欲しかったよ〜」
夢野幻太郎は創作の為の取材、有栖川帝統は一世一代の大勝負があるとの事で、珍しく今日は乱数一人だった。
「やっぱひとりはツマンナイし、誰か今から来てくれる人居ないかなぁ」
そう呟きながら、乱数がポケットからスマートフォンを取り出した時、誰かが彼の名前を呼んだ。
「あれぇ? ジューシー、どったの?」
乱数に声を掛けた主、それはナゴヤディビジョンの四十物十四だった。十四は今にも泣き出しそうな表情で、乱数に懇願する。
「飴村さん! お時間があれば、一緒におばけ屋敷に行ってくれないっすか!?」
「えっ、おばけ屋敷……?」
乱数はおばけの
「くーこーと、ヒトヒトは? ジューシーひとり? インフォメーションセンターに案内したげよっか?」
「人を迷子みたいに言わないで欲しいっす! 今日は、好きなキャラクターとこのテーマパークがコラボしたスタンプラリーに参加しに来たんすよ! 指定のアトラクションに乗ってスタンプを集めると、キャラクターのぬいぐるみが貰えるんす!」
十四は興奮気味に伝える。しかしすぐに声を震わせながら続けた。
「でも、そのひとつにおばけ屋敷があって……ひとりは絶対に無理っす! なので着いて来て欲しいんすよ〜〜!」
「ジューシーの頼みでも無理だよぉ!」
乱数も声を震わせて拒否をする。そして辺りを見渡すと、偶然にもシンジュクディビジョンの観音坂独歩が歩いているのが見えた。
「あ! どっぽぽ〜! こっちこっち!」
大きく手を振りながら叫ぶと、独歩は肩を跳ねさせながら乱数達に視線を向ける。そして小走りで二人の元へ辿り着くと、困惑した表情をしながらも挨拶をした。
「こんにちは。飴村さん、四十物さん。二人が一緒なんて珍しいですね」
「まぁね〜。さっきたまたま会ったんだ。どっぽぽはひとり? まさか寂雷も来てたりしないよね? 今ヒマ? ヒマじゃなくても、これからボク達とおばけ屋敷に行かない?」
「質問が多いな……。先生は今日はお仕事で居ません。一二三を待たせているので、僕は失礼します……」
足早に去ろうとする独歩の腕を、乱数と十四が強く掴んだ。
「観音坂さん! そう言わずに! 人助けだと思ってお願いするっす!」
「こんなにか弱いボク達だけでおばけ屋敷に行かせるなんて、どぽちは心が痛まない訳〜!?」
ぐいぐいと独歩の腕を引き寄せる乱数と十四。そんな二人に、独歩は眉を下げながら反論する。
「そんなに怖いなら、無理して行く必要も無いんじゃないですか……?」
しかし、無理をしてでも行かなければならない理由がある十四は、独歩の腕を揺すり涙ながらに訴える。
「スタンプラリーの景品のぬいぐるみが欲しいんす! あとおばけ屋敷だけなんすよ〜! そうだ! ご飯をご馳走するので、それでなんとか手を打って欲しいっす……!」
「いや、遥かに年下の子に奢られるなんて申し訳無さ過ぎるよ……。うん、分かった。そこまで言うなら、着いて行くよ。だから泣かないでくれ……」
「うわああん! 観音坂さん、ありがとうございます!」
「結局泣くのか……」
十四のあしらい方に困惑しつつ、独歩がおばけ屋敷に向かおうとすると、乱数が急に弾ける笑顔で口を開いた。
「良かったね、ジューシー! んじゃ、ボクはこの辺で……」
そう言いながら逃げ出そうとする乱数の肩を、十四と独歩ががっしり掴む。
「話が違いますよ、飴村さん!」
「三人寄ればなんとやらっすよ!」
「ジューシー、それは使い方間違ってるよ〜! 逃げないから離して〜!」
そんなこんなで、テーマパークの隅に位置するおばけ屋敷に辿り着いた。外観を見上げ足が竦む三人。この辺りだけ、どんよりと暗い感じがするのは気の所為だろうか。
「そういえば、伊弉冉さんの事は大丈夫っすか?」
「あいつに連絡したら『ファイト〜!』って他人事な返信が来たので、大丈夫だと思います」
「いっそ、ひふみんも誘えば良かったかもね〜」
おばけ屋敷にはそれなりに人が並んでいる。顔色を悪くさせながら、三人は列に混ざった。
特に誰も口を開く事無く、じっと待っているだけだったにも関わらず、あっという間に順番が来てしまった。
「夜の学校がモチーフなのか……。どうしてこうも不気味なんだ……」
「うぅ、空却さんにお守りのお札でも書いてもらえば良かったっす……」
「なんか、すっご〜く寒気がして来たかも……」
かくれんぼが好きな双子の霊に見付からないよう、夜の教室を回り学校を脱出するというコンセプトのおばけ屋敷。
音などの演出のみでおどかし役は出て来ないが、三人は小さな音や影にいちいち驚いてばかりだった。
骨格標本が不気味に揺れる理科室を抜けて音楽室が近付くと、次はピアノの不協和音が響く。
「ぎゃああああああ!! すみませんすみません!」
「わあああああああ!! ちょ、ちょっと置いてかないでよ〜!」
「びええええええん!! 手! 皆さん、手繋がないっすか〜!?」
暗闇をどたどたと走りながら、恥も外聞も捨て手を繋ぎ合う三人。そのまま叫びながら、一目散に出口へ向かった。
明るい外に出ると、それぞれぱっと手を離して地面に座り込む。肩で息をして、全員疲弊しきった表情だ。
深呼吸をして落ち着いた頃、十四は出口の所に居たキャストに、スタンプラリーの台紙を渡した。
「な、なんとかゴールしたっす……! えっと、スタンプお願いします……!」
星形のスタンプを押され、これで全ての枠が埋まった。キャストが「おめでとうございます!」と笑顔でぬいぐるみを手渡す。
「ジューシー、無事にゲット出来て良かったね〜」
「お二人のお陰っす! 手を繋いでくれた時、真ん中だったので怖くなかったっす!」
ぬいぐるみを抱き締めながら放つ十四の言葉に、乱数と独歩は首をかしげた。
「え? 真ん中は俺だったと思うが……」
「ちょっと、嘘はやめてよ〜。ボクが真ん中だよ?」
お互い顔を見詰め合いながら、鳥肌と嫌な汗が止まらない。十四はぬいぐるみを抱く手に力を込める。
何処からか、二人の子供の笑い声が聞こえた気がした。
─ END ─
【あとがき】
夏だ!怪談話だ!
2026/07/21
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