麻天狼
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。*゚+──アオハルレモンソーダ
「独歩〜! カラオケ行こうぜ〜!」
帰りのホームルームが終わるや否や、一二三は一直線に俺の方へ向かって来た。
「悪い、今日は掃除当番なんだ」
しかも時間が掛かる教室掃除だ。
「まっじか、んじゃあ適当に待ってんよ〜」
「手伝ってくれても全然良いんだぞ」
そう冗談を返してみると、一二三は笑いながら答えた。
「確かに! その方が早く終わるくね? んじゃ早速ほうきゲットして来よ〜」
出遅れた俺が雑巾掛け担当になったのは、言うまでもないだろう。
そして更に、誰がごみ捨てに行くのかを決めるじゃんけんでも見事に一人負けを果たしたのだった。
他の班員が部活や自宅へ赴く中、俺はごみ箱を抱えて一人廊下を歩く。
ちなみに、一二三は先に生徒玄関へ向かって行った。いつも勝手に色々ついて来る癖に、ごみ捨てには同行してくれないらしい。
目的を果たし、軽くなったごみ箱を抱え直して教室へ戻る。するとそこには、一人のクラスメイトが窓からの景色を眺めていた。
がこんと音を立ててごみ箱を元の場所に戻すと、その音に気付いた彼女は振り向いた。
「独歩くん、教室掃除だったよね? 終わった?」
「今終わった所だけど……黒椿は忘れ物か?」
そう問い返すと、黒椿は俺の顔をじっと見詰める。そして長い息を吐くと、封筒を持った両手をこちらに伸ばして来た。
「これ、受け取ってください!」
淡いピンク色の封筒を受け取り、俺はこのような時にいつも伝えるお決まりの言葉を黒椿にも返す。
「分かった。一二三に渡しておくよ」
ラブレターを受け取った回数は、この学校で俺が一番多いと自負している。しかし、悔しい事に宛先は全て一二三だ。
本人に直接渡すのは緊張するのだろう。そこで、いつも一二三の隣に居る俺の出番という訳だ。
黒椿に見詰められた時は正直期待をしてしまったが、俺如きが自惚れてはならない。
あまりあいつを待たせるのも悪いと思い、俺は「じゃあ」と言って黒椿に軽く手を振った。
黒椿は何か言いた気に口を開いたが、すぐに閉じて手を振る。
「……うん。独歩くん、また明日」
机に掛けていた鞄を持って生徒玄関へ向かう。
一二三は玄関に座り込んで、行き交うクラスメイト達に手を振ったり、話し掛けたりしていた。そして歩いて来た俺に気が付くと、更に大きく手を振る。
「ごみ捨てお疲れ〜! んじゃ行こうぜ〜」
言いながら一二三が鞄を担いで立ち上がる。俺は下駄箱から外靴を取り出し、履き替えて上靴を中に放った。
「隣のクラスの奴が言ってたんだけど、明日の理科は小テストあるっぽい。なんも覚えてね〜」
カラオケ店までの道のりを歩きながら、一二三の話に適当な相槌を打つ。
「そういや来週の調理実習って何作んだっけ。前の豚汁めっちゃ美味かったよな〜。次の日の夕飯で作ってみたんだけど、美味しいって褒められちってさ〜。あ、購買の隣にある自販機、新しいジュース入ってたんだけどさ、あれ美味しいんかな〜。な、独歩ちん聞いてる?」
ころころと変わる話題に口を挟む隙が無かった俺は、このタイミングで例の封筒を一二三に手渡す。
「これ、黒椿から」
「黒椿ちゃん? って、独歩が片想いしてる子じゃんか」
封筒を受け取った一二三は、笑いながら言った。
「なんで知ってるんだよ」
「何年一緒に居ると思ってんだよ〜」
そして封筒を開けようとした一二三は、「んえ?」とおかしな声を上げて立ち止まった。
「どうした?」
「やばいやばい、え? 独歩、黒椿ちゃんになんて言ってこれ受け取った訳?」
一二三が慌てる理由をよく理解出来ず、眉間に皺を寄せていると、封筒を目の前に突き付けられた。
「『独歩くんへ』!!」
一二三の言う通り、封筒には小さな文字でそう書かれていた。
「俺宛? 黒椿から? 俺に? 一二三に渡しておく、って言って受け取ってしまった……」
一二三から返された手紙を開封して中身に目を通す。
「脈無しだと思われたんじゃね? 流石にやばいっしょ。学校戻った方が良くない?」
「黒椿、まだ居るかな……」
一二三は俺の手首を引っ張って学校へ駆け出した。
「とりあえず行くっきゃ無いっしょ!」
こういう時、すぐに行動するタイプの一二三には頭が上がらない。俺は真っ白な頭の中で、黒椿に伝える言葉をぐるぐると考えたのだった。
─ END ─
【あとがき】
2026/07/25
「独歩〜! カラオケ行こうぜ〜!」
帰りのホームルームが終わるや否や、一二三は一直線に俺の方へ向かって来た。
「悪い、今日は掃除当番なんだ」
しかも時間が掛かる教室掃除だ。
「まっじか、んじゃあ適当に待ってんよ〜」
「手伝ってくれても全然良いんだぞ」
そう冗談を返してみると、一二三は笑いながら答えた。
「確かに! その方が早く終わるくね? んじゃ早速ほうきゲットして来よ〜」
出遅れた俺が雑巾掛け担当になったのは、言うまでもないだろう。
そして更に、誰がごみ捨てに行くのかを決めるじゃんけんでも見事に一人負けを果たしたのだった。
他の班員が部活や自宅へ赴く中、俺はごみ箱を抱えて一人廊下を歩く。
ちなみに、一二三は先に生徒玄関へ向かって行った。いつも勝手に色々ついて来る癖に、ごみ捨てには同行してくれないらしい。
目的を果たし、軽くなったごみ箱を抱え直して教室へ戻る。するとそこには、一人のクラスメイトが窓からの景色を眺めていた。
がこんと音を立ててごみ箱を元の場所に戻すと、その音に気付いた彼女は振り向いた。
「独歩くん、教室掃除だったよね? 終わった?」
「今終わった所だけど……黒椿は忘れ物か?」
そう問い返すと、黒椿は俺の顔をじっと見詰める。そして長い息を吐くと、封筒を持った両手をこちらに伸ばして来た。
「これ、受け取ってください!」
淡いピンク色の封筒を受け取り、俺はこのような時にいつも伝えるお決まりの言葉を黒椿にも返す。
「分かった。一二三に渡しておくよ」
ラブレターを受け取った回数は、この学校で俺が一番多いと自負している。しかし、悔しい事に宛先は全て一二三だ。
本人に直接渡すのは緊張するのだろう。そこで、いつも一二三の隣に居る俺の出番という訳だ。
黒椿に見詰められた時は正直期待をしてしまったが、俺如きが自惚れてはならない。
あまりあいつを待たせるのも悪いと思い、俺は「じゃあ」と言って黒椿に軽く手を振った。
黒椿は何か言いた気に口を開いたが、すぐに閉じて手を振る。
「……うん。独歩くん、また明日」
机に掛けていた鞄を持って生徒玄関へ向かう。
一二三は玄関に座り込んで、行き交うクラスメイト達に手を振ったり、話し掛けたりしていた。そして歩いて来た俺に気が付くと、更に大きく手を振る。
「ごみ捨てお疲れ〜! んじゃ行こうぜ〜」
言いながら一二三が鞄を担いで立ち上がる。俺は下駄箱から外靴を取り出し、履き替えて上靴を中に放った。
「隣のクラスの奴が言ってたんだけど、明日の理科は小テストあるっぽい。なんも覚えてね〜」
カラオケ店までの道のりを歩きながら、一二三の話に適当な相槌を打つ。
「そういや来週の調理実習って何作んだっけ。前の豚汁めっちゃ美味かったよな〜。次の日の夕飯で作ってみたんだけど、美味しいって褒められちってさ〜。あ、購買の隣にある自販機、新しいジュース入ってたんだけどさ、あれ美味しいんかな〜。な、独歩ちん聞いてる?」
ころころと変わる話題に口を挟む隙が無かった俺は、このタイミングで例の封筒を一二三に手渡す。
「これ、黒椿から」
「黒椿ちゃん? って、独歩が片想いしてる子じゃんか」
封筒を受け取った一二三は、笑いながら言った。
「なんで知ってるんだよ」
「何年一緒に居ると思ってんだよ〜」
そして封筒を開けようとした一二三は、「んえ?」とおかしな声を上げて立ち止まった。
「どうした?」
「やばいやばい、え? 独歩、黒椿ちゃんになんて言ってこれ受け取った訳?」
一二三が慌てる理由をよく理解出来ず、眉間に皺を寄せていると、封筒を目の前に突き付けられた。
「『独歩くんへ』!!」
一二三の言う通り、封筒には小さな文字でそう書かれていた。
「俺宛? 黒椿から? 俺に? 一二三に渡しておく、って言って受け取ってしまった……」
一二三から返された手紙を開封して中身に目を通す。
「脈無しだと思われたんじゃね? 流石にやばいっしょ。学校戻った方が良くない?」
「黒椿、まだ居るかな……」
一二三は俺の手首を引っ張って学校へ駆け出した。
「とりあえず行くっきゃ無いっしょ!」
こういう時、すぐに行動するタイプの一二三には頭が上がらない。俺は真っ白な頭の中で、黒椿に伝える言葉をぐるぐると考えたのだった。
─ END ─
【あとがき】
2026/07/25
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