Bad Ass Temple
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。*゚+──紫苑
拙僧には、病弱でガキん頃から入退院を繰り返す幼馴染みが居た。
もはや病院に住んでるっつっても過言じゃねぇそいつは、当然ながら学校にもあまり通えていねぇ。それ故、ダチと呼べる奴も、恐らく拙僧くらいしか居なかっただろう。
家が近いってだけだが、それも立派な縁だ。
最初は親父に言われるがまま見舞いに行ってたが、るあきがあまりにも嬉しそうに拙僧を見るもんだから、それから毎日のように花やら菓子やらを携えて顔を出しに行った。
「空却! 今日も来てくれたんだね」
「あたりめーだろ。これ、読みてぇっつってたやつ」
漫画が数冊入った袋を差し出すと、るあきは目を輝かせながら受け取った。
「ありがとう! 続き読みたかったんだよね」
早速袋から漫画を取り出すも、るあきは急に表情を曇らせ静かに口を開いた。
「……私、この漫画の最終回読めるかな」
るあきの顔をじっと見詰める。るあきは声を震わせながら続けた。
「来週ね、退院する予定だったの。でも、思ったより良くないみたいで……っ……」
最後の方は、嗚咽でほとんど聞き取れなかった。止まらない涙を拭 い続けるるあきの頭を、ぐしゃぐしゃと撫でてやる。
「言葉には力が宿ってんだ。勝つっつったらぜってぇ勝つ。少しでも負けるって思えば負けちまう。だからな、んなクヨクヨ悩んでねーで、生きてぇなら生きてぇって強く思うんだよ」
るあきは、赤くなった目を擦りながら小さく笑った。
「すごいね。空却の言葉って、なんかすっと入って来る」
「当然。僧侶となる拙僧のありがたい言葉だからな」
そう言う拙僧に、るあきは微笑みながら続ける。
「私が死んだら、空却がお経あげてね」
「縁起でもねぇ事言うな。……まァ、拙僧が立派な僧侶になるまでは、意地でもくたばんじゃねーぞ」
今にも消えちまうんじゃねぇかと錯覚するほど、儚いるあきの目を真っ直ぐに見詰めた。
「約束」
どちらからとも無く小指を絡め合う。
やけに細っこいるあきの指の感触は、未だに忘れる事はねぇ。
「空却さ〜ん?」
誰かが拙僧の名前を呼ぶ声で、ふいに現実へ引き戻される。瞼を開くと、十四が不満気な表情でじっと拙僧を見詰めていた。
「あ、起きた! も〜、空却さんに呼ばれて来たのに、寝てるなんてあんまりっすよ」
畳から上半身を起こし、思い切りあくびをこぼす。不満気だった十四の顔が、心配そうに眉を下げる表情へ変わった。
「空却さん、泣いてたんすか……?」
「はァ?」
指摘され、始めて頬を伝う存在を感じた。思わず乱雑にそいつを拭う。
「今あくびしたからだろ。てめぇと一緒にすんじゃねーよ」
「ええ!? 自分、最近は全然泣いてないんすよ!」
次は困惑したような顔をして、十四は己の成長を主張する。
「その調子で、これから修行すんぞ!」
「もしかして、その為に呼んだんすかぁ!?」
始める前から疲れた表情を浮かべる十四の背中を叩いて喝を入れる。十四は瞳を潤ませた。
「うぅ、痛いっす……」
「生きてるからこそ感じる痛みだ。ありがたく思え」
庭に出て空を見上げる。
そこには、雲ひとつ無い青空が広がってた。
─ END ─
【あとがき】
2026/07/10
拙僧には、病弱でガキん頃から入退院を繰り返す幼馴染みが居た。
もはや病院に住んでるっつっても過言じゃねぇそいつは、当然ながら学校にもあまり通えていねぇ。それ故、ダチと呼べる奴も、恐らく拙僧くらいしか居なかっただろう。
家が近いってだけだが、それも立派な縁だ。
最初は親父に言われるがまま見舞いに行ってたが、るあきがあまりにも嬉しそうに拙僧を見るもんだから、それから毎日のように花やら菓子やらを携えて顔を出しに行った。
「空却! 今日も来てくれたんだね」
「あたりめーだろ。これ、読みてぇっつってたやつ」
漫画が数冊入った袋を差し出すと、るあきは目を輝かせながら受け取った。
「ありがとう! 続き読みたかったんだよね」
早速袋から漫画を取り出すも、るあきは急に表情を曇らせ静かに口を開いた。
「……私、この漫画の最終回読めるかな」
るあきの顔をじっと見詰める。るあきは声を震わせながら続けた。
「来週ね、退院する予定だったの。でも、思ったより良くないみたいで……っ……」
最後の方は、嗚咽でほとんど聞き取れなかった。止まらない涙を
「言葉には力が宿ってんだ。勝つっつったらぜってぇ勝つ。少しでも負けるって思えば負けちまう。だからな、んなクヨクヨ悩んでねーで、生きてぇなら生きてぇって強く思うんだよ」
るあきは、赤くなった目を擦りながら小さく笑った。
「すごいね。空却の言葉って、なんかすっと入って来る」
「当然。僧侶となる拙僧のありがたい言葉だからな」
そう言う拙僧に、るあきは微笑みながら続ける。
「私が死んだら、空却がお経あげてね」
「縁起でもねぇ事言うな。……まァ、拙僧が立派な僧侶になるまでは、意地でもくたばんじゃねーぞ」
今にも消えちまうんじゃねぇかと錯覚するほど、儚いるあきの目を真っ直ぐに見詰めた。
「約束」
どちらからとも無く小指を絡め合う。
やけに細っこいるあきの指の感触は、未だに忘れる事はねぇ。
「空却さ〜ん?」
誰かが拙僧の名前を呼ぶ声で、ふいに現実へ引き戻される。瞼を開くと、十四が不満気な表情でじっと拙僧を見詰めていた。
「あ、起きた! も〜、空却さんに呼ばれて来たのに、寝てるなんてあんまりっすよ」
畳から上半身を起こし、思い切りあくびをこぼす。不満気だった十四の顔が、心配そうに眉を下げる表情へ変わった。
「空却さん、泣いてたんすか……?」
「はァ?」
指摘され、始めて頬を伝う存在を感じた。思わず乱雑にそいつを拭う。
「今あくびしたからだろ。てめぇと一緒にすんじゃねーよ」
「ええ!? 自分、最近は全然泣いてないんすよ!」
次は困惑したような顔をして、十四は己の成長を主張する。
「その調子で、これから修行すんぞ!」
「もしかして、その為に呼んだんすかぁ!?」
始める前から疲れた表情を浮かべる十四の背中を叩いて喝を入れる。十四は瞳を潤ませた。
「うぅ、痛いっす……」
「生きてるからこそ感じる痛みだ。ありがたく思え」
庭に出て空を見上げる。
そこには、雲ひとつ無い青空が広がってた。
─ END ─
【あとがき】
2026/07/10
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