MAD TRIGGER CREW
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。*゚+──Drive me crazy.
「やば、理鶯くんから電話だ」
ある日の休日。自宅に居ると、軽快な着信音が部屋に響いた。
理鶯くんは私の恋人である。一体何がやばいのかと言うと、私は彼の声が好き過ぎるのだ。すぐ耳元で聞こえる大好きな声に、耳だけではなく脳や心臓が耐えられず、私はいつも途中で電話を切ってしまう。
なんとなく恥ずかしくて、理由を言った事は無い。理鶯くんも何も聞いて来ないが、内心は不思議に思っているに違いない。
私は深呼吸をして、「よし」と気合いを入れてから電話に出た。
「……もしもし、理鶯くん? どうしたの?」
「るあき、急ですまないが、今日これから会えないだろうか?」
突然のお誘いだが、嬉しいのでもちろん快諾する。彼が安堵したように息をついた。
「良かった。数日前に会ったばかりだが、もうるあきの顔を見たくなってな。るあきの都合の良い時間で構わない。小官が迎えに行こう」
「うぅ、やっぱり駄目だ。名前そんなに呼ぶのは反則だよ……」
駄目なのは私の方だ。今回も、何も言わずに電話を切ってしまった。私は溜息をついてメッセージアプリを開く。
『急に電話切っちゃってごめんね。色々仕度もあるから、夕方が良いかな。十七時頃でお願いします』
そうメッセージを送るとすぐ既読になり、返信が来た。
『問題無い。了解した』
シンプルなメッセージに、私はデフォルメされた鳥がお辞儀をするスタンプを送る。それもすぐ既読になった。
「どうした、理鶯。急にあいつに電話したと思ったら、んなしょげた顔しやがって」
左馬刻が煙草を指に挟めて言った。
「ふむ……。また途中でるあきに電話を切られてしまってな」
「またァ?」
小官はそんなに分かりやすい表情をしていたのだろうか。そう思いながら左馬刻に理由を話すと、片眉を上げ低い声で一言返す。その言葉に小官は頷いた。
「電話をすると、決まってるあきの方から突然切られてしまうのだ。その後すぐメッセージが送られて来る」
そう告げるのと同時に、メッセージの受信を知らせる機械音が響いた。
「あいつはなんて?」
「夕方からなら会えるとの返信だ」
メッセージのやりとりは可能なようなので、特段時間が無い訳では無いだろう。最初の数回は言葉を交わすので、声を出す事が不可能な場面でも無いはずだ。こちらからは触れないが、理由を話そうとしない事も気になる。
「そろそろこちらから聞いてみても良い頃合いかも知れんな……」
誰に言うでも無く呟くと、左馬刻が煙草の火を消し、両指の関節を鳴らした。
「理鶯、あいつん家教えろ」
「まだ約束の時間には早いが」
「どうせ行くんだ。何時だって変わりゃしねぇよ」
何が気に障ったのか、左馬刻は眉間に深い皺を刻んでいる。……いや、普段からこうだったかも知れない。
こうなるとなかなか扱いが難しくなる為、左馬刻と共にるあきの家へ向かう事にした。彼女に連絡を入れようと通話マークに親指を置きかけ、メッセージアプリを起動する。
『すまない。今から左馬刻とそちらへ向かう』
「どうしたんだろう。しかも左馬刻さんまで?」
会う時間を決めた瞬間に、理鶯くんから予定より早くこちらへ来るとメッセージが届いた。
「仕度済ませないと」
部屋着からお気に入りの服に着替え、メイクをする為鏡の前に座る。粗方メイクを終えた時、玄関の扉を思い切り何度も叩く音が響いた。
「ヤクザの取り立てじゃないんだから……誰だろう、チャイムも鳴らさない野蛮な人は……」
警戒しながらドアスコープを覗こうとすると、外から怒鳴り声が聞こえた。
「おいてめぇ! うちの理鶯泣かしてンじゃねぇぞゴラァ! とっとと開けやがれ!」
「まじのヤクザじゃん!?」
このままではご近所さんに誤解されかねない。ドスの利いた左馬刻さんの声に震えながら解錠する。
そっと開いた扉を、左馬刻さんはがしっと掴んで勢い良く引いた。
「よう、浮気女。この落とし前はきっちり付けてもらうぜ」
「浮気!?」
左馬刻さんの言葉に驚いていると、彼の後ろに居た理鶯くんも顔をしかめて口を開いた。
「左馬刻、どういう事だ?」
「この女が毎度電話を切る理由。そんなんひとつしかねぇ。別の男と会ってたからだろ!?」
身に覚えの無い事で詰 られ、正直こちらが泣きそうである。狭い玄関で理鶯くんが器用に私と左馬刻さんの間に入る。
「左馬刻、るあきを泣かせないでくれ。大丈夫か、るあき」
「え? うん、大丈夫……」
理鶯くんの手がぽんと肩に置かれ、心配そうに顔を覗き込まれた。左馬刻さんの迫力に、思わず涙を流していたようだ。
「えぇと……とりあえず、お二人共上がってください」
涙を拭い、理鶯くんと左馬刻さんを部屋へ促した。
ひとつしかないソファに左馬刻さんがどっかりと腰をおろし、テーブルを挟んだ向かい側に私と理鶯くんが並んで座る。
「まず……私が浮気してるって、どういう事なんですか?」
「さっきも言ったろ。てめぇ、理鶯からの電話いつも途中で切ってんだろ。男と居んのがバレねぇように」
ソファでふんぞり返りながら、そんな決め付けを言う左馬刻さん。私は隣の理鶯くんを見上げる。
「……理鶯くんが、私が浮気してると思ってるって事?」
「いや、左馬刻が勝手にその結論に至ったらしい。しかし、小官も気になっていた所だ。何故いつも会話中にも関わらず切られてしまうのか……」
いつの間にか左馬刻さんも巻き込む大事になっていたようだ。私は理由を話す覚悟を決める。
「神様仏様左馬刻様に誓って、私は浮気なんてしてません。いつも電話を切っちゃう理由は……えぇっと……それは……」
「るあき、話しにくい事ならば無理強いはしない」
優しい理鶯くんの瞳に、揺らぎそうになる決意を拳を握って固める。
「大丈夫、ちゃんと話すよ。えっと……理由は、理鶯くんの声が、好き過ぎちゃって」
「む」
「はァ?」
程度の差はあれど、二人は驚いた表情を見せた。私は深く息を吐き出して続ける。
「耳元で囁かれてる感じがして、いつもドキドキしちゃって……頑張ってるんだけど、今日なんか名前を三回も呼ばれて、頭と心臓が限界を迎えてしまって……」
そんな訳です。そう告げると、左馬刻さんは呆れたような顔をして舌打ちをした。理鶯くんは、周りに花が咲き誇っているのが見えるかのような、嬉しそうな顔をしている。
「惚気 じゃねぇか」
「早とちりした左馬刻が悪いな」
左馬刻さんはポケットから煙草を取り出し、ソファから立ち上がった。玄関へ向かう彼に、私と理鶯くんも立ち上がって後を追う。
「邪魔したな」
「左馬刻さん、お騒がせしてすみませんでした」
左馬刻さんを見送り、ぼんやりと扉を見詰めていると、後ろから理鶯くんにぎゅっと抱き締められた。
「理鶯くんもごめんね、理由も言わずに……。きっと不安にしちゃってたよね」
「そうだな。しかし理由が小官だったとは」
理鶯くんは楽しそうに短く笑う。そして私の耳元に顔を近付けたかと思うと、ゼロ距離で名前を囁いて来た。
電話越しではなく直接耳に届く理鶯くんの声に、頭がくらくらする。
「今日はこのまま、家で過ごすのも悪くないな。るあきはどうしたい?」
ここぞとばかりに私の耳元で低く囁いて来る意地悪な理鶯くんの声に翻弄され、足に力が入らなくなって来た。そんな私を、彼は軽々とお姫様抱っこする。
「……外で意地悪されても困るから、今日は家でゆっくりしよ」
「意地悪か。るあきは小官の声が好きなのではなかったか?」
「好きだけど……もう、わざとそんな事言って楽しんでるでしょ?」
そう言いそっぽを向くも、隙を見せるとまた仕掛けて来るに違いないと慌てて視線を理鶯くんへ戻す。
「警戒心が強いのは良い事だ」
そして彼は小さく笑って続けた。
「小官の前では無意味だがな」
─ END ─
【あとがき】
2026/03/14
「やば、理鶯くんから電話だ」
ある日の休日。自宅に居ると、軽快な着信音が部屋に響いた。
理鶯くんは私の恋人である。一体何がやばいのかと言うと、私は彼の声が好き過ぎるのだ。すぐ耳元で聞こえる大好きな声に、耳だけではなく脳や心臓が耐えられず、私はいつも途中で電話を切ってしまう。
なんとなく恥ずかしくて、理由を言った事は無い。理鶯くんも何も聞いて来ないが、内心は不思議に思っているに違いない。
私は深呼吸をして、「よし」と気合いを入れてから電話に出た。
「……もしもし、理鶯くん? どうしたの?」
「るあき、急ですまないが、今日これから会えないだろうか?」
突然のお誘いだが、嬉しいのでもちろん快諾する。彼が安堵したように息をついた。
「良かった。数日前に会ったばかりだが、もうるあきの顔を見たくなってな。るあきの都合の良い時間で構わない。小官が迎えに行こう」
「うぅ、やっぱり駄目だ。名前そんなに呼ぶのは反則だよ……」
駄目なのは私の方だ。今回も、何も言わずに電話を切ってしまった。私は溜息をついてメッセージアプリを開く。
『急に電話切っちゃってごめんね。色々仕度もあるから、夕方が良いかな。十七時頃でお願いします』
そうメッセージを送るとすぐ既読になり、返信が来た。
『問題無い。了解した』
シンプルなメッセージに、私はデフォルメされた鳥がお辞儀をするスタンプを送る。それもすぐ既読になった。
「どうした、理鶯。急にあいつに電話したと思ったら、んなしょげた顔しやがって」
左馬刻が煙草を指に挟めて言った。
「ふむ……。また途中でるあきに電話を切られてしまってな」
「またァ?」
小官はそんなに分かりやすい表情をしていたのだろうか。そう思いながら左馬刻に理由を話すと、片眉を上げ低い声で一言返す。その言葉に小官は頷いた。
「電話をすると、決まってるあきの方から突然切られてしまうのだ。その後すぐメッセージが送られて来る」
そう告げるのと同時に、メッセージの受信を知らせる機械音が響いた。
「あいつはなんて?」
「夕方からなら会えるとの返信だ」
メッセージのやりとりは可能なようなので、特段時間が無い訳では無いだろう。最初の数回は言葉を交わすので、声を出す事が不可能な場面でも無いはずだ。こちらからは触れないが、理由を話そうとしない事も気になる。
「そろそろこちらから聞いてみても良い頃合いかも知れんな……」
誰に言うでも無く呟くと、左馬刻が煙草の火を消し、両指の関節を鳴らした。
「理鶯、あいつん家教えろ」
「まだ約束の時間には早いが」
「どうせ行くんだ。何時だって変わりゃしねぇよ」
何が気に障ったのか、左馬刻は眉間に深い皺を刻んでいる。……いや、普段からこうだったかも知れない。
こうなるとなかなか扱いが難しくなる為、左馬刻と共にるあきの家へ向かう事にした。彼女に連絡を入れようと通話マークに親指を置きかけ、メッセージアプリを起動する。
『すまない。今から左馬刻とそちらへ向かう』
「どうしたんだろう。しかも左馬刻さんまで?」
会う時間を決めた瞬間に、理鶯くんから予定より早くこちらへ来るとメッセージが届いた。
「仕度済ませないと」
部屋着からお気に入りの服に着替え、メイクをする為鏡の前に座る。粗方メイクを終えた時、玄関の扉を思い切り何度も叩く音が響いた。
「ヤクザの取り立てじゃないんだから……誰だろう、チャイムも鳴らさない野蛮な人は……」
警戒しながらドアスコープを覗こうとすると、外から怒鳴り声が聞こえた。
「おいてめぇ! うちの理鶯泣かしてンじゃねぇぞゴラァ! とっとと開けやがれ!」
「まじのヤクザじゃん!?」
このままではご近所さんに誤解されかねない。ドスの利いた左馬刻さんの声に震えながら解錠する。
そっと開いた扉を、左馬刻さんはがしっと掴んで勢い良く引いた。
「よう、浮気女。この落とし前はきっちり付けてもらうぜ」
「浮気!?」
左馬刻さんの言葉に驚いていると、彼の後ろに居た理鶯くんも顔をしかめて口を開いた。
「左馬刻、どういう事だ?」
「この女が毎度電話を切る理由。そんなんひとつしかねぇ。別の男と会ってたからだろ!?」
身に覚えの無い事で
「左馬刻、るあきを泣かせないでくれ。大丈夫か、るあき」
「え? うん、大丈夫……」
理鶯くんの手がぽんと肩に置かれ、心配そうに顔を覗き込まれた。左馬刻さんの迫力に、思わず涙を流していたようだ。
「えぇと……とりあえず、お二人共上がってください」
涙を拭い、理鶯くんと左馬刻さんを部屋へ促した。
ひとつしかないソファに左馬刻さんがどっかりと腰をおろし、テーブルを挟んだ向かい側に私と理鶯くんが並んで座る。
「まず……私が浮気してるって、どういう事なんですか?」
「さっきも言ったろ。てめぇ、理鶯からの電話いつも途中で切ってんだろ。男と居んのがバレねぇように」
ソファでふんぞり返りながら、そんな決め付けを言う左馬刻さん。私は隣の理鶯くんを見上げる。
「……理鶯くんが、私が浮気してると思ってるって事?」
「いや、左馬刻が勝手にその結論に至ったらしい。しかし、小官も気になっていた所だ。何故いつも会話中にも関わらず切られてしまうのか……」
いつの間にか左馬刻さんも巻き込む大事になっていたようだ。私は理由を話す覚悟を決める。
「神様仏様左馬刻様に誓って、私は浮気なんてしてません。いつも電話を切っちゃう理由は……えぇっと……それは……」
「るあき、話しにくい事ならば無理強いはしない」
優しい理鶯くんの瞳に、揺らぎそうになる決意を拳を握って固める。
「大丈夫、ちゃんと話すよ。えっと……理由は、理鶯くんの声が、好き過ぎちゃって」
「む」
「はァ?」
程度の差はあれど、二人は驚いた表情を見せた。私は深く息を吐き出して続ける。
「耳元で囁かれてる感じがして、いつもドキドキしちゃって……頑張ってるんだけど、今日なんか名前を三回も呼ばれて、頭と心臓が限界を迎えてしまって……」
そんな訳です。そう告げると、左馬刻さんは呆れたような顔をして舌打ちをした。理鶯くんは、周りに花が咲き誇っているのが見えるかのような、嬉しそうな顔をしている。
「
「早とちりした左馬刻が悪いな」
左馬刻さんはポケットから煙草を取り出し、ソファから立ち上がった。玄関へ向かう彼に、私と理鶯くんも立ち上がって後を追う。
「邪魔したな」
「左馬刻さん、お騒がせしてすみませんでした」
左馬刻さんを見送り、ぼんやりと扉を見詰めていると、後ろから理鶯くんにぎゅっと抱き締められた。
「理鶯くんもごめんね、理由も言わずに……。きっと不安にしちゃってたよね」
「そうだな。しかし理由が小官だったとは」
理鶯くんは楽しそうに短く笑う。そして私の耳元に顔を近付けたかと思うと、ゼロ距離で名前を囁いて来た。
電話越しではなく直接耳に届く理鶯くんの声に、頭がくらくらする。
「今日はこのまま、家で過ごすのも悪くないな。るあきはどうしたい?」
ここぞとばかりに私の耳元で低く囁いて来る意地悪な理鶯くんの声に翻弄され、足に力が入らなくなって来た。そんな私を、彼は軽々とお姫様抱っこする。
「……外で意地悪されても困るから、今日は家でゆっくりしよ」
「意地悪か。るあきは小官の声が好きなのではなかったか?」
「好きだけど……もう、わざとそんな事言って楽しんでるでしょ?」
そう言いそっぽを向くも、隙を見せるとまた仕掛けて来るに違いないと慌てて視線を理鶯くんへ戻す。
「警戒心が強いのは良い事だ」
そして彼は小さく笑って続けた。
「小官の前では無意味だがな」
─ END ─
【あとがき】
2026/03/14
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