MAD TRIGGER CREW
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。*゚+──ライバルは一文無しのギャンブラー
理鶯くんが住む森で、彼が淹れてくれた食後のコーヒーを飲みながらゆったりと談笑をしていた時。ふと会話が途切れ、静かな時間が流れる。
隣に座る理鶯くんをそっと見上げると、優しくこちらを見詰める彼と目が合った。まばたきをひとつして、私もじっと見詰め返す。理鶯くんの大きな右手が、私の頬をそっと撫でた。
その先に期待して目を伏せると、彼の右手は私の後頭部に移動し、ぐっとお互いの顔が近くなる。
理鶯くんの息遣いを間近で感じながら瞼を閉じるも、珍しく焦らすように時間を置かれた。
不思議に思って瞼を開き、彼の名を呼ぼうとした時、理鶯くんは立てた人差し指を唇に当てた。
「shh……」
その真剣な表情に心臓を速く動かしつつも、私は彼の指示に頷いた。理鶯くんが小さな声で補足する。
「そこの茂みから物音が聞こえた。夜行性の生物が餌を探して歩いているのかも知れない。音の大きさなどから推測するに、平均的な成人男性程の大きさがある生物だろう」
その言葉に緊張感が漂う。表情に出ていたのか、理鶯くんが私の頭を優しく撫でた。
「安心しろ。るあきの事は小官が守る」
音がしたという茂みから遠ざかるように、理鶯くんは私を背後にやりながらゆっくり後退して行く。すると茂みからざわざわと葉が擦れる大きな音がした。
彼がヒプノシスマイクを構えたその時、大きな陰が茂みから顔を出す。その正体を知った私は、眉間に皺を寄せる。理鶯くんはマイクを仕舞い、出て来た人物に声を掛けた。
「有栖川か」
「何しに来たのよ、有栖川帝統」
私の棘のある言葉に驚きながら、有栖川帝統は口を開いた。
「何日も食ってなくて、良ければお恵みを……狩りの手伝いでもなんでもしますんで……! つーか理鶯さん! この女は誰なんすか!? 初対面だっつーのに随分と俺に当たり強くないすか!? 当たんのはギャンブルだけで良いんすけど!」
確かに私達は初対面だが、仮にも彼は有名人。有栖川帝統の数々の所業は、私の耳にも入っている。
「あんたが理鶯くんと交流がある事は知ってる。ご飯だって何度もご馳走になってるんでしょ? お金も借りようとした事あるんじゃない? 理鶯くんの優しさに付け込んで好き勝手して迷惑掛けるの、もうやめて欲しいの。自分のポッセの元にさっさと帰りなさい」
しっしっと手を振ると、有栖川帝統は悔しそうに歯噛みする。
「まじでなんなんだよ、この女は……。俺だって理鶯さんに貰ってばっかはわりーから、巨大生物仕留めたりすんの手伝ってんだよ! あと乱数と幻太郎には既に借金しまくってて、流石にもう借りれねぇんだ!」
キャンキャンと吠え合っていると、理鶯くんが静かに私達の間に割って入る。
「るあき、あまり有栖川を責めないでやってくれ。狩りでは頼もしい男だ。それに小官がやりたくてやっている事だ。迷惑などではない」
「理鶯さぁん……!」
次いで理鶯くんは、有栖川帝統の方を向いて口を開く。
「有栖川、彼女はるあき。小官の恋人だ。恐らくお前に嫉妬しているだけなので許して欲しい。あと借金は早く返した方が良いぞ」
理鶯くんに図星を突かれ、私の顔は熱くなる。
「なんだ、理鶯さんの彼女だったんすねぇ。るあき、よろしくな」
有栖川帝統は歯を見せながら笑い、握手を求めるよう右手を差し出して来た。
「私はあんたを認めてないから。馴れ馴れしく呼ばないで。私の名前も、理鶯くんの名前も」
そう返すと、可愛くねぇ奴だなと有栖川帝統に呟かれた。理鶯くんが嬉しそうに微笑んでいる。
「本当にるあきは小官の事が好きだな」
「うん、何よりも大好きだよ。理鶯くんは私の事好き?」
「ああ、好きだ。何度伝えても足りない程にな」
蚊帳の外状態の有栖川帝統は、舌を出してげんなりした表情を見せる。
「はぁ、二人を見てるともう腹いっぱいだぜ」
「じゃあご飯はいらないね。さっさとシブヤに帰りなさい」
「今のは喩 えだろ! 理鶯さんお願いします、ご飯食べさせてくださあああい!」
理鶯くんに向かって綺麗な土下座を披露する有栖川帝統。理鶯くんは楽しそうな表情をしながら、ご飯の仕度に取り掛かる。
「見事な掛け合いだ。この短時間で随分と打ち解けたようだな」
そう言い料理を始める彼の背中を見詰めながら、私と有栖川帝統は呟いた。
「別に漫才してた訳じゃねぇけど、理鶯さんが楽しそうなら良いか」
「悔しいけど、それは同意見ね。本当に認めたくないけど」
有栖川帝統は呆れたような顔を見せた。
「ったく、口の減らねぇ奴だなぁ」
「あんたは全く借金が減らない奴みたいだけどね」
「うるせ〜! 今度の新台でどかんと当てる予定なんだよ!」
再び吠え合っていると、理鶯くんが完成した料理を手に私達の元へ戻って来た。
「こいつの為にわざわざ作らなくても良いのに……でも理鶯くんのそういう優しい所、大好きだよ。ほら有栖川帝統、理鶯くんに感謝しなさい」
「理鶯さん、あざーっす!!」
笑顔で叫ぶ彼を見て、理鶯くんは満足そうに頷いた。有栖川帝統は、がっつくように食べ始めたかと思うとあっという間に食べ終える。
「もっと落ち着いて食べられない訳? 親の顔が見てみたいわ。さぁ、食べ終わったなら早く帰りなさい」
「へーへー、言われなくても帰りますよ! 理鶯さん、また来ますね〜!」
大きく手を振りながら茂みを突っ切って行く有栖川帝統。そんな彼に、理鶯くんは手を振り返す。
「やっと帰った。全く、思わぬ邪魔が入って最悪ね……」
「怒った顔も可愛らしいが、小官はるあきの笑顔が見たい」
愚痴をこぼす私の頬を指先で優しく撫で、理鶯くんが微笑んだ。
「うん。理鶯くんと居ると、自然と笑顔になっちゃうよ」
そうして瞼を閉じた私の耳に届いたのは、先程も聞いた葉がざわめく音。嫌な予感に瞼を開くと、何故か有栖川帝統が同じ場所から姿を現した。
「理鶯さ〜ん! シブヤってどっちに行ったら着きます? なんか同じとこぐるぐるしちゃって!」
「も〜! 有栖川帝統! 邪魔しないでよ! 私があんたをシブヤまで送り届けるから、理鶯くんには近付かないで!」
私は、へらへらしながら理鶯くんに近寄る有栖川帝統のコートを掴む。
「お、わりーなるあき!」
「勘違いしないで。あんたなんかの為じゃないから。あと名前呼ばないで」
相変わらず馴れ馴れしい有栖川帝統を軽く睨みながら、私はシブヤを目指して歩き出す。森は危ないからと理鶯くんも付いて来てくれた。
「うむ、るあきは優しいな」
「えへへ、困ってる人は放っておけないから」
ぽんぽんと私の頭を撫でる理鶯くん。有栖川帝統が呟いた。
「よく言うぜ……」
「有栖川帝統、ライオンの餌にされたいの?」
「はは、そんなまさかぁ……」
私の隣には理鶯くん。腕を絡め歩く私達の後ろを、有栖川帝統が付いて来る。
ふと空を見上げると、煌めく三つの星が三角形のように並んでいた。
─ END ─
【あとがき】
帝統推しの恋人に嫉妬する理鶯の話もどうぞ。
▶理鶯の恋人がシブヤ推しだった件
2026/03/01
理鶯くんが住む森で、彼が淹れてくれた食後のコーヒーを飲みながらゆったりと談笑をしていた時。ふと会話が途切れ、静かな時間が流れる。
隣に座る理鶯くんをそっと見上げると、優しくこちらを見詰める彼と目が合った。まばたきをひとつして、私もじっと見詰め返す。理鶯くんの大きな右手が、私の頬をそっと撫でた。
その先に期待して目を伏せると、彼の右手は私の後頭部に移動し、ぐっとお互いの顔が近くなる。
理鶯くんの息遣いを間近で感じながら瞼を閉じるも、珍しく焦らすように時間を置かれた。
不思議に思って瞼を開き、彼の名を呼ぼうとした時、理鶯くんは立てた人差し指を唇に当てた。
「shh……」
その真剣な表情に心臓を速く動かしつつも、私は彼の指示に頷いた。理鶯くんが小さな声で補足する。
「そこの茂みから物音が聞こえた。夜行性の生物が餌を探して歩いているのかも知れない。音の大きさなどから推測するに、平均的な成人男性程の大きさがある生物だろう」
その言葉に緊張感が漂う。表情に出ていたのか、理鶯くんが私の頭を優しく撫でた。
「安心しろ。るあきの事は小官が守る」
音がしたという茂みから遠ざかるように、理鶯くんは私を背後にやりながらゆっくり後退して行く。すると茂みからざわざわと葉が擦れる大きな音がした。
彼がヒプノシスマイクを構えたその時、大きな陰が茂みから顔を出す。その正体を知った私は、眉間に皺を寄せる。理鶯くんはマイクを仕舞い、出て来た人物に声を掛けた。
「有栖川か」
「何しに来たのよ、有栖川帝統」
私の棘のある言葉に驚きながら、有栖川帝統は口を開いた。
「何日も食ってなくて、良ければお恵みを……狩りの手伝いでもなんでもしますんで……! つーか理鶯さん! この女は誰なんすか!? 初対面だっつーのに随分と俺に当たり強くないすか!? 当たんのはギャンブルだけで良いんすけど!」
確かに私達は初対面だが、仮にも彼は有名人。有栖川帝統の数々の所業は、私の耳にも入っている。
「あんたが理鶯くんと交流がある事は知ってる。ご飯だって何度もご馳走になってるんでしょ? お金も借りようとした事あるんじゃない? 理鶯くんの優しさに付け込んで好き勝手して迷惑掛けるの、もうやめて欲しいの。自分のポッセの元にさっさと帰りなさい」
しっしっと手を振ると、有栖川帝統は悔しそうに歯噛みする。
「まじでなんなんだよ、この女は……。俺だって理鶯さんに貰ってばっかはわりーから、巨大生物仕留めたりすんの手伝ってんだよ! あと乱数と幻太郎には既に借金しまくってて、流石にもう借りれねぇんだ!」
キャンキャンと吠え合っていると、理鶯くんが静かに私達の間に割って入る。
「るあき、あまり有栖川を責めないでやってくれ。狩りでは頼もしい男だ。それに小官がやりたくてやっている事だ。迷惑などではない」
「理鶯さぁん……!」
次いで理鶯くんは、有栖川帝統の方を向いて口を開く。
「有栖川、彼女はるあき。小官の恋人だ。恐らくお前に嫉妬しているだけなので許して欲しい。あと借金は早く返した方が良いぞ」
理鶯くんに図星を突かれ、私の顔は熱くなる。
「なんだ、理鶯さんの彼女だったんすねぇ。るあき、よろしくな」
有栖川帝統は歯を見せながら笑い、握手を求めるよう右手を差し出して来た。
「私はあんたを認めてないから。馴れ馴れしく呼ばないで。私の名前も、理鶯くんの名前も」
そう返すと、可愛くねぇ奴だなと有栖川帝統に呟かれた。理鶯くんが嬉しそうに微笑んでいる。
「本当にるあきは小官の事が好きだな」
「うん、何よりも大好きだよ。理鶯くんは私の事好き?」
「ああ、好きだ。何度伝えても足りない程にな」
蚊帳の外状態の有栖川帝統は、舌を出してげんなりした表情を見せる。
「はぁ、二人を見てるともう腹いっぱいだぜ」
「じゃあご飯はいらないね。さっさとシブヤに帰りなさい」
「今のは
理鶯くんに向かって綺麗な土下座を披露する有栖川帝統。理鶯くんは楽しそうな表情をしながら、ご飯の仕度に取り掛かる。
「見事な掛け合いだ。この短時間で随分と打ち解けたようだな」
そう言い料理を始める彼の背中を見詰めながら、私と有栖川帝統は呟いた。
「別に漫才してた訳じゃねぇけど、理鶯さんが楽しそうなら良いか」
「悔しいけど、それは同意見ね。本当に認めたくないけど」
有栖川帝統は呆れたような顔を見せた。
「ったく、口の減らねぇ奴だなぁ」
「あんたは全く借金が減らない奴みたいだけどね」
「うるせ〜! 今度の新台でどかんと当てる予定なんだよ!」
再び吠え合っていると、理鶯くんが完成した料理を手に私達の元へ戻って来た。
「こいつの為にわざわざ作らなくても良いのに……でも理鶯くんのそういう優しい所、大好きだよ。ほら有栖川帝統、理鶯くんに感謝しなさい」
「理鶯さん、あざーっす!!」
笑顔で叫ぶ彼を見て、理鶯くんは満足そうに頷いた。有栖川帝統は、がっつくように食べ始めたかと思うとあっという間に食べ終える。
「もっと落ち着いて食べられない訳? 親の顔が見てみたいわ。さぁ、食べ終わったなら早く帰りなさい」
「へーへー、言われなくても帰りますよ! 理鶯さん、また来ますね〜!」
大きく手を振りながら茂みを突っ切って行く有栖川帝統。そんな彼に、理鶯くんは手を振り返す。
「やっと帰った。全く、思わぬ邪魔が入って最悪ね……」
「怒った顔も可愛らしいが、小官はるあきの笑顔が見たい」
愚痴をこぼす私の頬を指先で優しく撫で、理鶯くんが微笑んだ。
「うん。理鶯くんと居ると、自然と笑顔になっちゃうよ」
そうして瞼を閉じた私の耳に届いたのは、先程も聞いた葉がざわめく音。嫌な予感に瞼を開くと、何故か有栖川帝統が同じ場所から姿を現した。
「理鶯さ〜ん! シブヤってどっちに行ったら着きます? なんか同じとこぐるぐるしちゃって!」
「も〜! 有栖川帝統! 邪魔しないでよ! 私があんたをシブヤまで送り届けるから、理鶯くんには近付かないで!」
私は、へらへらしながら理鶯くんに近寄る有栖川帝統のコートを掴む。
「お、わりーなるあき!」
「勘違いしないで。あんたなんかの為じゃないから。あと名前呼ばないで」
相変わらず馴れ馴れしい有栖川帝統を軽く睨みながら、私はシブヤを目指して歩き出す。森は危ないからと理鶯くんも付いて来てくれた。
「うむ、るあきは優しいな」
「えへへ、困ってる人は放っておけないから」
ぽんぽんと私の頭を撫でる理鶯くん。有栖川帝統が呟いた。
「よく言うぜ……」
「有栖川帝統、ライオンの餌にされたいの?」
「はは、そんなまさかぁ……」
私の隣には理鶯くん。腕を絡め歩く私達の後ろを、有栖川帝統が付いて来る。
ふと空を見上げると、煌めく三つの星が三角形のように並んでいた。
─ END ─
【あとがき】
帝統推しの恋人に嫉妬する理鶯の話もどうぞ。
▶理鶯の恋人がシブヤ推しだった件
2026/03/01
