Bad Ass Temple
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。*゚+──我慢ならない!
俺には我慢ならないもんが二つある。一つ、人の恋愛に首を突っ込む奴。二つ、意味も無く俺の仕事場にたむろするガキ共だ。
今日もいつもの通り、空却と十四が我が物顔で事務所の一角を占拠している。一人でも騒がしいのに、二人揃うといよいよ集中出来ない。
俺は休憩がてら、手元のカップを持ち上げコーヒーを啜る。その時、扉が開いて俺の秘書である黒椿るあきが顔を覗かせた。
「今日も賑やかですね」
そう言う彼女は、グラスを二つ載せたトレイを手に入室して来た。空却と十四が居座る応接セットのテーブルに、オレンジジュースで満たされたグラスを置く。
そんなるあきを見詰めながら、十四が口を開いた。
「るあきさん、雰囲気がいつもと違うっすね! そのアイシャドウの色も、すっごく似合ってるっす!」
「わぁ、よく分かったね」
「今季の新作っすよね。自分もこの前、奮発して買っちゃったんすよ〜」
そんな会話を繰り広げている。十四が笑顔で続けた。
「髪型もすっごく良いっす! もしかして、今日は大事な予定でもあるんすか?」
「分かる? 今日は仕事が終わったら、デートの予定なの」
嬉しそうな顔でるあきが返す。十四もまた目を輝かせて口を開いた。
「彼氏さんが居たんすね! コイバナ聞きたいっす! どんな人なんすか?」
ちなみに空却は、興味の無さそうな顔で一応は話を聞いている様子だ。グラスに入っていた氷を噛み砕いている。
「隙あらば自分のこだわりを主張する割には、私がこだわったメイクとか髪型には全然気付いてくれない人」
なるほど。今朝事務所で顔を合わせてから、なんとなく不機嫌そうだった理由をようやく理解した。
「えぇ、それは悲しいっすね……。恋人には一番に気付いて褒めて欲しいっすよねぇ」
「わざわざそんな野郎と居て楽しいのか?」
るあきが話す「彼氏」とは俺の事なのだが、それを知らないガキ二人は、本人の目の前で好き勝手に文句を言う。まぁ、正論ではあるのだが……。
「普段は優しいし格好良いからね。たとえ気付いても、素直に可愛いって言ってくれない所が我慢ならない」
るあきの答えに、何やら空却は察したようだ。ロクでも無い事を思い付いた時の、楽しそうな表情をして口を開く。
「そんな男はやめて、いっその事拙僧にしたらどうだ? 毎日愛の言葉って奴を囁いてやるよ」
「え!? じゃ、じゃあ、自分も立候補するっす!」
俺の事をからかう為だけに発せられた空却の言葉に、十四は右手を挙げながら身を乗り出す。
わいわいと盛り上がる二人の様子に、気付くと俺はデスクを強く叩きながら思い切り椅子から立ち上がっていた。
「良いか、よく聞け。俺には我慢ならないもんが二つある! 一つ、俺の女に馴れ馴れしく話し掛ける男! 二つ、俺の女を口説き落とそうとする男だ!」
我に返った所でもう遅い。一瞬の沈黙の後、十四が口を開く。
「二回言ったっす。『俺の女』って二回言ったっす。……えぇ!? るあきさんの彼氏さんって……!?」
「ひゃはは! 水臭ぇぞ獄!」
「……言わなかった理由は二つある。お前等に伝える必要性が皆無だったのと、面白可笑しくからかって来る事が目に見えてたからだ」
ふとるあきを見ると、唇を尖らせ拗ねたような表情をしていた。
「私にも我慢ならないものが二つあります。一つ、私の事はおろか恋人が居る事すら、空却くんと十四くんに言ってなかった事。二つ、全然可愛いって言ってくれない事」
空却が俺の事をじとっと見詰める。十四は「そうだそうだ」と言わんばかりに首を縦に振っていた。俺は長い息を吐く。
「……八ヶ月程付き合ってる黒椿るあきだ。変なちょっかい掛けんじゃねぇぞ」
「もう、誰にっすか?」
やけに厳しい反応を示す十四に、再び深く溜息を吐いた。
「俺の可愛い恋人に、変なちょっかい掛けんじゃねぇぞ」
そう言うと、るあきと十四が高い声を上げて沸き立った。
「あー、ったく! 仕事の邪魔だから、用が無いならさっさと帰れ!」
空却と十四、それとなかなかニヤケ面をおさめないるあきを追い出し、俺は仕事を再開する。
しかし、クソガキ共のからかうような視線とるあきの嬉しそうな顔を思い出し、それはそれで仕事が捗らないのであった。
─ END ─
【あとがき】
2025/12/28
俺には我慢ならないもんが二つある。一つ、人の恋愛に首を突っ込む奴。二つ、意味も無く俺の仕事場にたむろするガキ共だ。
今日もいつもの通り、空却と十四が我が物顔で事務所の一角を占拠している。一人でも騒がしいのに、二人揃うといよいよ集中出来ない。
俺は休憩がてら、手元のカップを持ち上げコーヒーを啜る。その時、扉が開いて俺の秘書である黒椿るあきが顔を覗かせた。
「今日も賑やかですね」
そう言う彼女は、グラスを二つ載せたトレイを手に入室して来た。空却と十四が居座る応接セットのテーブルに、オレンジジュースで満たされたグラスを置く。
そんなるあきを見詰めながら、十四が口を開いた。
「るあきさん、雰囲気がいつもと違うっすね! そのアイシャドウの色も、すっごく似合ってるっす!」
「わぁ、よく分かったね」
「今季の新作っすよね。自分もこの前、奮発して買っちゃったんすよ〜」
そんな会話を繰り広げている。十四が笑顔で続けた。
「髪型もすっごく良いっす! もしかして、今日は大事な予定でもあるんすか?」
「分かる? 今日は仕事が終わったら、デートの予定なの」
嬉しそうな顔でるあきが返す。十四もまた目を輝かせて口を開いた。
「彼氏さんが居たんすね! コイバナ聞きたいっす! どんな人なんすか?」
ちなみに空却は、興味の無さそうな顔で一応は話を聞いている様子だ。グラスに入っていた氷を噛み砕いている。
「隙あらば自分のこだわりを主張する割には、私がこだわったメイクとか髪型には全然気付いてくれない人」
なるほど。今朝事務所で顔を合わせてから、なんとなく不機嫌そうだった理由をようやく理解した。
「えぇ、それは悲しいっすね……。恋人には一番に気付いて褒めて欲しいっすよねぇ」
「わざわざそんな野郎と居て楽しいのか?」
るあきが話す「彼氏」とは俺の事なのだが、それを知らないガキ二人は、本人の目の前で好き勝手に文句を言う。まぁ、正論ではあるのだが……。
「普段は優しいし格好良いからね。たとえ気付いても、素直に可愛いって言ってくれない所が我慢ならない」
るあきの答えに、何やら空却は察したようだ。ロクでも無い事を思い付いた時の、楽しそうな表情をして口を開く。
「そんな男はやめて、いっその事拙僧にしたらどうだ? 毎日愛の言葉って奴を囁いてやるよ」
「え!? じゃ、じゃあ、自分も立候補するっす!」
俺の事をからかう為だけに発せられた空却の言葉に、十四は右手を挙げながら身を乗り出す。
わいわいと盛り上がる二人の様子に、気付くと俺はデスクを強く叩きながら思い切り椅子から立ち上がっていた。
「良いか、よく聞け。俺には我慢ならないもんが二つある! 一つ、俺の女に馴れ馴れしく話し掛ける男! 二つ、俺の女を口説き落とそうとする男だ!」
我に返った所でもう遅い。一瞬の沈黙の後、十四が口を開く。
「二回言ったっす。『俺の女』って二回言ったっす。……えぇ!? るあきさんの彼氏さんって……!?」
「ひゃはは! 水臭ぇぞ獄!」
「……言わなかった理由は二つある。お前等に伝える必要性が皆無だったのと、面白可笑しくからかって来る事が目に見えてたからだ」
ふとるあきを見ると、唇を尖らせ拗ねたような表情をしていた。
「私にも我慢ならないものが二つあります。一つ、私の事はおろか恋人が居る事すら、空却くんと十四くんに言ってなかった事。二つ、全然可愛いって言ってくれない事」
空却が俺の事をじとっと見詰める。十四は「そうだそうだ」と言わんばかりに首を縦に振っていた。俺は長い息を吐く。
「……八ヶ月程付き合ってる黒椿るあきだ。変なちょっかい掛けんじゃねぇぞ」
「もう、誰にっすか?」
やけに厳しい反応を示す十四に、再び深く溜息を吐いた。
「俺の可愛い恋人に、変なちょっかい掛けんじゃねぇぞ」
そう言うと、るあきと十四が高い声を上げて沸き立った。
「あー、ったく! 仕事の邪魔だから、用が無いならさっさと帰れ!」
空却と十四、それとなかなかニヤケ面をおさめないるあきを追い出し、俺は仕事を再開する。
しかし、クソガキ共のからかうような視線とるあきの嬉しそうな顔を思い出し、それはそれで仕事が捗らないのであった。
─ END ─
【あとがき】
2025/12/28
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