｡⁠*ﾟ⁠+──貴女と出会って一年─BB


　この街に住んで一年が経った。
　今日も朝陽が眩しいイケブクロを歩き、萬屋ヤマダの前を通る。その時、ちょうど荷物を持った一郎くんが出て来た。
「おはようございます！　るあきさん」
　私に気付いて爽やかな笑顔で挨拶をしてくれる彼に、私も挨拶を返す。
　最初の引っ越し作業から始まり、色々な事でお世話になった三兄弟。彼等とも、出会って一年が経つという事だ。
「私ももうイケブクロに住んで一年だよ。早いよね」
「じゃあ俺等との付き合いも一年って事すね。せっかくだし、今晩は一緒に晩飯でもどうすか？」
　一人暮らしを始めてから、当然一人の時間が増えた。三兄弟との賑やかな時間はとても楽しみである。
「迷惑じゃなければ是非。私に何か出来る事あるかな？」
「二郎も三郎も喜びますよ。るあきさんは、二人の話し相手になってやってください」
　一郎くんが笑いながら言った。その時、パタパタと駆ける二つの足音が響いた。
「あ、兄ちゃん！　るあき姉ちゃんも！」
「るあき姉、おはようございます！」
　二郎くんと三郎くんは、よく似た明るい笑顔を向けて来る。
「二郎、三郎。今晩はるあきさんが来るから、失礼の無いようにな！」
　一郎くんが弟達にそう言うと、二郎くんと三郎くんは嬉しそうな表情を見せてくれた。
「まじで！　るあき姉ちゃんウチ来てくれんの！？」
「二郎、もっと静かに出来ないのかよ」
「嬉しいんだから仕方ねぇだろ。三郎は嬉しくねぇのかよ？」
「う、嬉しくないとは言ってないだろ！」
　微笑ましい言い合いに思わず笑っていると、一郎くんが二人を急かす。
「ほら、早く行かないと遅刻すんぞ」
「やっべ！　行くぞ三郎！」
「一兄、るあき姉、行って来ます！」
　二人は私達に手を振りながら、慌ただしく走って行った。
「……っと、私も行かないと」
　時間を確認して、一郎くんへ向き直る。
「一郎くん、今日は楽しみにしてるね」
「あぁ、任せてくださいよ」
　一郎くんは胸を叩いて頼もしく頷いた。
　そんな彼に軽く手を振ると、一郎くんは大きく手を振り返す。
「るあきさん、行ってらっしゃい！」
　眩しい笑顔で見送られ、私の二年目のイケブクロがスタートした。


─　END　─


【あとがき】
6月23日はサイト開設一周年でした！
弟達に懐かれたいし一郎に行ってらっしゃいと言われたいですね。
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2025/06/25