麻天狼
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。*゚+──貴女と出会って一年─M
外回りを終えて会社に戻ると、同じく帰社したらしい独歩くんに会った。
「お疲れ様、独歩くん」
「黒椿、お疲れ。そういえば、今週末って空いてるか?」
突然そう聞かれ、私は予定を思い出しながら答える。
「空いてるけど……どうしたの?」
「この間から一二三がなんか張り切ってて。今週末に先生も誘って、パーティーをやろうとしてるみたいなんだ」
同僚の独歩くんとそのチームメイトである寂雷さんと一二三くんとは、悩み事を相談した過去があり、そこから現在も仲良くしてもらっている。
そんな彼等とパーティーとは、嬉しいような気後れしてしまうような。
すぐに返答出来ずにいると、独歩くんは慌てたように続ける。
「パーティーとは言ったが、俺と一二三の家で食事会みたいな、ラフなものだから」
「そうなんだ。一二三くんの料理美味しいから、是非参加したいな」
そう答えると、彼は笑顔を見せた。
「一二三に伝えておくよ」
そうして独歩くんと共に日々残業と戦いながら、あっという間にパーティー当日がやって来た。
流行りのスイーツ店で人気の品を手土産に、独歩くんと一二三くんの家を訪れる。
呼び鈴を鳴らすと、独歩くんが出迎えてくれた。家に上がると、リビングには寂雷さんも居る。
「遅くなってすみません。これ、いま流行りのスイーツ、良かったら」
「ようこそるあきちゃん! え、てか手土産も持って来てくれたん? あざっすっす〜! 後で皆で食べようぜ〜!」
小さな紙袋を受け取りながら、一二三くんはキッチンに戻る。
私は寂雷さんと独歩くんが座るダイニングに腰をおろした。
他愛の無い話をしながら待っていると、一二三くんが美味しそうな手料理でテーブルを埋めて行く。
そのまま一二三くんは、私達の分までノンアルコールのドリンクをグラスに注いでくれた。
「今日はるあきちゃんと俺っち達が出会って一年! 感謝と、これからも宜しくって事で今日の食事会楽しんでくれたら良いな!」
一二三くんも席に着いて、四人でグラスを合わせる。
なんて事無い出会いの日も記念日として覚えてくれていたとは、流石シンジュクトップのホストだ。
「ありがとう一二三くん。寂雷さんも独歩くんも、いつもありがとうございます」
一二三くんと独歩くんは優しい笑顔を浮かべる。寂雷さんも微笑みながら口を開いた。
「もう一年が経つんですね。あれから何事も無いですか?」
「お陰様で。あの時は本当にお世話になりました。こうして今も仲良くしてくれて、すごく嬉しいです」
私はぺこりと頭を下げる。独歩くんも同じく頭を下げて言った。
「俺は黒椿とは同僚で、先生や一二三より先に出会ってはいるけど……改めて、これからも宜しくな」
「るあきちゃんと出会ってから、俺っちすげー楽しいんだよね!」
「るあきさんはとても面白くて興味深い方です。今後も仲良くして頂けると、私も嬉しいです」
あの麻天狼と親しくなれるとは夢にも思っておらず、昔の私に話してもきっと信じないだろう。
この先も、見た事が無い三人の表情を知れると良いなと密かに願った。
和やかに食事が済んだ頃、一二三くんがそうだと言いながら、手をパンと鳴らしてキッチンに向かう。
「るあきちゃんが持って来てくれたデザート頂いちゃおうぜ!」
一二三くんは、冷蔵庫に入れていたらしい私の手土産の箱を開ける。
「美味しそうですね。生チョコレートですか?」
寂雷さんが一粒を手に取りながら興味深げに呟く。
「はい。甘いの苦手だったら申し訳無いんですけど、人気店のもので私も気になってたので」
「これ、俺っちのお客さんが美味しいって言ってた奴だ。……あり? これって……」
腕を組んで何かを思い出そうとする一二三くんに、独歩くんが尋ねた。
「なんだよ一二三?」
「うーん……」
私も彼の顔を見詰めて続きを待っていると、寂雷さんが「ひっく」と声を上げた。それと同時に一二三くんも声を発する。
「そうだ! このチョコ、洋酒が入ってるんだった!」
「一二三、一足遅かったみたいだぞ……!!」
密かに願った事が早くも叶った喜びと、予想外のベクトルの表情に驚きを隠せない思いが同時に湧く。そして驚いている間に独歩くんに背中を押され、私は玄関に来ていた。
「急にお開きになって悪いが、今は早く退散した方が身の為だから!」
「よく分からないけど、寂雷さんは大丈夫……?」
「先生は大丈夫。いや、大丈夫ではないけど、それより一二三が心配だ……」
独歩くんは顔を青くさせながら呟いた。リビングからは寂雷さんの低い声が響いている。
「ア、アニキ! 今お酒持って来ます!」
一二三くんの叫びも聞こえて来てとても気になるが、独歩くんは扉を開いて私を外へ促す。
「此処は俺達に任せて早く逃げろ!」
「う、うん……!?」
ドラマのような台詞を言いながらリビングへ戻って行った独歩くん。今度、きちんと詳細を聞くことにしよう。
─ END ─
【あとがき】
本日はサイト開設一周年です!
麻天狼のお話は今後もたくさん書いて行きたいです。
▶貴女と出会って一年─BB
▶貴女と出会って一年─MTC
▶貴女と出会って一年─FP
▶貴女と出会って一年─DH
▶貴女と出会って一年─BAT
2025/06/23
外回りを終えて会社に戻ると、同じく帰社したらしい独歩くんに会った。
「お疲れ様、独歩くん」
「黒椿、お疲れ。そういえば、今週末って空いてるか?」
突然そう聞かれ、私は予定を思い出しながら答える。
「空いてるけど……どうしたの?」
「この間から一二三がなんか張り切ってて。今週末に先生も誘って、パーティーをやろうとしてるみたいなんだ」
同僚の独歩くんとそのチームメイトである寂雷さんと一二三くんとは、悩み事を相談した過去があり、そこから現在も仲良くしてもらっている。
そんな彼等とパーティーとは、嬉しいような気後れしてしまうような。
すぐに返答出来ずにいると、独歩くんは慌てたように続ける。
「パーティーとは言ったが、俺と一二三の家で食事会みたいな、ラフなものだから」
「そうなんだ。一二三くんの料理美味しいから、是非参加したいな」
そう答えると、彼は笑顔を見せた。
「一二三に伝えておくよ」
そうして独歩くんと共に日々残業と戦いながら、あっという間にパーティー当日がやって来た。
流行りのスイーツ店で人気の品を手土産に、独歩くんと一二三くんの家を訪れる。
呼び鈴を鳴らすと、独歩くんが出迎えてくれた。家に上がると、リビングには寂雷さんも居る。
「遅くなってすみません。これ、いま流行りのスイーツ、良かったら」
「ようこそるあきちゃん! え、てか手土産も持って来てくれたん? あざっすっす〜! 後で皆で食べようぜ〜!」
小さな紙袋を受け取りながら、一二三くんはキッチンに戻る。
私は寂雷さんと独歩くんが座るダイニングに腰をおろした。
他愛の無い話をしながら待っていると、一二三くんが美味しそうな手料理でテーブルを埋めて行く。
そのまま一二三くんは、私達の分までノンアルコールのドリンクをグラスに注いでくれた。
「今日はるあきちゃんと俺っち達が出会って一年! 感謝と、これからも宜しくって事で今日の食事会楽しんでくれたら良いな!」
一二三くんも席に着いて、四人でグラスを合わせる。
なんて事無い出会いの日も記念日として覚えてくれていたとは、流石シンジュクトップのホストだ。
「ありがとう一二三くん。寂雷さんも独歩くんも、いつもありがとうございます」
一二三くんと独歩くんは優しい笑顔を浮かべる。寂雷さんも微笑みながら口を開いた。
「もう一年が経つんですね。あれから何事も無いですか?」
「お陰様で。あの時は本当にお世話になりました。こうして今も仲良くしてくれて、すごく嬉しいです」
私はぺこりと頭を下げる。独歩くんも同じく頭を下げて言った。
「俺は黒椿とは同僚で、先生や一二三より先に出会ってはいるけど……改めて、これからも宜しくな」
「るあきちゃんと出会ってから、俺っちすげー楽しいんだよね!」
「るあきさんはとても面白くて興味深い方です。今後も仲良くして頂けると、私も嬉しいです」
あの麻天狼と親しくなれるとは夢にも思っておらず、昔の私に話してもきっと信じないだろう。
この先も、見た事が無い三人の表情を知れると良いなと密かに願った。
和やかに食事が済んだ頃、一二三くんがそうだと言いながら、手をパンと鳴らしてキッチンに向かう。
「るあきちゃんが持って来てくれたデザート頂いちゃおうぜ!」
一二三くんは、冷蔵庫に入れていたらしい私の手土産の箱を開ける。
「美味しそうですね。生チョコレートですか?」
寂雷さんが一粒を手に取りながら興味深げに呟く。
「はい。甘いの苦手だったら申し訳無いんですけど、人気店のもので私も気になってたので」
「これ、俺っちのお客さんが美味しいって言ってた奴だ。……あり? これって……」
腕を組んで何かを思い出そうとする一二三くんに、独歩くんが尋ねた。
「なんだよ一二三?」
「うーん……」
私も彼の顔を見詰めて続きを待っていると、寂雷さんが「ひっく」と声を上げた。それと同時に一二三くんも声を発する。
「そうだ! このチョコ、洋酒が入ってるんだった!」
「一二三、一足遅かったみたいだぞ……!!」
密かに願った事が早くも叶った喜びと、予想外のベクトルの表情に驚きを隠せない思いが同時に湧く。そして驚いている間に独歩くんに背中を押され、私は玄関に来ていた。
「急にお開きになって悪いが、今は早く退散した方が身の為だから!」
「よく分からないけど、寂雷さんは大丈夫……?」
「先生は大丈夫。いや、大丈夫ではないけど、それより一二三が心配だ……」
独歩くんは顔を青くさせながら呟いた。リビングからは寂雷さんの低い声が響いている。
「ア、アニキ! 今お酒持って来ます!」
一二三くんの叫びも聞こえて来てとても気になるが、独歩くんは扉を開いて私を外へ促す。
「此処は俺達に任せて早く逃げろ!」
「う、うん……!?」
ドラマのような台詞を言いながらリビングへ戻って行った独歩くん。今度、きちんと詳細を聞くことにしよう。
─ END ─
【あとがき】
本日はサイト開設一周年です!
麻天狼のお話は今後もたくさん書いて行きたいです。
▶貴女と出会って一年─BB
▶貴女と出会って一年─MTC
▶貴女と出会って一年─FP
▶貴女と出会って一年─DH
▶貴女と出会って一年─BAT
2025/06/23
