麻天狼
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。*゚+──ペトリコールが鼻を刺す
一目惚れをしたるあきちゃんと晴れて恋人同士になったのは、つい数ヶ月前の事。独歩ちんのアシストがあってこそ辿り着いた結果だという事は強く言っておこう。
ちなみに、今はるあきちゃんの自宅にお邪魔している。
本当は一緒に外出をする予定だったけど、空がどんよりと曇ってたのでやめた。たまにはまったりとお家デートを楽しむのも良い。
スマホで何かを検索していたるあきちゃんが、こちらに画面を見せながら笑顔で言った。
「最近オープンしたこのお店、すごく気になってるんだよね」
「お〜、めっちゃ良いじゃん! 俺っちも行きたいって思ってた!」
「他にも、前に友達が教えてくれた所も気になってて……」
言いながら、スマホで再び検索を始める彼女。
この先もずっと一緒に居たいと思うからこそ、やっぱりきちんと話しておかないとだよなぁ、と、るあきちゃんの長い睫毛を眺めながら思った。
「あ、このテーマパークも良いなって思ってて、……一二三?」
「ん? どしたん、るあきちゃん」
俺っちとした事が、考え事をしていて彼女の話を聞いていなかった。
すぐに笑顔を向けると、るあきちゃんは首を傾げながら口を開く。
「どうした、ってこっちの台詞だよ。なんかあった? 難しい顔するなんて珍しいね」
話し出すなら今だろう。でも、折角のお家デートで暗い話をするのもな、と思い、なかなか切り出せずに居た。
「……今じゃなくても、一二三の話したいタイミングで大丈夫だよ」
やっぱりるあきちゃんは優しい。
「ちょっち真面目な話なんだけどさー……」
「うん」
頷きながら、るあきちゃんは俺っちの手を優しく両手で包み込んでくれた。
「……俺っちさ、女の子が苦手だった、って言ったじゃん? その事、るあきちゃんにはちゃんと話しておいた方が良いかなって、思って」
「一二三が話してくれるなら、私もちゃんと聞くよ」
これから話す過去の事を知っても、君は変わらないで居てくれるだろうか。
息を吐き出して、るあきちゃんの目を見る。彼女は柔らかく微笑んでくれた。
「高三の……はは、ちょうど今時期だ」
カレンダーを見て、その偶然に乾いた笑いが漏れる。
るあきちゃんは、握った手に力を込めて来た。
「一二三、つらいなら無理して話さなくても良いよ?」
「るあきちゃん……」
正直、何かのきっかけでまた戻ってしまったらどうしようと思っていた。
話した結果、るあきちゃんが離れて行ったらどうしようと思っていた。
今が本当に、過去と決着を付ける時なのかも知れない。
なかなか話し出さない俺っちに向かって、るあきちゃんは安心させるように優しい笑顔を向ける。
「大丈夫。私だけは、一二三の味方だよ」
その言葉を聞いて、全身が強張った。鼓動も呼吸も速くなる。
落ち着け、落ち着け、落ち着け。
そう思えば思う程、身体は言う事を聞かなくなる。
無意識に彼女の手を振り解いてしまったようだが、るあきちゃんは変わらず寄り添ってくれた。
外は急に暗くなり、大粒の雨が窓を叩く音が響く。
今年も、苦手な季節が来たようだ。
─ END ─
【あとがき】
2025/06/12
一目惚れをしたるあきちゃんと晴れて恋人同士になったのは、つい数ヶ月前の事。独歩ちんのアシストがあってこそ辿り着いた結果だという事は強く言っておこう。
ちなみに、今はるあきちゃんの自宅にお邪魔している。
本当は一緒に外出をする予定だったけど、空がどんよりと曇ってたのでやめた。たまにはまったりとお家デートを楽しむのも良い。
スマホで何かを検索していたるあきちゃんが、こちらに画面を見せながら笑顔で言った。
「最近オープンしたこのお店、すごく気になってるんだよね」
「お〜、めっちゃ良いじゃん! 俺っちも行きたいって思ってた!」
「他にも、前に友達が教えてくれた所も気になってて……」
言いながら、スマホで再び検索を始める彼女。
この先もずっと一緒に居たいと思うからこそ、やっぱりきちんと話しておかないとだよなぁ、と、るあきちゃんの長い睫毛を眺めながら思った。
「あ、このテーマパークも良いなって思ってて、……一二三?」
「ん? どしたん、るあきちゃん」
俺っちとした事が、考え事をしていて彼女の話を聞いていなかった。
すぐに笑顔を向けると、るあきちゃんは首を傾げながら口を開く。
「どうした、ってこっちの台詞だよ。なんかあった? 難しい顔するなんて珍しいね」
話し出すなら今だろう。でも、折角のお家デートで暗い話をするのもな、と思い、なかなか切り出せずに居た。
「……今じゃなくても、一二三の話したいタイミングで大丈夫だよ」
やっぱりるあきちゃんは優しい。
「ちょっち真面目な話なんだけどさー……」
「うん」
頷きながら、るあきちゃんは俺っちの手を優しく両手で包み込んでくれた。
「……俺っちさ、女の子が苦手だった、って言ったじゃん? その事、るあきちゃんにはちゃんと話しておいた方が良いかなって、思って」
「一二三が話してくれるなら、私もちゃんと聞くよ」
これから話す過去の事を知っても、君は変わらないで居てくれるだろうか。
息を吐き出して、るあきちゃんの目を見る。彼女は柔らかく微笑んでくれた。
「高三の……はは、ちょうど今時期だ」
カレンダーを見て、その偶然に乾いた笑いが漏れる。
るあきちゃんは、握った手に力を込めて来た。
「一二三、つらいなら無理して話さなくても良いよ?」
「るあきちゃん……」
正直、何かのきっかけでまた戻ってしまったらどうしようと思っていた。
話した結果、るあきちゃんが離れて行ったらどうしようと思っていた。
今が本当に、過去と決着を付ける時なのかも知れない。
なかなか話し出さない俺っちに向かって、るあきちゃんは安心させるように優しい笑顔を向ける。
「大丈夫。私だけは、一二三の味方だよ」
その言葉を聞いて、全身が強張った。鼓動も呼吸も速くなる。
落ち着け、落ち着け、落ち着け。
そう思えば思う程、身体は言う事を聞かなくなる。
無意識に彼女の手を振り解いてしまったようだが、るあきちゃんは変わらず寄り添ってくれた。
外は急に暗くなり、大粒の雨が窓を叩く音が響く。
今年も、苦手な季節が来たようだ。
─ END ─
【あとがき】
2025/06/12
