「はよーっす、二郎。今日漢字のテストあるって噂だぜ」
「まじか、何処情報だよ」
朝、教室に入ってすぐダチに挨拶される。それと同時に、苦手なテストの知らせを受けた。
「さっき職員室行った奴が、先生の机に置いてあるの見たって」
「昨日の授業で何も言ってなくね？」
俺がそんな疑問を口にすると、更に隣の奴が話に入って来た。
「そりゃあ抜き打ちテストはそうだろ。それより二郎もさ、俺達に言ってない事あるよな？」
「はぁ？」
全然心当たりが無い。そんな俺の反応を見て、奴は声を潜めて言った。
「お前、隣のクラスの黒椿さんと付き合ってるだろ」
「なっ、何処情報だよ！？」
俺の焦り具合を肯定と受け取ったコイツ等は、ここぞとばかりに右手を挙げる。
「どうして言わなかったんですか〜？」
「きっかけはなんですか〜？」
ニヤニヤと楽しそうに笑うコイツ等の事だ。素直に吐かないと色々面倒だしずっとうるせぇ。
「別に秘密にしてた訳じゃねーけど…まだ付き合って日浅いし…」
「へぇ？」
「きっかけは…前にるあきがウチに依頼に来たんだよ。そっから話すようになって…付き合い始めたのは先月？くらい…」
とりあえず質問には答えた。あああ！早く先公教室に来いよ！俺の願いも虚しく、こういう時に限って先公は全然来ねぇし質問攻めも全然終わんねぇ。
「なぁ、何処まで行った？」
男子高校生らしい不躾な質問に、俺の顔は一気に熱くなった。コイツ等は再びニヤニヤしだして、「あらまあ」「あの二郎ちゃんも大人になったのね」なんてほざいてやがる。俺は観念して呟いた。
「………昨日、初めて手繋いだ」
俺の告白にコイツ等は間抜けな顔で驚いた後、盛大に吹き出して笑う。
「いや、まぁ、そんな事だろうとは思ってたわ！」
「流石は俺達の二郎！結婚式には呼んでくれよ！」
「け、結婚！？」
どういう意味だよ！と問いただそうとした矢先に、教室の扉が開いてようやく担任が姿を現した。が、今じゃねぇだろ！
バタバタと着席して行くクラスメイトを横目に、俺も自分の席に着く。
結婚…まだ高校生だし、そんな事を考えるのは早くねぇか？でも何も考えないのも遊びと思われそうだし…クソ〜〜、アイツ等の所為で頭が混乱して来た…。
朝のホームルームの内容は全然頭に入らず、テストの事もすっかり忘れていた俺は国語の授業でテストの存在に新鮮に驚き、挙げ句の果てには氏名欄にるあきの名前を書いて盛大に笑われたのだった。


─　END　─


【あとがき】
ヒプマイ世界では結婚したら男女どちらの苗字になるのが一般的なんですかね。黒椿二郎…山田るあき…。
2024/08/29