Dream
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夏の蒸し暑い空気が肌に纏わり付く。
自分は今、空却さんのお寺の畳で座禅を組んでいた。
顳顬 から流れる汗を拭おうとすると、空却さんに容赦無く肩を叩かれる。
「おら十四!さっきからそわそわ動くんじゃねぇ!」
「ひぃ!痛いっすよ空却さん!」
空却さんはいつも厳しい。腕を組んで仁王立ちする空却さんに「汗くらい拭いても良いじゃないっすか」と言い返そうと考えるも、理不尽に肩をばしばし叩かれそうなのでやめた。
「座禅っつーのは己と向き合い精神統一する為のもんだ。余計な事は考えんじゃねぇ」
己と向き合った結果、己は暑いと言っている。せめて水分補給したいっす…。
「集中しようにも、暑くて出来ないっすよぉ…」
「『心頭滅却すれば火もまた涼し』だ。暑いって思うから暑いんだよ」
自分は到底その領域に辿り着けそうもない。
「ごめんくださーい!」
仕方無く目を閉じ集中しようとした時、女性の声が響いた。その声に驚き肩を揺らすと、空却さんに叩かれる。もう自分の肩は真っ赤になっているに違いない。
涙が滲んだ瞼を開いて声の主を確認すると、縁側に大きな段ボール箱を持った女性が立っていた。
「くうちゃん、今年もおばあちゃん家でいっぱい野菜採れたから、お裾分けに来たよ」
見ると箱の中にはキュウリやナス、ミニトマトなどの新鮮な野菜がぎっしり詰まっていた。
「おー、いつもご苦労さん。るあきのばあちゃんトコの野菜は美味ぇからな」
空却さんがるあきと呼んだ女性の元へ寄ると、そのまま箱からキュウリを取り出し齧り付く。
その様子を畳に座ったまま眺めていると、段ボール箱を縁側に置いて「おーい」とるあきさんが声を上げてこちらに手を振った。
「じ、自分っすか…?」
おずおずと二人の元へ合流すると、るあきさんは親しげに声を掛けて来た。
「四十物十四くんだよね?くうちゃんと同じチームの!やっぱり生で見ると格好良いね!」
「はわ……あ、ありがとうございます!嬉しいっす!…こほん。その通り、我は四十物。マスターの導きにより己の魂の叫びと向き合っていた所だ」
無邪気な笑顔で褒められ、思わず素が出てしまった。
「私は黒椿るあき。くうちゃんとは小さい頃からの付き合いなんだ。おばあちゃんが趣味で野菜育ててて、こうして毎年お裾分けに来るの。良かったら十四くんも食べてみて」
「…では、この紅く輝く宝玉を頂こう」
段ボール箱からミニトマトを一つつまんで口へ入れる。
「これは…!口内で弾ける瑞々しさと爽やかな酸味が我の全身を駆け巡り、砂漠のように枯渇した身体に潤いをもたらす…さながらオアシス…!大変美味であるぞ…!」
冷房も自然の風も無い中、水分も摂らず干乾びていたので更に美味しく感じる。るあきさんが神に見えるっす…!
「美味しそうに食べてくれて嬉しいよ」
女神はそう言い微笑む。
あぁ、その笑顔が神々しく見えて眩しいっす。
「そうだ、次からは十四くんにも野菜お裾分けするね」
「わぁ!良いんすか!?家族も喜ぶと思うっす〜!」
「十四、すっかり素が出てんぞ」
るあきさんの提案に喜んでいると、空却さんに突っ込まれた。
「あ!…ん〜、るあきさんは特別なんすよ!」
初対面でこんなに居心地の良い人はなかなか居ない。
きっと彼女も、獄さんや空却さんのように自分に影響を与える人物なのだろうと直感的に思った。
「そんな事より、空却さんはるあきさんに『くうちゃん』って呼ばれてるんすね。可愛いじゃないすか、くうちゃん!」
「拙僧をそう呼んで良いのはるあきだけだ。気安く呼ぶんじゃねーよ」
「…空却さんにとっても、るあきさんは特別って事すか?」
少し考えてそう口にすると、空却さんは無言で肩をばしばしと叩いて来る。
その様子を見て、るあきさんは楽しそうに笑っていた。
─ END ─
【あとがき】
2024/08/11
自分は今、空却さんのお寺の畳で座禅を組んでいた。
「おら十四!さっきからそわそわ動くんじゃねぇ!」
「ひぃ!痛いっすよ空却さん!」
空却さんはいつも厳しい。腕を組んで仁王立ちする空却さんに「汗くらい拭いても良いじゃないっすか」と言い返そうと考えるも、理不尽に肩をばしばし叩かれそうなのでやめた。
「座禅っつーのは己と向き合い精神統一する為のもんだ。余計な事は考えんじゃねぇ」
己と向き合った結果、己は暑いと言っている。せめて水分補給したいっす…。
「集中しようにも、暑くて出来ないっすよぉ…」
「『心頭滅却すれば火もまた涼し』だ。暑いって思うから暑いんだよ」
自分は到底その領域に辿り着けそうもない。
「ごめんくださーい!」
仕方無く目を閉じ集中しようとした時、女性の声が響いた。その声に驚き肩を揺らすと、空却さんに叩かれる。もう自分の肩は真っ赤になっているに違いない。
涙が滲んだ瞼を開いて声の主を確認すると、縁側に大きな段ボール箱を持った女性が立っていた。
「くうちゃん、今年もおばあちゃん家でいっぱい野菜採れたから、お裾分けに来たよ」
見ると箱の中にはキュウリやナス、ミニトマトなどの新鮮な野菜がぎっしり詰まっていた。
「おー、いつもご苦労さん。るあきのばあちゃんトコの野菜は美味ぇからな」
空却さんがるあきと呼んだ女性の元へ寄ると、そのまま箱からキュウリを取り出し齧り付く。
その様子を畳に座ったまま眺めていると、段ボール箱を縁側に置いて「おーい」とるあきさんが声を上げてこちらに手を振った。
「じ、自分っすか…?」
おずおずと二人の元へ合流すると、るあきさんは親しげに声を掛けて来た。
「四十物十四くんだよね?くうちゃんと同じチームの!やっぱり生で見ると格好良いね!」
「はわ……あ、ありがとうございます!嬉しいっす!…こほん。その通り、我は四十物。マスターの導きにより己の魂の叫びと向き合っていた所だ」
無邪気な笑顔で褒められ、思わず素が出てしまった。
「私は黒椿るあき。くうちゃんとは小さい頃からの付き合いなんだ。おばあちゃんが趣味で野菜育ててて、こうして毎年お裾分けに来るの。良かったら十四くんも食べてみて」
「…では、この紅く輝く宝玉を頂こう」
段ボール箱からミニトマトを一つつまんで口へ入れる。
「これは…!口内で弾ける瑞々しさと爽やかな酸味が我の全身を駆け巡り、砂漠のように枯渇した身体に潤いをもたらす…さながらオアシス…!大変美味であるぞ…!」
冷房も自然の風も無い中、水分も摂らず干乾びていたので更に美味しく感じる。るあきさんが神に見えるっす…!
「美味しそうに食べてくれて嬉しいよ」
女神はそう言い微笑む。
あぁ、その笑顔が神々しく見えて眩しいっす。
「そうだ、次からは十四くんにも野菜お裾分けするね」
「わぁ!良いんすか!?家族も喜ぶと思うっす〜!」
「十四、すっかり素が出てんぞ」
るあきさんの提案に喜んでいると、空却さんに突っ込まれた。
「あ!…ん〜、るあきさんは特別なんすよ!」
初対面でこんなに居心地の良い人はなかなか居ない。
きっと彼女も、獄さんや空却さんのように自分に影響を与える人物なのだろうと直感的に思った。
「そんな事より、空却さんはるあきさんに『くうちゃん』って呼ばれてるんすね。可愛いじゃないすか、くうちゃん!」
「拙僧をそう呼んで良いのはるあきだけだ。気安く呼ぶんじゃねーよ」
「…空却さんにとっても、るあきさんは特別って事すか?」
少し考えてそう口にすると、空却さんは無言で肩をばしばしと叩いて来る。
その様子を見て、るあきさんは楽しそうに笑っていた。
─ END ─
【あとがき】
2024/08/11
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