Dream
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始業のチャイムが鳴ると同時に、教室には教科担当の先生が入って来た。一時間目は数学だ。今日は小テストがある。
「じゃあ早速小テスト始めるぞ〜。教科書ノート全部仕舞えよ〜」
「小テストあんのかよ!?」
先生の言葉に驚きの声を上げたのは、隣の席の二郎くんだ。
「昨日言ってたよ。二郎くん、勉強してないの?」
私が声を掛けると、彼は困ったような表情を浮かべて言った。
「あ、いや…、勉強もそうだけど、筆箱忘れたんだよ。ノートなら後でダチに借りりゃ良いと思ってたけど、テストはどうにもなんねぇ…」
頭を抱えて深い溜息をついた二郎くんの腕をつつき、私は自身の筆箱から出したシャーペンと半分に千切った消しゴムを彼の机に置いた。
「えっ!良いのか!?」
「もちろん」
「恩に着るぜ!」
飼い主に怒られてしゅんとする仔犬のようだった顔が一変、飼い主に褒められて嬉しそうにする仔犬のような笑顔を見せる。その後の授業も、二郎くんは私のシャーペンを使って真面目にノートを取っていた。
そんな一時間目の出来事を忘れかけていた放課後。二郎くんが、控えめに声を掛けて来た。
「…黒椿、これありがとな」
手渡されたシャーペンと消しゴムを受け取りながら、私は「このくらい気にしないでよ」と返す。しかし、二郎くんは真面目な顔で言った。
「いいや!まじで助かったから、何かお礼させてくれ!受けた恩はしっかり返せって兄ちゃんにも言われてんだ」
私が言うのもなんだが、イマドキの十代にしては随分と律儀で義理堅い。
「うーん…急に言われてもな…。今度困った事があったらお願いするよ」
「そうか?じゃあ何かあったら言ってくれよ!俺に出来る事ならなんでもするからさ!」
そこで、廊下から二郎くんの友人達が彼の名前を呼んだ。
「おー今行く!…じゃな、黒椿」
手を振って教室を後にした二郎くん。その姿を見送って、私は生徒会室へ向かった。
「はぁ…今日はすっかり遅くなっちゃったな…」
体育祭や学校祭などの行事が近付くと、生徒会の業務も増える。すると当然帰りも遅くなる。他の生徒会のメンバーとは家が反対の為、私はすっかり暗くなった道をひとりとぼとぼと歩き出した。
少し歩くと、前方から背の高い男性が歩いて来るのが見える。こういうシチュエーションは少し怖い。親や先生にも十分気を付けるよう言われているが、実際はどういう対策をしたら良いのか分からない。
なるべく距離を取る為、歩道の端を歩いて男性とすれ違おうとした時、その人に声を掛けられた。
「あれ?黒椿じゃねーか!」
聞き覚えのある声に顔を上げると、買い物バッグを提げた私服姿の二郎くんが居た。
「二郎くん…おつかい?」
「おう!卵が切れちゃってよー。そういう黒椿は今帰りなのか?」
「うん。生徒会の仕事が忙しくて」
「一人…だよな?危なくね?道めっちゃ暗いし」
心配そうな表情で問い掛けて来る二郎くんに「真っ直ぐ帰るから大丈夫だよ」と答えるが、彼はそれを聞かず「そうだ!」と声を上げた。
「俺が家まで送るよ!」
「え!?」
確か私の家と萬屋ヤマダは反対方向だ。それにおつかいを頼まれてるのだから、早く帰って届けた方が良い気もするが…。私が返事をする前に、二郎くんは来た道を戻るように進んで行く。
「あれ、行かねーの?」
振り向いて不思議そうな顔を向ける二郎くんに私は言った。
「家反対だし悪いよ。私なら大丈夫だから」
「なんかあってからじゃ遅ェだろ。それに今日の借りもあるし、遠慮すんなよな」
そこまで言うなら、彼の厚意を無下には出来ない。私的にも、そうしてくれると心強いのは確かだ。
「じゃあお言葉に甘えて…」
「おう!」
二郎くんの隣に並ぶと、改めてその背の高さに驚く。思わず彼を見上げると、ばちっと目が合った。
「えっ!?な、何…!?」
「…二郎くんこそ」
何故かとても驚いている二郎くんは、ぱっと顔を背けて呟いた。
「俺は別に…なんでもねーよ!早く帰ろうぜ!」
ぶっきらぼうに返されたが、その様子がどこか可愛らしくて私は思わず笑ってしまう。
「ふふ。そうだね」
教室で友達と居る時とは違った二郎くんの一面を見られて、私の胸はドキドキと高鳴っている。
その理由を知るのは、まだ先の話。
─ END ─
【あとがき】
タイトルは「ルネの青に溺れる鳥」様よりお借りしました。
あえて言うとしたら、う〜ん…優しい女子かな?←可愛いですよね。
2024/06/23
「じゃあ早速小テスト始めるぞ〜。教科書ノート全部仕舞えよ〜」
「小テストあんのかよ!?」
先生の言葉に驚きの声を上げたのは、隣の席の二郎くんだ。
「昨日言ってたよ。二郎くん、勉強してないの?」
私が声を掛けると、彼は困ったような表情を浮かべて言った。
「あ、いや…、勉強もそうだけど、筆箱忘れたんだよ。ノートなら後でダチに借りりゃ良いと思ってたけど、テストはどうにもなんねぇ…」
頭を抱えて深い溜息をついた二郎くんの腕をつつき、私は自身の筆箱から出したシャーペンと半分に千切った消しゴムを彼の机に置いた。
「えっ!良いのか!?」
「もちろん」
「恩に着るぜ!」
飼い主に怒られてしゅんとする仔犬のようだった顔が一変、飼い主に褒められて嬉しそうにする仔犬のような笑顔を見せる。その後の授業も、二郎くんは私のシャーペンを使って真面目にノートを取っていた。
そんな一時間目の出来事を忘れかけていた放課後。二郎くんが、控えめに声を掛けて来た。
「…黒椿、これありがとな」
手渡されたシャーペンと消しゴムを受け取りながら、私は「このくらい気にしないでよ」と返す。しかし、二郎くんは真面目な顔で言った。
「いいや!まじで助かったから、何かお礼させてくれ!受けた恩はしっかり返せって兄ちゃんにも言われてんだ」
私が言うのもなんだが、イマドキの十代にしては随分と律儀で義理堅い。
「うーん…急に言われてもな…。今度困った事があったらお願いするよ」
「そうか?じゃあ何かあったら言ってくれよ!俺に出来る事ならなんでもするからさ!」
そこで、廊下から二郎くんの友人達が彼の名前を呼んだ。
「おー今行く!…じゃな、黒椿」
手を振って教室を後にした二郎くん。その姿を見送って、私は生徒会室へ向かった。
「はぁ…今日はすっかり遅くなっちゃったな…」
体育祭や学校祭などの行事が近付くと、生徒会の業務も増える。すると当然帰りも遅くなる。他の生徒会のメンバーとは家が反対の為、私はすっかり暗くなった道をひとりとぼとぼと歩き出した。
少し歩くと、前方から背の高い男性が歩いて来るのが見える。こういうシチュエーションは少し怖い。親や先生にも十分気を付けるよう言われているが、実際はどういう対策をしたら良いのか分からない。
なるべく距離を取る為、歩道の端を歩いて男性とすれ違おうとした時、その人に声を掛けられた。
「あれ?黒椿じゃねーか!」
聞き覚えのある声に顔を上げると、買い物バッグを提げた私服姿の二郎くんが居た。
「二郎くん…おつかい?」
「おう!卵が切れちゃってよー。そういう黒椿は今帰りなのか?」
「うん。生徒会の仕事が忙しくて」
「一人…だよな?危なくね?道めっちゃ暗いし」
心配そうな表情で問い掛けて来る二郎くんに「真っ直ぐ帰るから大丈夫だよ」と答えるが、彼はそれを聞かず「そうだ!」と声を上げた。
「俺が家まで送るよ!」
「え!?」
確か私の家と萬屋ヤマダは反対方向だ。それにおつかいを頼まれてるのだから、早く帰って届けた方が良い気もするが…。私が返事をする前に、二郎くんは来た道を戻るように進んで行く。
「あれ、行かねーの?」
振り向いて不思議そうな顔を向ける二郎くんに私は言った。
「家反対だし悪いよ。私なら大丈夫だから」
「なんかあってからじゃ遅ェだろ。それに今日の借りもあるし、遠慮すんなよな」
そこまで言うなら、彼の厚意を無下には出来ない。私的にも、そうしてくれると心強いのは確かだ。
「じゃあお言葉に甘えて…」
「おう!」
二郎くんの隣に並ぶと、改めてその背の高さに驚く。思わず彼を見上げると、ばちっと目が合った。
「えっ!?な、何…!?」
「…二郎くんこそ」
何故かとても驚いている二郎くんは、ぱっと顔を背けて呟いた。
「俺は別に…なんでもねーよ!早く帰ろうぜ!」
ぶっきらぼうに返されたが、その様子がどこか可愛らしくて私は思わず笑ってしまう。
「ふふ。そうだね」
教室で友達と居る時とは違った二郎くんの一面を見られて、私の胸はドキドキと高鳴っている。
その理由を知るのは、まだ先の話。
─ END ─
【あとがき】
タイトルは「ルネの青に溺れる鳥」様よりお借りしました。
あえて言うとしたら、う〜ん…優しい女子かな?←可愛いですよね。
2024/06/23
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