MAD TRIGGER CREW
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。*゚+──銃兎が巻き添え喰らって禁煙する話
今日は久々の休日だと言うのに、ゆっくりする間も無く来客を知らせるチャイムが部屋に響いた。
「次から次へなんなんだ一体……」
まだインターホンを鳴らしてくれるだけマシだと考えよう。先程来た馬鹿は扉を蹴りまくって来たからな。
溜息をつきながら画面越しに相手を確認すると、そこには黒椿さんが立っていた。どう応対するか悩みながら、そっと扉を開ける。
「珍しいですね。わざわざ私の家に訪れるなんて」
「カクカクシカジカあって……。すみません、しばらくお邪魔しても大丈夫ですか?」
恐らく今この二人が鉢合うと、面倒な事になりかねない。とりあえず黒椿さんには一旦帰ってもらおうと考えるも、間の悪い事に奥から最初の来客が顔を出して来た。
「理鶯でも来たのか?」
「馬鹿、あっち行ってろ左馬刻!」
「左馬刻?」
ばっちりと黒椿さんの視界に左馬刻が入る。彼女は眉間に皺を寄せて左馬刻を睨んだ。
「どこに行ったのかと思えば、銃兎さんの所で愚痴でも言ってた訳?」
「てめぇこそ、銃兎ン家まで来て何するつもりだったんだよ」
「左馬刻には関係無いでしょ」
やはりそうだ。左馬刻は俺の家に来るなり煙草を咥え、終始無言を貫いていた為に理由は不明だが、どうやらこの二人は喧嘩中らしい。
玄関先で騒がれても迷惑だ。とりあえず二人をリビングへ連れて来る。
「えぇっと……一旦、状況説明をお願いしてもよろしいでしょうか?」
俺の問いに黒椿さんが答えてくれた。
「半月前から左馬刻の家で同棲してるっていうのは、きっと知ってますよね? 煙草を吸う時はベランダに出るってルールなんですけど、この人それを破ったんです。そして軽く言い合いになって、左馬刻が逆ギレして家を出たんですよ。煙草臭いのが嫌だから、私も家を出て……話でも聞いてもらおうと思って、銃兎さんの家に来た次第です」
「左馬刻の言い分は?」
俺が左馬刻に視線をやると、舌打ちを返された。
「俺様の家なんだから、どこで吸おうが勝手だろうが」
「煙草吸う人って本当に自分勝手だよね! 『吸って良い?』って聞いておきながら、拒否したら露骨に不機嫌になったりさぁ。そういう人ばっか」
一部のマナーが悪い奴等の所為で、喫煙者全員が悪者扱いを受けがちだ。俺も煙草を嗜む分、今の状況は肩身が狭い。
「やっぱ喫煙場所を決めるなんて生ぬるいものじゃなく、同棲するなら禁煙命令を出すべきだったかな」
あの左馬刻に禁煙を命じるなど、どんな事態に陥るのかは明白だろう。
ニコチン不足でイライラしている時の左馬刻は、それはもう手が付けられない。黒椿さんの身に危険が及ぶ可能性だって、ゼロではないのだ。
「そうだ。私、左馬刻が禁煙に成功するまで、荷物まとめて理鶯さんの所にお世話になろうかな。理鶯さん煙草吸わないし。優しいし」
理鶯の元へ行くのなら、身の危険は無いか。しかし禁煙に成功するまでとは、これは実質別れる事になったと捉えても過言では無い。
さて、左馬刻はどう返すのか。素直に謝罪……は、しないだろうな……。
「はっ、上等だ。やってやんよ、禁煙!」
「銃兎さん、お手数お掛けしますが、左馬刻が本当に禁煙に成功するか厳しくチェックしておいてください。じゃ!」
そう言い置いて、黒椿さんは俺の家を後にした。左馬刻に向き直ると、彼は俺を睨みながら指の関節を鳴らす。
「銃兎、てめぇも禁煙しやがれ」
予想外のとばっちりを受けている。
「俺が煙草辞める理由無いだろ」
「俺様が禁煙するってのに目の前で煙草吸われるなんざクソ腹立つだろうが」
流石、左馬刻様らしい理由だ。全く納得はしていないが。
……まぁ、理鶯とつるむようになってからは特に、体力低下などはひしひしと感じていた。この機会に、喫煙の頻度を減らすくらいはしておいても良いのかも知れない。
あれから数日。案の定、俺も左馬刻も禁煙には成功していない。
俺は飴やガムで誤魔化し、以前より本数を減らしてはいるが、慣れるまでは苦労しそうだ。
左馬刻はというと、高らかに禁煙宣言をした記憶を失っているのか、相変わらずの頻度で喫煙をし続けている。
「左馬刻、禁煙する気あるのか?」
「昨日より一本少ねぇ」
「ヘビースモーカーのお前には一本なんて誤差の範囲だろうが」
ドヤ顔で紫煙をくゆらす左馬刻にそう指摘をするも、聞こえないフリをされた。
それから更に数日。理鶯に黒椿さんの様子を聞いてみる事にした。
「るあきか。小官の料理を美味しそうに食してくれる為、こちらも色々と趣向を凝らして新しい調理法などに挑戦していた。非常に有意義な時間だったな」
腕を組んでしみじみとした様子で呟く理鶯。しかし、気になる言い方だ。
「……『だった』?」
「ああ。先日、左馬刻の元に戻ると言って荷物をまとめていたので、そのまま小官が送り届けてやったのだ。熟成させていた肉を馳走してやりたかったのだが……無念だ」
何の肉かは聞かないでおこう。
「それにしても、どうしてまた急に……。左馬刻は禁煙どころか、喫煙のペースも変わってないぞ」
俺の呟きに、理鶯はわずかに微笑みながら答えた。
「恋しくなったそうだ。左馬刻の事が」
「はあ?」
『いやぁ、すみません銃兎さん。なんだかんだ言っておきながら、左馬刻の煙草の匂いが恋しくなっちゃって。もちろん煙草は苦手なんですけど、ぎゅってされた時に服からかすかに香る感じとか、嫌いじゃないんだよなぁとか思っちゃったりして。えへへ、ごめんなさい、惚気 みたいな事言って』
黒椿さんに電話をすると、明るく笑いながら盛大な惚気話を聞かされる。
まさか、左馬刻はこうなる事が分かっていて、真面目に禁煙に取り組まなかったのか?
通話を終えると、理鶯が口を開く。
「るあきは元気そうだったか?」
「ええ、それはもう」
俺は無意識にポケットへ手を伸ばしていた。
一日半振りに、思い切り煙草の煙を肺に入れる。溜息と共に吐き出すと、ストレスが和らぎすっきりと頭が冴えて行くような気がした。
─ END ─
【あとがき】
2026/08/26
今日は久々の休日だと言うのに、ゆっくりする間も無く来客を知らせるチャイムが部屋に響いた。
「次から次へなんなんだ一体……」
まだインターホンを鳴らしてくれるだけマシだと考えよう。先程来た馬鹿は扉を蹴りまくって来たからな。
溜息をつきながら画面越しに相手を確認すると、そこには黒椿さんが立っていた。どう応対するか悩みながら、そっと扉を開ける。
「珍しいですね。わざわざ私の家に訪れるなんて」
「カクカクシカジカあって……。すみません、しばらくお邪魔しても大丈夫ですか?」
恐らく今この二人が鉢合うと、面倒な事になりかねない。とりあえず黒椿さんには一旦帰ってもらおうと考えるも、間の悪い事に奥から最初の来客が顔を出して来た。
「理鶯でも来たのか?」
「馬鹿、あっち行ってろ左馬刻!」
「左馬刻?」
ばっちりと黒椿さんの視界に左馬刻が入る。彼女は眉間に皺を寄せて左馬刻を睨んだ。
「どこに行ったのかと思えば、銃兎さんの所で愚痴でも言ってた訳?」
「てめぇこそ、銃兎ン家まで来て何するつもりだったんだよ」
「左馬刻には関係無いでしょ」
やはりそうだ。左馬刻は俺の家に来るなり煙草を咥え、終始無言を貫いていた為に理由は不明だが、どうやらこの二人は喧嘩中らしい。
玄関先で騒がれても迷惑だ。とりあえず二人をリビングへ連れて来る。
「えぇっと……一旦、状況説明をお願いしてもよろしいでしょうか?」
俺の問いに黒椿さんが答えてくれた。
「半月前から左馬刻の家で同棲してるっていうのは、きっと知ってますよね? 煙草を吸う時はベランダに出るってルールなんですけど、この人それを破ったんです。そして軽く言い合いになって、左馬刻が逆ギレして家を出たんですよ。煙草臭いのが嫌だから、私も家を出て……話でも聞いてもらおうと思って、銃兎さんの家に来た次第です」
「左馬刻の言い分は?」
俺が左馬刻に視線をやると、舌打ちを返された。
「俺様の家なんだから、どこで吸おうが勝手だろうが」
「煙草吸う人って本当に自分勝手だよね! 『吸って良い?』って聞いておきながら、拒否したら露骨に不機嫌になったりさぁ。そういう人ばっか」
一部のマナーが悪い奴等の所為で、喫煙者全員が悪者扱いを受けがちだ。俺も煙草を嗜む分、今の状況は肩身が狭い。
「やっぱ喫煙場所を決めるなんて生ぬるいものじゃなく、同棲するなら禁煙命令を出すべきだったかな」
あの左馬刻に禁煙を命じるなど、どんな事態に陥るのかは明白だろう。
ニコチン不足でイライラしている時の左馬刻は、それはもう手が付けられない。黒椿さんの身に危険が及ぶ可能性だって、ゼロではないのだ。
「そうだ。私、左馬刻が禁煙に成功するまで、荷物まとめて理鶯さんの所にお世話になろうかな。理鶯さん煙草吸わないし。優しいし」
理鶯の元へ行くのなら、身の危険は無いか。しかし禁煙に成功するまでとは、これは実質別れる事になったと捉えても過言では無い。
さて、左馬刻はどう返すのか。素直に謝罪……は、しないだろうな……。
「はっ、上等だ。やってやんよ、禁煙!」
「銃兎さん、お手数お掛けしますが、左馬刻が本当に禁煙に成功するか厳しくチェックしておいてください。じゃ!」
そう言い置いて、黒椿さんは俺の家を後にした。左馬刻に向き直ると、彼は俺を睨みながら指の関節を鳴らす。
「銃兎、てめぇも禁煙しやがれ」
予想外のとばっちりを受けている。
「俺が煙草辞める理由無いだろ」
「俺様が禁煙するってのに目の前で煙草吸われるなんざクソ腹立つだろうが」
流石、左馬刻様らしい理由だ。全く納得はしていないが。
……まぁ、理鶯とつるむようになってからは特に、体力低下などはひしひしと感じていた。この機会に、喫煙の頻度を減らすくらいはしておいても良いのかも知れない。
あれから数日。案の定、俺も左馬刻も禁煙には成功していない。
俺は飴やガムで誤魔化し、以前より本数を減らしてはいるが、慣れるまでは苦労しそうだ。
左馬刻はというと、高らかに禁煙宣言をした記憶を失っているのか、相変わらずの頻度で喫煙をし続けている。
「左馬刻、禁煙する気あるのか?」
「昨日より一本少ねぇ」
「ヘビースモーカーのお前には一本なんて誤差の範囲だろうが」
ドヤ顔で紫煙をくゆらす左馬刻にそう指摘をするも、聞こえないフリをされた。
それから更に数日。理鶯に黒椿さんの様子を聞いてみる事にした。
「るあきか。小官の料理を美味しそうに食してくれる為、こちらも色々と趣向を凝らして新しい調理法などに挑戦していた。非常に有意義な時間だったな」
腕を組んでしみじみとした様子で呟く理鶯。しかし、気になる言い方だ。
「……『だった』?」
「ああ。先日、左馬刻の元に戻ると言って荷物をまとめていたので、そのまま小官が送り届けてやったのだ。熟成させていた肉を馳走してやりたかったのだが……無念だ」
何の肉かは聞かないでおこう。
「それにしても、どうしてまた急に……。左馬刻は禁煙どころか、喫煙のペースも変わってないぞ」
俺の呟きに、理鶯はわずかに微笑みながら答えた。
「恋しくなったそうだ。左馬刻の事が」
「はあ?」
『いやぁ、すみません銃兎さん。なんだかんだ言っておきながら、左馬刻の煙草の匂いが恋しくなっちゃって。もちろん煙草は苦手なんですけど、ぎゅってされた時に服からかすかに香る感じとか、嫌いじゃないんだよなぁとか思っちゃったりして。えへへ、ごめんなさい、
黒椿さんに電話をすると、明るく笑いながら盛大な惚気話を聞かされる。
まさか、左馬刻はこうなる事が分かっていて、真面目に禁煙に取り組まなかったのか?
通話を終えると、理鶯が口を開く。
「るあきは元気そうだったか?」
「ええ、それはもう」
俺は無意識にポケットへ手を伸ばしていた。
一日半振りに、思い切り煙草の煙を肺に入れる。溜息と共に吐き出すと、ストレスが和らぎすっきりと頭が冴えて行くような気がした。
─ END ─
【あとがき】
2026/08/26
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