100年の片想いと実ってからの100年。

  • ヴァレッタ

    …ふう、…めっちゃ山……疲れたぁ…

  • ヴァレッタ

    こんな所に住んでんのか?あの変わりもん……

  • ジェイド

    ええ。その変わり者に会いにわざわざこんな所まで来るなんて、あなたも相当な変わり者です

  • ヴァレッタ

  • ヴァレッタ

    ……変わりもんのくせに変わってないな。相変わらず変わりもんだ

  • ジェイド

    ふふっ

  • ジェイド

    ………久しぶりですね

  • ヴァレッタ

    ああ

  • ジェイド

    ………待ちくたびれましたよ

  • ヴァレッタ

    ………ごめん

  • ジェイド

    本当に…待っていました。…何も変わらずに

  • ヴァレッタ

    変わって…ないのか

  • ジェイド

    はい…何も

  • ヴァレッタ

    …そうか

  • ヴァレッタ

    ………好きでいてくれて、ありがとう

  • ジェイド

    おやおや…これはまたらしくない事を

  • ジェイド

    ……抱き締めても?

  • ヴァレッタ

    ………うん

  • …ギュッ、

  • ジェイド

    ………おかえりなさい

  • ヴァレッタ

    ………ただいま

  • ─────

  • ヴァレッタ

    …見渡す限りめっちゃ山だな…

  • ジェイド

    山ですからね

  • ジェイド

    ところで…突然来ましたが僕に妻子がいたらどうしていたんですか?

  • ヴァレッタ

    挨拶して帰るよ。そんな事もあろうかとこんな形で来たんだし

  • ジェイド

    一見するとどちらか分かりませんが…

  • ヴァレッタ

    で、妻子はいるの?

  • ジェイド

    ……さぁ、ふふ。どうでしょう

  • ヴァレッタ

    ………山にはとっくに飽きていると思ったけど

  • ジェイド

    ええ、再燃しました。ふと思い出しまして。あなたと愛し合った時の約束を

  • ヴァレッタ

    あ、愛し……?

  • ジェイド

    学生時代にいずれは山で自給自足の生活を一緒に……、覚えていませんか?

  • ヴァレッタ

    ………

  • ジェイド

    将来を誓い合ったのに、あなたは僕を捨てて王子様と結婚してしまいましたね

  • ヴァレッタ

    ……………

  • ジェイド

    それでもずっとあなたを想っていました

  • ヴァレッタ

    ………待たせたな

  • ジェイド

    ………。頭を撫でられたのは久しぶりです。…あなたに撫でられたのが最後ですから

  • ヴァレッタ

    ええ?お前ずっと一人でいたの?恋人は?

  • ジェイド

    何人かとお付き合いしましたよ。でも頭を撫でられた事はありませんでしたね

  • ヴァレッタ

    へー何でだろ

  • ジェイド

    絶対に嫌な事リストに入れていましたので

  • ヴァレッタ

    何そのリストめんどくさ

  • ジェイド

    付き合う時に提示するものです

  • ヴァレッタ

    めんどくさ。なんで入れたの?別に嫌じゃないだろ?

  • ジェイド

    嫌ですよ。あなた以外は

  • ヴァレッタ

    ………へー…何でだろ

  • ジェイド

    何ででしょうね

  • ヴァレッタ

    ………。………どんな人と付き合ったの?

  • ジェイド

    色々な人です。女性とも男性とも付き合いましたが長くは続きませんでした

  • ヴァレッタ

    なんで?

  • ジェイド

    どうにも退屈で…。…満足させてくれる人はいなかったので

  • ヴァレッタ

    満足ねぇ…理想高いんじゃない?

  • ジェイド

    高いのではなく決まっているんです

  • ヴァレッタ

    決まってるって君…

  • ジェイド

    中にはいい人もいました。でもどこか違うんです。どんなにいい性格の人も、どんなに話が合う人も、どんなに見た目が好みでも…どうしても違う。当然ですね

  • ジェイド

    あの方達は、あなたではないですから

  • ヴァレッタ

    …………

  • ジェイド

    僕は…あなたが好きなんです。…ずっと、あなただけを、愛しています

  • ヴァレッタ

    ………

  • ヴァレッタ

    ………、私は………、

  • ヴァレッタ

    私はきっともうつまんねぇ奴だよ。100年も……ただの女として生きたんだから

  • ジェイド

    ……確かめてもいいですか?

  • ヴァレッタ

    どうやって?

  • ジェイド

    僕と…一緒にいてください

  • ヴァレッタ

    妻子がいるだろう?

  • ジェイド

    いないと分かっているくせに

  • ヴァレッタ

    さっき濁したから

  • ジェイド

    意地悪

  • ヴァレッタ

    僕の知る中で最も意地の悪い奴に意地悪って言われた…

  • ジェイド

    一緒に生きてください。これから先…死ぬまで、僕と一緒に

  • ヴァレッタ

    ……んーどうしようかなぁ

  • ジェイド

    …100年も大人しく待っていた僕にご褒美は?

  • ヴァレッタ

    一緒にいる事がご褒美になるの?

  • ジェイド

    これ以上ないほどの

  • ヴァレッタ

    …そう。じゃあ、いいよ

  • ジェイド

    ………

  • 『なんでそんなに、僕なんかの事が……い、意味分かんねぇ……』

  • ジェイド

    (変わりましたね。誰からも愛されるはずがないと思って卑屈になっていた頃よりも……)

  • ジェイド

    ……いい顔です

  • ヴァレッタ

    顔?

  • ジェイド

    (きっと誰よりも愛されたから、自身が愛されるべき存在であると気が付いたのでしょう。…それは、僕ではダメだった。彼だったから気付かせる事ができたんでしょうね。悔しいですが……彼には感謝しなくては……)

  • これから100年、君と共に。

  • ジェイドの100年の片想いと実ってからの100年。

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