まるでおとぎ話のような、

  • レオナ

    おい、実家に行く。お前も来い

  • ヴァレッタ

    え、やだ

  • レオナ

    あ?

  • ヴァレッタ

    こないだ婚約者だなんて言って家族に紹介しただろ…

  • レオナ

    ………何がご不満で?

  • ヴァレッタ

    別れたと言え。たかが恋人ごっこにあんたの家族を巻き込んでおおごとにしたくない

  • レオナ

    ………恋人ごっこ、ねぇ。俺と一緒になる気はねぇと?

  • ヴァレッタ

    冷静になって考えろよ、なれるわけないだろ

  • レオナ

    お前はどうしたいんだって聞いてんだよ

  • ヴァレッタ

    どうもこうも常識的に考えて…

  • レオナ

    ガルル…

  • ヴァレッタ

    ………

  • ヴァレッタ

    ………一緒にいたい。ただそれだけ

  • レオナ

    ならいい

  • レオナ

    来いよ。可愛がってやる

  • ヴァレッタ

    ………

  • レオナ

    ………おい

  • ヴァレッタ

    ………レオナさんは、私と一緒にいたい?

  • レオナ

    …ああ。逃げようもんなら鎖で縛るくらいにはな

  • ヴァレッタ

    ………私の事が好きかな

  • レオナ

    じゃなかったらここまで馬鹿になってねぇ

  • ヴァレッタ

    ………

  • ヴァレッタ

    …私も………、でも、………僕は、

  • レオナ

    ………ヴァレッタ、来い

  • ヴァレッタ

    ………行けない。だって………

  • レオナ

    ………

  • ヴァレッタ

    一国の王子様が…ガキも産めねぇような紛い物を相手にする訳にはいかないだろ…

  • レオナ

    この俺が、ガキが欲しいなんて言うと思うか?

  • ヴァレッタ

    ………

  • レオナ

    まさか第二王子で良かったと思う日が来るとはな

  • ヴァレッタ

    え…?

  • レオナ

    お前がいなかったら俺は一生自分の産まれを疎むだけだった

  • レオナ

    はっ…何が起こるか分からねぇもんだな。だが丁度いい

  • レオナ

    お前を娶っても何の問題もないからな

  • ヴァレッタ

    ………っ、

  • ヴァレッタ

    ………面白い冗談だ…ふふ、

  • ────────
    ─────
    ───

  • 婚約式
  • ヴァレッタ

    ………あれ?冗談じゃなかったの!?

  • レオナ

    ああ?誰がこんな面倒な冗談言うかよ

  • ヴァレッタ

    面倒って…

  • レオナ

    好きでもねぇ奴に冗談で言ってみろ。想像しただけで面倒じゃねぇか

  • ヴァレッタ

    確かに言われたメスは本気にして浮かれるだろうが僕は本気になんて…

  • レオナ

    オイ、言葉をそのまま受け取れよ

  • ヴァレッタ

    ………私が好きだから冗談なんかじゃないって?

  • レオナ

    そう言っただろうが

  • レオナ

    ずっと、一貫してそう言ってるだろ

  • ヴァレッタ

    そうか……そうだったかも

  • レオナ

    かも……?

  • ヴァレッタ

    ふふっ、陸に上がって王子様と結婚なんて…おとぎ話の人魚姫みたいだ!

  • レオナ

    …悪くないだろ?

  • ヴァレッタ

    ふふ…。でもまぁ無理だが。本当はオスだしいくつか犯罪も犯してる。とてもじゃないが王族と一緒になんてなれないよ

  • レオナ

    言わなきゃバレねぇよ。ここまで来て逃げられると思うな

  • ヴァレッタ

    え……ええ?

  • レオナ

    だいたいそれくらい面白みのある奴の方が嫌われ者の第二王子にはお似合いだ

  • ヴァレッタ

    ……知れたら死刑なんだが……

  • レオナ

    一緒に死んでやるよ

  • ヴァレッタ

    ………なんか、ものすごく口説かれている気がする…

  • レオナ

    今更怖気付くな。らしくもねぇ

  • ヴァレッタ

    私の為に死ねる?

  • レオナ

    お前となら死んでやる

  • ヴァレッタ

    ……っふふ、馬鹿だなぁ…

  • レオナ

    ああ、お前のおかげですっかり頭が悪くなった。責任取ってくれんだろ?

  • ヴァレッタ

    ん……、………うん

  • ─────

  • アズール

    夕焼けの草原の王族と太いパイプを持てるなんて願ってもない!本当に素晴らしい!やっぱり君は最高だ!

  • ヴァレッタ

    アズールが嬉しそうで僕も嬉しいよ

  • アズール

    ただ……もしも僕の為ならそこまでする必要はない。君には自由に好きな事をしてほしいと思っているんだ

  • ヴァレッタ

    ………初めてだったんだ。ユニーク魔法が効かなかったのは。…落とすのに苦労したのは

  • 『生まれた時から忌み嫌われ居場所も未来もなく生きてきた……』

  • ヴァレッタ

    それに…少し似ているんだ。私と彼は…。だから一緒に生きてもいいと…生きてみたいと思ったんだ

  • アズール

    ………君が幸せなら僕はそれでいい。…契約を取り付けます。君が幸せじゃないと感じた場合持てる財産を全て僕に譲渡すると

  • ヴァレッタ

    そんな契約…結ぶか?

  • アズール

    断れば幸せにする自信がないという事になる。あのレオナさんがそんな弱気な事を言うと?

  • ヴァレッタ

    どうだろうね

  • アズール

    契約を結ばない……つまり幸せにする自信がないと言うのなら持ちうる限りの力を使って婚約を破棄させます

  • アズール

    …君は幸せにならなければいけない。…幸せだと言って笑っていなければいけないんだ

  • ヴァレッタ

    ……アズール、………ありがとう

  • ───

  • レオナ

    ………チッ…、

  • フロイド

    トド先輩何してんの?ヴァレッタなら中にいるけど

  • ジェイド

    盗み聞きとはまた…良い趣味をお持ちで

  • レオナ

    チィッ!!

  • そんな契約結ばなくても不幸にするつもりは毛頭ねぇよ。でもそれほど彼女が大切なんだろうなの舌打ちとただのうるせぇという怒りの舌打ち。

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