拓磨×珠紀
「拓磨、まだ終わらないの?」
「あともう少しなんだ、待っててくれ」
「それもう何回も聞いたよ?」
「分かってるって」
放課後、拓磨の趣味であるクロスワードパズルに付き合っている珠紀は、なかなか解き終わらない拓磨にもどかしさや焦れったさを感じていた。
拓磨御用達のクロスワードパズルはけっこう難しいようで、誰も完成させたところを見たことがないらしい。ならば、ホームルームが終わって一時間経っても数えられるくらいしか埋まらないのも納得がいく。
先ほどのやり取りも、もう何度したか分からない。珠紀はせっかく恋人になった拓磨と一緒にいられて嬉しいことには変わりないのだが、こうも放っておかれると面白くない。
「ねえ、拓磨〜」
「分かった分かった」
この男は何も分かっていない。恋人を放ったらかして、珠紀がむくれていることにも気づかずクロスワードパズルに夢中になっているのだから。
ここは何か仕返ししてやらないと気が済まない。珠紀は拓磨を驚かせる方法を考えた。
そして、恋人にしかできない驚かせ方を思いついたのだ。
「拓磨」
「もう少しだから……」
顔を上げた拓磨の隙を狙ってキスをした。勢いあまったせいで唇から少しずれてしまったけれど、キスに変わりない。
「な、珠紀!」
キスをされて拓磨は赤面している。目元が赤くなり、手から鉛筆を落とした。コロコロと転がる鉛筆には夕日に当たり影が伸びている。
「ちょっとは私にかまってよね」
「だからって、教室で、き、キス、なんてすることねえだろ! 人が見てたらどうすんだ!」
「大丈夫だよ、人の気配はしないから」
「そういうことじゃなくて!」
顔を赤くしながらそれでも怒る拓磨は、あくまで人の目があるかもしれないところでキスをしたからこうして怒っているわけで、キスそのものに対して嫌だから言っているわけじゃないことは珠紀にも分かっていた。
拓磨の意識がクロスワードパズルから自分に向いたことに気をよく珠紀はもう一度唇を寄せた。今度はちゃんと唇同士が触れ合い、あたたかい感触が唇を通して伝わる。
本当に嫌なら拓磨なら避けることができるはずだ。それをしないということは、やはり嫌だとは思っていないからであって。珠紀はそれで放ったらかしにされたことを許してあげた。
夕暮れの教室の中、影が重なる。その影は夕日のせいで長く伸び、教室の大部分を占めている。無人のここは、若い恋人たちの甘い時間を過ごす場所になっていた。
なんだかんだ言っていた拓磨も角度を変えて何度もキスをする。少しずつ心が満たされている珠紀はそっと身体を離した。
「ふふ、教室でいけないことしちゃったね」
「なんだ、不良ぶってるのか?」
「そうじゃないけど、背徳的でなんだかぞくぞくする」
「おまえなあ……」
そう言って拓磨はぽんぽんと頭を撫でた。珠紀の暴挙の原因に思い至ったらしい拓磨は苦笑しながら珠紀の長い髪を撫でる。
筆記用具とクロスワードパズルを鞄にしまい、帰り支度をした。
「ほら、帰るぞ、珠紀」
「うん」
自然と繋がれた手は指を絡めて重なる。拓磨とこうしているだけで安心できる珠紀はそっと身を寄せた。
「あともう少しなんだ、待っててくれ」
「それもう何回も聞いたよ?」
「分かってるって」
放課後、拓磨の趣味であるクロスワードパズルに付き合っている珠紀は、なかなか解き終わらない拓磨にもどかしさや焦れったさを感じていた。
拓磨御用達のクロスワードパズルはけっこう難しいようで、誰も完成させたところを見たことがないらしい。ならば、ホームルームが終わって一時間経っても数えられるくらいしか埋まらないのも納得がいく。
先ほどのやり取りも、もう何度したか分からない。珠紀はせっかく恋人になった拓磨と一緒にいられて嬉しいことには変わりないのだが、こうも放っておかれると面白くない。
「ねえ、拓磨〜」
「分かった分かった」
この男は何も分かっていない。恋人を放ったらかして、珠紀がむくれていることにも気づかずクロスワードパズルに夢中になっているのだから。
ここは何か仕返ししてやらないと気が済まない。珠紀は拓磨を驚かせる方法を考えた。
そして、恋人にしかできない驚かせ方を思いついたのだ。
「拓磨」
「もう少しだから……」
顔を上げた拓磨の隙を狙ってキスをした。勢いあまったせいで唇から少しずれてしまったけれど、キスに変わりない。
「な、珠紀!」
キスをされて拓磨は赤面している。目元が赤くなり、手から鉛筆を落とした。コロコロと転がる鉛筆には夕日に当たり影が伸びている。
「ちょっとは私にかまってよね」
「だからって、教室で、き、キス、なんてすることねえだろ! 人が見てたらどうすんだ!」
「大丈夫だよ、人の気配はしないから」
「そういうことじゃなくて!」
顔を赤くしながらそれでも怒る拓磨は、あくまで人の目があるかもしれないところでキスをしたからこうして怒っているわけで、キスそのものに対して嫌だから言っているわけじゃないことは珠紀にも分かっていた。
拓磨の意識がクロスワードパズルから自分に向いたことに気をよく珠紀はもう一度唇を寄せた。今度はちゃんと唇同士が触れ合い、あたたかい感触が唇を通して伝わる。
本当に嫌なら拓磨なら避けることができるはずだ。それをしないということは、やはり嫌だとは思っていないからであって。珠紀はそれで放ったらかしにされたことを許してあげた。
夕暮れの教室の中、影が重なる。その影は夕日のせいで長く伸び、教室の大部分を占めている。無人のここは、若い恋人たちの甘い時間を過ごす場所になっていた。
なんだかんだ言っていた拓磨も角度を変えて何度もキスをする。少しずつ心が満たされている珠紀はそっと身体を離した。
「ふふ、教室でいけないことしちゃったね」
「なんだ、不良ぶってるのか?」
「そうじゃないけど、背徳的でなんだかぞくぞくする」
「おまえなあ……」
そう言って拓磨はぽんぽんと頭を撫でた。珠紀の暴挙の原因に思い至ったらしい拓磨は苦笑しながら珠紀の長い髪を撫でる。
筆記用具とクロスワードパズルを鞄にしまい、帰り支度をした。
「ほら、帰るぞ、珠紀」
「うん」
自然と繋がれた手は指を絡めて重なる。拓磨とこうしているだけで安心できる珠紀はそっと身を寄せた。