晶×珠洲
毎日くもり空でいつ雨が降るかも分からないという状況にあるのに、珠洲は傘を忘れてしまった。それを思い出したのは、家を出て学校に着いてからだった。
まあ、いつも雨が降るわけではないし、今日もなんとかなるだろうと思っていたが、悲しいことになんとかならなかった。
沙那と加奈は一般の人には見えないため、彼女達が荷物を持ってきたとしても宙に浮いているようにしか見えない。そのため、珠洲や陸が忘れ物をしても届けてもらえないのが実情だった。
放課後になっても雨は止まず、珠洲はずぶ濡れで帰ることが決まり憂鬱でため息をついた。
「おい珠洲どうした、そんなデカいため息なんかついて」
「晶……」
教室で珍しく話しかけてきた晶に珠洲は戸惑う。
だが、口から出てしまったものは仕方ない。
「傘忘れちゃったの。すごい雨だからどうしようかなって」
「お前傘忘れたのか? 陸にでも入れてもらえばいいじゃねーか」
言われて気づいた。確かに陸なら快く傘に入れてくれそうだ。
けれど。
「私、晶に入れてもらおうと思ったの」
口をついて出たのは本音だった。弟より先に幼なじみが出たことは陸に対して申し訳なく思う。それでも、傘に入れてもらうなら晶しかいないと思ったのだ。
それを聞いた晶は瞬いた。
そして、「仕方ねえな」と言って、荷物をまとめた。
「晶、どうしたの」
「どうしたのじゃないだろ。珠洲、お前も荷物まとめろ。一緒に帰るんだろ?」
ぶっきらぼうに言いながら、口元にはわすがに笑みが浮かんでいた。珠洲は晶のこういう優しさが昔から大好きなのだ。甘えてるといえばそれまでだが、その甘えを許してくれる晶が好きなのだ。
「ありがとう」
「どういたしまして」
珠洲は急いで鞄の中に教科書を詰めていく。晶は遅くなったくらいで置いて行ったりなどしないと分かっているが、逸る心に身体が突き動かされる。
「支度できました」
「おう、帰るぞ」
「うん!」
人が少なくなった校舎を並んで歩く。生徒達の喧騒がどこか遠くに聞こえ、隣を歩く晶をそっと見上げた。いつの間にかできた身長差に寂しく思うが、逞しい男の子になったことは珠洲が一番よく知っている。
下駄箱で上履きからローファーに履き替え、すぐそばから聞こえる雨音はざああと鼓膜をついた。
「雨、すごいね」
「分かってるならなんで傘を忘れるんだよ」
「朝バタバタしてたの」
「ふうん」
晶は傘立てから自分の傘を見つけると、珠洲を手招きして傘を広げて中に入れた。
校舎を出るとすぐに雨足強い雨が傘に降り注ぐ。
「晶、ありがとう」
「ん」
一人用の傘に二人で入ると狭くて、どうしても身を寄せる必要がある。珠洲は晶の腕にくっつくような形で傘の中に収まった。
幼い頃はよくこうしてくっついていたのに、いつからか物理的に距離ができてしまった。男女だからと言われたらそれまでだが、珠洲は寂しかったのだ。
でも、晶はこうして珠洲が望めば叶えてくれる。本質は変わっていない晶に嬉しくなる。
「ほら、もっと近寄れ、珠洲」
肩が少し濡れてしまっている晶は、それでも珠洲が濡れないようにと優しく肩を抱き寄せた。
「……晶は優しいね」
「そうか?」
「うん、晶はずっと優しいよ」
腕にしがみつきたくなったが、珠洲は晶とそういう関係じゃない。あくまで幼なじみで、仲の良い友達がいいところだ。そこまで迷惑をかけたくない珠洲は、この心地よい距離がいつまでも続けばいいと願った。
雨足は強いまま。腕越しに伝わる熱を晶も感じてくれたらいいと珠洲は一人思う。
まあ、いつも雨が降るわけではないし、今日もなんとかなるだろうと思っていたが、悲しいことになんとかならなかった。
沙那と加奈は一般の人には見えないため、彼女達が荷物を持ってきたとしても宙に浮いているようにしか見えない。そのため、珠洲や陸が忘れ物をしても届けてもらえないのが実情だった。
放課後になっても雨は止まず、珠洲はずぶ濡れで帰ることが決まり憂鬱でため息をついた。
「おい珠洲どうした、そんなデカいため息なんかついて」
「晶……」
教室で珍しく話しかけてきた晶に珠洲は戸惑う。
だが、口から出てしまったものは仕方ない。
「傘忘れちゃったの。すごい雨だからどうしようかなって」
「お前傘忘れたのか? 陸にでも入れてもらえばいいじゃねーか」
言われて気づいた。確かに陸なら快く傘に入れてくれそうだ。
けれど。
「私、晶に入れてもらおうと思ったの」
口をついて出たのは本音だった。弟より先に幼なじみが出たことは陸に対して申し訳なく思う。それでも、傘に入れてもらうなら晶しかいないと思ったのだ。
それを聞いた晶は瞬いた。
そして、「仕方ねえな」と言って、荷物をまとめた。
「晶、どうしたの」
「どうしたのじゃないだろ。珠洲、お前も荷物まとめろ。一緒に帰るんだろ?」
ぶっきらぼうに言いながら、口元にはわすがに笑みが浮かんでいた。珠洲は晶のこういう優しさが昔から大好きなのだ。甘えてるといえばそれまでだが、その甘えを許してくれる晶が好きなのだ。
「ありがとう」
「どういたしまして」
珠洲は急いで鞄の中に教科書を詰めていく。晶は遅くなったくらいで置いて行ったりなどしないと分かっているが、逸る心に身体が突き動かされる。
「支度できました」
「おう、帰るぞ」
「うん!」
人が少なくなった校舎を並んで歩く。生徒達の喧騒がどこか遠くに聞こえ、隣を歩く晶をそっと見上げた。いつの間にかできた身長差に寂しく思うが、逞しい男の子になったことは珠洲が一番よく知っている。
下駄箱で上履きからローファーに履き替え、すぐそばから聞こえる雨音はざああと鼓膜をついた。
「雨、すごいね」
「分かってるならなんで傘を忘れるんだよ」
「朝バタバタしてたの」
「ふうん」
晶は傘立てから自分の傘を見つけると、珠洲を手招きして傘を広げて中に入れた。
校舎を出るとすぐに雨足強い雨が傘に降り注ぐ。
「晶、ありがとう」
「ん」
一人用の傘に二人で入ると狭くて、どうしても身を寄せる必要がある。珠洲は晶の腕にくっつくような形で傘の中に収まった。
幼い頃はよくこうしてくっついていたのに、いつからか物理的に距離ができてしまった。男女だからと言われたらそれまでだが、珠洲は寂しかったのだ。
でも、晶はこうして珠洲が望めば叶えてくれる。本質は変わっていない晶に嬉しくなる。
「ほら、もっと近寄れ、珠洲」
肩が少し濡れてしまっている晶は、それでも珠洲が濡れないようにと優しく肩を抱き寄せた。
「……晶は優しいね」
「そうか?」
「うん、晶はずっと優しいよ」
腕にしがみつきたくなったが、珠洲は晶とそういう関係じゃない。あくまで幼なじみで、仲の良い友達がいいところだ。そこまで迷惑をかけたくない珠洲は、この心地よい距離がいつまでも続けばいいと願った。
雨足は強いまま。腕越しに伝わる熱を晶も感じてくれたらいいと珠洲は一人思う。