亮司×珠洲

 今晩の夜、玉依姫に会いにくるという【姫】と妖達と相見える。
 保典は自分も参加させてくれと亮司に嘆願したが、敵との実力の差は圧倒的だ。守護者だということを隠している亮司は、保典の気持ちがよく分かった。
 そして、彼が本当のことを理解しておきながらも、珠洲のために何とか参加したいのだという気持ちも。
 珠洲は先ほどのやり取りを聞いてしまったせいで、司書室に来ることはなかった。謙虚なところは美点かもしれないが、珠洲の自信のなさには思うところがある亮司は少しでも元気になる言葉をかけに行こうと司書室から出て、珠洲がいるであろう教室に向かった。
 珠洲は亮司がやってきたことに驚いていた。何かを紡ごうとするその小さな唇に人差し指で止める。柔らかくも弾力のある唇に直接触れることができたなら、どれだけ幸せだろうか。
 亮司の立場は板挟み状態で、どっちつかずになっている現状が辛くもどかしい。
 だからこそ、愛する珠洲には何があっても自分を信じるように言ってきた。何度も、何度も。
 素直で可愛い珠洲は、亮司の言葉をいとも簡単に信じこうして人差し指で唇に触れても別段何を言うでもなく、意味のあることとして受け取っている。
 素直で可愛い珠洲は美しく成長し、玉依姫と呼ばれるに相応しい娘になったのだ。こうしてふと気づいたら触れてしまうほどに、亮司の心を掴んで離さない。
 本当は君の守護者なんだよと言いたかった。
 けれど、それを伝えるのは今じゃない。いつかの未来、避けられぬ宿命に立ち向かう時、共に戦うであろうその時こそ、告げればよいのだ。
 可愛い珠洲。誰にも渡したくない珠洲。
 亮司はその想いに蓋をしながら触れていた指をそっと離す。
「亮司さん?」
 疑うことを知らない無垢な少女は、きっとこの先亮司によって傷つけられるのだろう。消えない傷は心に留まりつづけ、それでも珠洲の中に存在し続けるならばそれでもいいも思えるほどに、亮司は恋焦がれている。
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