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サロルンリムセ

はじまりとおわり


ここは刀剣男士計画が始まってから程なくして設立された、ちゃんと機能していればかなり古い本丸だ。


当時主は21歳。
最初は張り切って頑張っていたが、所詮霊力があるだけで招集された平和ボケしたただの人間。
血腥い戦事にいきなり放り込まれれば、やはり普通の神経では耐えられなかった。

俺達刀の付喪神は、戦があってこそより楽しい訳で。
重傷になったとて、見た目はアレだが折れなきゃ平気だ。

主はそれを、とても気にしていた。
いつも『すまない』『俺の采配が足らずに』と自分を責めていた。

俺達は平気だ大丈夫だと本心から慰め、出陣しなければ政府に尻を叩かれ、すればしたでいつも血塗れ帰城で手入れ時に涙を流す主を、本当に憐れで可愛い人間だと愛していたのだ。



俺は鶴丸国永。
人間共が勝手に付けたレアリティ刀の中の一振。

簡単には降りて来ないと言われていたが、ここでは俺は初太刀で五番目。 結構簡単に俺は降りたらしい。
俺が来てくれて戦力アップにも繋がると主含め皆がとても喜んでくれた。

初期刀の加州と俺で近侍を務め、物として、使われる喜びは主への愛しさともなり、今思えば若く情緒も精神も不安定な所に過多に愛情を注ぎ過ぎたのだろう。

どんどんと思考も感情もおかしくなって行く主を、俺達は慰め励まし、そしてもっと追い詰める。



ある日主は、とうとう切れてしまった。

きっかけは検非違使の襲来だ。

あの日は開戦してる最中に、いきなり時空の隙間から青白い稲妻と共に奴等が現れ、三つ巴の一番最悪の戦になった。

検非違使は男士の最高練度に合わせて来る。

あの時はなんの情報もなかったから知らなかったが、その時一番上は52の加州清光。
後を追って短刀達だが、その差は約10。短刀は刀装も一つきりで脆い。俺は短刀達より練度は低いが刀装は三つ。
出来る限り俺が盾となり攻撃を防いでいたが、結局、検非違使の大太刀に三振の短刀が折られた。

ようやく二部隊作れる所まで来たというのに。


その後から主は人が変わった。

歴史修正主義者との戦が、ただレア刀を収集するという物に変わった。

何処ぞの反吐が出る様な審神者に吹き込まれたらしい。

「レア刀を持っていれば審神者の格が上がる」
のだと。


おかげで俺はその後戦に出されず、すぐに拾える短刀たちが一番の犠牲となった。

レア刀以外は全て使い捨て。
資材は貯まれば鍛刀に回され、常に資材不足。
手入れの資材は無い為、重傷でも放置しそのまま戦場に向かわせる。
折れたらまた顕現させれば良い。


暴力に虐待、罵声に性暴力。
いつでも鉄錆びの臭いと啜り泣きが聞こえ、美しかった本丸はどんどん穢れていった。

一振、初期刀である加州だけは、以前の主に戻すべく必死に全ての事に耐え主を説き宥めていたが、その加州もある時折れた。
主に折られたのだ。お前はうるさいと。

俺はそれまで、初期刀の加州が『俺の責任だから』『俺がなんとかするから』と泣いて請われ謝られ、だからこそ加州の為にと黙ってみていた。

だが、加州を折ったと言う事は、今までの総てを否定し捨てたと同じ事。


もう、とっくに主は狂っていたのだ。

もう、憐れで愚かで愛しい主は戻っては来ないのだ。



俺はすぐに動いた。

この人間を封じ、本丸の地下に閉じ込め霊力だけを搾り取る人柱にしてやった。

これで、ここに残った刀は霊力の供給源を絶たれずそのままここで顕現し続けられるし、手入れも出来る。

人間に振り回されず刀だけで自由に出来る。なんて楽しいんだ!


ああ、そうだ。
審神者はいないが戦だけは手を貸してやろう。
なんだかんだで皆、戦いは好きだからな。

以前近侍をしていた時に、使い方を覚えたパソコンとやらで政府にそう、通達してやった。

その時の政府の対応はなかなか面白かったぜ。


だが、政府はその後何人も人間を送って来た。

ここは一応政府の作り上げた場所だし、俺達が暴走したり寝返られては困ると言う事だろう。

自分達が創り上げた世界で一番


『お綺麗』な『兵器』だから。


だから、何としても政府の管轄下に置いておかねばならないのだ。

俺達には、たいそれた思想等さらさらない。
身体を得て敵対するモノが明確にあり、ソレを排除しろとの命が先にあったのだから、それを遂行する以外に何も無い。


刀は戦が大好きだ。
 

だが、自分達の矜恃を曲げてまで戦う事はしない。

俺達の願いは、もうこれ以上干渉して欲しくないだけだったのだが…



人数が多かったり少なかったり蟻の様に人がやって来た。

まあ基本的に話しは一方通行で全くもって通じないから、悪いが全員殺らせてもらった。


こうすれば、政府故にそのうち人を送れなくなるだろうと。



ああ、霊力のあるやつは少し動けなくして人柱の贄したから、もしかしたらまだ精神が生きているのもいるかもしれない。

あの場所は永遠だからな。
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