日記

       

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  • プチオンリー開催おめでとうございます

    20221218(日)00:00
    お久しぶりの日記です。なかなか更新出来なくてすみません。(前回からもしかして半年ぶり……?)

    まずはいずまこプチオンリー開催おめでとうございます!!私は現地で参加は出来ないのですが、Twitterで参加される皆さまの様子をずっと見てきたので一緒にこの日を楽しみにしていました。最近ではいきなりキズモ時代の詳細が来たりといずまこ的にも濃い一年になりましたよね。村が栄えていると私も嬉しいです。

    さて、今回のイベントですが、なんとかろ太さんから合同誌を一緒に出しませんか?とお誘いをいただき、及ばせながら私も合同誌という形で参加させていただくことになりました。テーマが「遠距離恋愛」ということで、私は瀬名泉くん視点のお話を書いています。本当はかろ太さんと内容を合わせたいなと思っていたのですが、いざ原稿を始めるとそんな余裕もなく……かろ太さんはゆうくん視点のお話だと思うので(まだ読んでいないのであれですが)そこは違いが出て良かったなと思います。
    遠距離恋愛で尚且つ瀬名泉くん視点ということはどうしてもフィレンツェの描写を書かなくてはなりません。ただ私はイタリアはおろかヨーロッパにも行った事がないので、ひたすらYouTubeでフィレンツェの街並みを眺めたり、ネットで調べたりと画面越しの知識だけなので何か間違っている表現があったらすみません。いや、ほとんど間違えていると思います。でもまぁそこはエアフィレンツェなので。
    タイトルは色々迷って最終的に『12月生まれのプロムナード』に決めました。泉は12月のクリスマスの街である物に出会います。そしてこれから自分の歩く道筋を考え始めます。
    最近二次創作活動から離れていたので久しぶり文章を書いたのですが、時系列がいきなり過去の回想に入ったりとバラバラになっていてとても分かり難いと思います。自分でも書きながら思ったのですが、上手く組み立てが出来ず。なので、もし購入された方で分かり難い部分があったら解説しますのでDMでもコメントでも気軽に何なりとお申し付けください。

    参加されるサークル様。イベント後にどうか通販のご慈悲がありますように。大量のいずまこ本を読んで年を越したいものです。
    (あと出来れば年内に一本ぐらい何か書ければ良いなと)


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  • 朝のひばり

    20220613(月)22:44
    遅くなりましたが、マタニュイwebアンソロジー開催お疲れ様でした。光と闇がテーマという事で、光はふたりの日常から溢れ出る優しい光景、闇は切なくも美しく丁寧に命を扱った作品が多かったと思います。どちらも素晴らしく、また利き小説企画は結果が分かるまで感想が言えなかったことがもどかしく、ひとりで悶えていました。笑
    解答に参加されて居ない方であんの作品を当てられた方は居たでしょうか?もし、居てくれたなら嬉しいです。



    《朝のひばり》

    夜の帳とバトラーという名のとおりマタニュイはどうしても闇のイメージが強く、私も暗い話を書くことが多いのですが、今回は敢えて光を選びました。光と闇。六時と零時。朝と夜。もちろん朝はマタンを現す言葉なので、朝について調べているうちにシェイクスピアの一文が私の目にとまりました。
    「まだ朝にはならないわ。あの鳴き方はナイチンゲールよ。ひばりではないわ」
    これはジュリエットがロミオと離れたくないあまりに、まだ朝は来てないと嘘をついて懇願するシーンです。ひばりは朝を象徴する鳥。ナイチンゲールは夜に鳴く鳥と言われています。そしてひばりの歌声は清浄な愛を表しているらしいです。このまっすぐで清浄な愛が私の中のマタンにぴたりと当て嵌ったので、そのまま題名として使うことにしました。作中、ニュイがひばりは自分に似ていると言っていますが、それはフェイクでこの話のなかでは実はマタンの方がひばりになっています。夜の帳を下ろすのはニュイで、朝を告げるのはマタンの役目です。



    《雨上がり》

    これは、いちばん最初に考えた朝のひばりの話が、マタンに可愛がられているひばりに嫉妬したニュイが僕のことも可愛がって欲しいと甘えるだけの話だったのが、なぜか書いているうちにマタンが見送る側の飛べない鳥になり、そういうことを言う雰囲気ではなくなってしまったので、その名残りで書きました。マタンの心配をしていたらなぜか自分が世話を押し付けられ、凶暴なひばりに翻弄されてそれどころではなかったみたいです。笑
    お気に入りは部屋に残ったマタンがひばりの羽根を硝子瓶に集めるシーンです。瀬名泉くんもマタンも愛情深いくせに素直ではないので。


    久しぶりにマタニュイを書けて楽しかったです。夢のような企画を与えてくれた主催のかろ太様、作品を読んでくれた方、本当に有難うございました。またマタニュイ書きますね。
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  • DMお返事

    20211024(日)01:58
    りの様>薄花色のフィネライユの感想有難うございます。

    ニュイがマタンの瞼に朝顔の雫を垂らす場面は、シェイクスピアの真夏の夜の夢に出てくるいたずら妖精のパックが惚れ薬を瞼に垂らすシーンが好きで意識して書いたのですが、言われてみると確かに朝顔の君にも当て嵌るかもしれませんね。これは自分でも気付けなかった嬉しい発見です有難うございます。

    グランパクロックを書いた時点では、まだ二人が暗闇を彷徨う魂になるとは思わず。ニュイはその後、マタンに逢えない寂しさと孤独さに涙を流しながら、大時計の前でひたすらマタンを待ち続けることになります。もしかしたらグランパクロックに出てきた幽霊はとうにいないのかもしれません。

    オーロージュが春を花を担当しているのは彼だけが白亜の舘に残る設定なので、季節の変わり目とともに新しい執事候補を出迎える為もあるのかなぁと。マタンとニュイが夏を担当しているのは、単純にこの後マタンが亡くなってしまうので、マタンの刻は嫌いだった夏の季節で止まってしまいます。摘まれた花がらのように子孫を残す事もありません。この話、最初は【真夏のフィネライユ】という題名だったのですが、もう二人で夏の花を見る夢が叶わなくなってしまうので【薄花色のフィネライユ】に変更しました。淡い薄花色はマタンの色です。


    19世紀のフランスをイメージして書いているつもりなのでこの時代はまだ厳格なカトリックが主流なのかと。その中でニュイは神様を信じていない自分だけが異端なのではないかと、もし気付かれたら白亜の館を追い出されてしまうのではないかと不安に駆られながら生きてきました。なので、この世に生を受けた時から神様に愛されてる純粋なお嬢様の魂だけは、自分のように穢れさせたくないとニュイは強く願っているのです。汚れるのは自分達の手だけで良いと。

    自分のなかのマタニュイは最後にふたりで幼い頃のように寄り添いながら幸せな夢を見て終わらせると決めてきたので、そこを読み取って頂けて本当に嬉しいです。いつも素敵な感想有難うございます。
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  • 薄花色のフュネライユ

    20210919(日)02:33
    いずまこwebオンリー第二回目の開催おめでとうございます。この日に合わせて何か出来ればとマタニュイを書いていたのですが、相変わらず祝いの場に似つかわしくない内容になってしまったので、ここでいつもの様にひっそりと公開させて下さい。最初はもっと幸せな終わり方になる予定だったんですけど。おかしい。何故なのか……。


    同じ夏の話ですが、時系列的には「ルグレの森」のひとつ前の話になります。マタンは夏に両親を事故で亡くしていて、どうしてもこの季節になると精神的に体調を崩しがちになってしまいます。私のなかではマタンは繊細なので。逆にニュイは結構図太いと思っています。笑
    (ちなみに夏の花を何にしようか悩んでいたところ、フォロワーさんからフランスの夏にも素敵な青の朝顔が咲くことを教えて頂きました。有難うございます)


    ニュイが神様を信じていない設定はTwitterの方で書いた140字のお題の時に作りました。マタンが厳格なクリスチャンなのに対し、ニュイの信じるものが神ではなく、マタンやお嬢様であれば彼が強くなれる理由になるかと。
    バトラーのイベントから新たにマタニュイという概念が生まれて、詳しい設定が無い分、自由に書いてきたのですが、これは私の悪い癖で「ブル・ア・ネージュ」の話で二人とも死に引き摺られる形になってしまいました。なのでこのシリーズは実は二人が白亜館で生きていた頃の幸せな思い出と言う意味で《スヴニールな時間を貴方に》という題名を付けました。
    今回の話の途中でマタンは、もしニュイが暗闇に迷ったら自分が迎えに行ってあげると約束をしてくれます。ニュイはその約束に大きくなってからも何かを返したいとずっと思っていました。身体を求められた時は嬉しいとさえ。結果的にマタンは苦しみますが。
    そして、悔しくも自分ではなくマタンが闇に取り残された事を知ったニュイは自分の命を捨てて彼を探しに行きます。マタンがしてくれた約束をニュイが代わりに果たす形で二人の白亜の館での生涯は幕を閉じました。そこからは泉さんとゆうくんがバトラーの撮影に至るまで、永光といえる程の時間が流れます。泉さんとゆうくんはマタンとニュイの肉体の生まれ変わりで魂は別のものと私は考えているので、全然性格が違ってもそれはそれで面白いと思います。
    そんな二人の話も私の中で今回で終わりにしたいと思います。不穏な文で終わっていますが、最後にマタンの隣で眠るニュイは幸せな夢を見れたのではないでしょうか。

    終わりと言いましたが、その後の白亜館にひとり残ったオーロージュの話や、以前Twitterのほうで少し書いた泉さんが撮影でフランスに行った際にお嬢様の末裔に出逢う話は機会があれば書いてみたいなぁと。

    マタニュイを生み出してくれてありがとう、ハピ〇レ…!もしかしたらハ〇エレに感謝するのはこれが初めてかもしれません。笑
    いや、いずまこに出逢えた時点で感謝します。ありがとうハ〇ピーエレメンツ…!
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  • ルグレの森

    20210717(土)22:18
    「マタン、まずはこの子を浴室に案内してあげなさい。そうだな…それから髪も整えて」
    「かしこまりました旦那様。…ほら、もたもたしてないでさっさと歩く」

    この館に着いて最初の命令は長年染み付いた垢を落とすことだった。冷たい水じゃない。たっぷり張られた温かいお湯に驚いていると問答無用に石鹸で全身を擦られる。痛い。痛いよやめて。僕の声なんかまるで聴こえてないのか幽霊みたいに無視して表情ひとつ変えない。『マタン』と呼ばれていたこの乱暴な子も僕みたいに旦那様に拾われて来たのかな。綺麗な子だからてっきりこのお家の子供かと思った。でも貴族は使用人のお風呂の世話なんかしないことぐらい僕も知ってる。

    僕が旦那様に拾われたのは偶然だった。使えない奴だといつものようにお仕置されていると、それを見ていた旦那様が突然僕を引き取ると言い出したのだ。前の旦那様は最初は変な顔をしていたけど、どうせこいつは器量だけが取り柄だからもう少し大きくなったらそのうち売り飛ばそうと思っていたんですと、にこにこと見た事ない笑顔で喜んで僕を引き渡した。《きりょう》ってなんだろう。よく分からないけど僕はまた売り飛ばされる予定だったらしい。

    「…あまり人の顔はじろじろ見ない。切りづらいから目、閉じて」

    シャキリ。ハサミの先が怖くてぎゅっと目を瞑る。

    「旦那様に引き取られたことを幸運に思いなよ。ここにいれば飢えで死ぬこともないし、贅沢に個室も与えられる」

    シャキリ。裁ちの音とともに暗かった視界が開けていく。

    「だから死に物狂いでこの家に貢献しな。…ほら、出来たよ」

    コトリ。ハサミを置く合図につられて鏡の中の自分と対面する。ちょっと毛がないひよこみたいで変だけど文句は言えない。だってこれから彼は僕の教育係になるらしいから。僕よりも少し大きな手に引かれて広い廊下を歩く。冷たいけれど、その手がほんのりあたたかくて僕の不安を少しだけ溶かした。


    そして僕は名前を与えられた。

    『ニュイ』

    それがここで生きていく為の僕の新しい名前。




    -----------------------------

    遅くなりましたが解説みたいなものを。Twitterのほうでひと月程、ニュイについて考えてみました。いつものスヴニールがお嬢様の照らす明るい光なら、ルグレの森は執事たちの闇なので鬱蒼とした雰囲気になっています。なのでこの話は別と考えて頂いても良いです。

    これはただの自分設定なのですが、両親のいないニュイは幼いながらも大人達に蔑まされて生きてきました。館に来た最初の頃は慣れない環境にすっかり塞ぎ込んでしまいます。そんなニュイのこころを最初に開いたのはマタンでした。その後、愛情を覚えたニュイは今まで失っていた分を取り戻すかのように、館で働く優しい大人達にも素直に甘えるようになります。(ゆうくんと違って甘え上手なニュイ。私のなかでは違う人格なので)
    数年後、前任の執事長はニュイが他の子とは違う異変に気付きます。ニュイはこの館を守る為なら、人を殺すことに全く躊躇いが無いのです。それは異常な執着心という名の愛でした。マタンもその事に気付きながらも、そんな悲しい彼を愛さずにはいられないのでした。

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  • DMお返事

    20210616(水)19:33
    みよ様>意外と女装物がお好きな読者の方が多くて嬉しいです。メイドゆうくんのスカートの下にはご主人様のロマン(妄想)が詰まっております。
    ピンクのフリフリメイド服、確か裏ゆうくんにも気持ち悪いと拒絶されてちょっと可哀想だなと思った表ゆうくんが「捨てるくらいならそれちょうだい。だって僕の為に用意したんでしょ?」と着てくれた記憶があります。表ゆうくん、何だかんだと不満はありますが、ちょっと過激で気持ち悪いご主人様に慣れ……好きみたいです。ピンクのメイド服はご主人様からゆうくんへの愛情の証。それに応えてあげるのも愛なのではないでしょうか。

    女体化も大好きなのですが、やっぱりかわいいゆうくんにおちんちんがついている方が興奮するので、個人的にはスリットから太腿がちらっと覗くチャイナドレスを着ているゆうくんが見たいです。笑

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  • DMお返事

    20210610(木)22:39

    pui様>女装物は結構人を選ぶと思い、最近はフリートの方でこそこそと画像をあげたりしているのですがお好きな方が居てくれて嬉しいです。ぬうくんまで見て頂いて…。
    ゆうくん、背は少し高めでも華奢で本当に可愛いお顔をしてるので絶対に女装似合うと思います。握手しましょう!

    大事なところにシュシュ……呟いてましたね。笑 どういう経緯でそういった発想をしたのか記憶が曖昧で思い出せないのですが、確かシュシュの画像検索までしてぴったりな物を探していた記憶はうっすらとあります(ずっと気になっていたみたいなのにすみません)
    メイドゆうくん、ノーマルゆうくん。どちらが着けても妄想が広がりますね。


    メイドゆうくんの世界線ならこんな感じでしょうか?

    「泉さん」
    「どうしたのゆうくっ…?!」
    頬を染めたゆうくんが恥ずかしげにスカートを捲る様子を息を飲んで見つめる。ベールに包まれていたその中心には真っ白なフリルの装飾が施されたシュシュが巻かれていた。震えるピンク色とのコントラストが愛らしさと卑猥さの両方を際立たせている。
    「前に僕におちんちんがついててもいいって言ってくれたでしょ?だから少しでも可愛くなろうと思って…泉さん、僕のおちんちんも愛してくれる?」
    「ゆうくん…(ジーン)もちろんだよぉ♡ここもたくさん愛してあげる♡♡♡まずはキスから…」
    「あっ…♡」


    ---------------------

    「夢。」



    「ねぇゆうくん。これ着けてみない?絶対似合うと思うんだけど」
    「(…なんで女の子のシュシュ?)なんか気持ち悪いからイヤ。」


    pui様も是非ゆうくんのシュシュを着けた姿を想像してみて下さい。そしてどんなシチュかこっそり教えて頂けてると嬉しいです。懐かしい呟きまで憶えていてくれて有難うございました。
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  • DMお返事

    20210601(火)21:15
    たかし様>裏メイド物語りの感想有難うございます。ゆうくんのお父さんに借金があったりと世界は違えど家庭環境は同じなのですが、表のゆうくんは明るく、子供っぽく。裏のゆうくんはシビアに、壊れやすく書いているつもりなので性格の違いに気付いて頂けて嬉しいです。
    ゆうくんが普段監禁されているお仕置部屋(以前日記に書いたものでちらっと防音の部屋が出てくるのですが)実は鍵が掛かっていないので、逃げようと思えばご主人様の居ない間に逃げることが出来ます。それでもゆうくんは肩代わりをして貰った借金のことや、更に酷いお仕置をされるのではという恐怖心から逃げ出すことが出来ませんでした。そして自分の本当の気持ちに気付いたゆうくんは、愛して貰えるならどんなことをされてもいい。この人の傍にいられるなら自分の感情はどうなってもいいと、次第にこころが壊れていきます。泉さんは望み通りゆうくんのこころと身体を手に入れました。でも手に入れれば入れる程自分自身も傷付き、手に入れた器の中身は空っぽで満たされず虚しいばかりでした。かけ間違えた形から始まったふたりの関係ですが、いつかゆうくんのこころが戻った時に新しい形の愛が生まれればいいなと思います。
    表のふたりの関係も落ち着いてきたので、久しぶりに裏のふたりに触れてみようと思い切って再録作業をしてみました。いずまこは表も裏、どちらも想像するだけで楽しいです。
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  • 表と裏のメイドゆうくん

    20210530(日)22:17
    お恥ずかしながら以前privatterの方で上げていた裏メイド物語りを少し修正して再録してみました。(でもあまりえっちなものが得意ではないので、もしかしたら耐え切れずにこっそり消してしまうかもしれません。すみません)
    いつものメイド物語りが甘い雰囲気なので、せっかくメイド服を着てるなら鬼畜な調教ものも有りかと思ったのが確か書いたきっかけだったと思います。

    《優しすぎるからもっと強引に触れて欲しい》と密かに思っている表のゆうくんで、《時々で良いからもっと優しく愛して欲しい》と願うのが裏のゆうくんです。ふたりの夢がリンクしてお互いの視線が入れ替わってしまうというお話でした。自分のパラレルワールドなのでもはやなんでもありです。
    寝ているゆうくんに対して夢じゃなくて現実の俺の方を見てよ、と起こさないように優しくキスをするのが表のご主人様で、心と身体を壊してでも手に入れたいと思っているのが裏のご主人様で、それぞれ愛し方が違うのも面白いかと思って当時は書いていました。

    たまにゆうくんだけ目が覚めたら違う世界に入れ替わっている事があるのですが、裏泉さんと表ゆうくん。表泉さんと裏ゆうくん。それぞれ違うパートナーと過ごす事で愛の形を見つめ直すきっかけになったり。ちなみに私は裏泉さんがお気に入りです。笑

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  • メイド物語り(後編)

    20210522(土)20:58
    僕はその日夢を見ました。昼間観た虹色のステンドグラスに祝福されながら、純白のタキシードを纏って微笑むあの人の手を取る夢を。

    僕のその指には―――。




    「…ひま。」

    フィレンツェ滞在4日目。僕は早くも暇を持て余しています。だって、だって、ずっとホテルの部屋にひとりぼっちなんだもん。さすがにゲームと睨めっこするのも飽きちゃった。心配だからホテル周辺しか出歩いちゃダメって言われてるし。僕がお外に出るのは陽気に挨拶してくれるハウスキーピングさんが来る時間だけ。(ご主人様がお礼の言葉を書いたメモ付き)チップも弾んで部屋は毎日清潔でピカピカ。おかげで掃除もする事がない。


    中世の映画でしか見た事がない部屋に声を上げて固まった僕に、良い部屋でしょ。ゆうくんのお部屋はこっちね。なんてにこにこ案内するご主人様は移動疲れと時差ぼけでまる1日寝込んでいた僕とは違い、爽やかな鳥のさえずりが聴こえる時間から日が暮れるまでお仕事へ。
    このホテルも無理を言って撮影スタッフさん達とは違うホテルを取ったらしい。そりゃあそうだよね。僕、最初ここ普通にお城かと思ったもん。天蓋ベッドにお掃除メイドから一気にお姫様になった気分。撮影がはやく終わった夜にはホテル内のリストランテで一緒にご飯は食べてくれるけど……。

    「少し期待してたのに……泉さんのばか」

    もしもの時のためにと、スーツケースのすみっこに隠して一緒に連れてきた小さな潤滑剤は未使用のまま。でも仕方ないよね、僕はただのおまけで泉さんは大事なお仕事しに来てるんだから。ハードスケジュールに疲れた寝息を立ててるご主人様のベッドに甘えて潜り込むなんて僕には出来ない。いや、今してるけど。天井のシャンデリアに向けて左手を翳すと、教会で見付けた天使の輪が微笑んでいる。

    プロポーズだと思って良いんだよね……?

    僕なんか何をやらせても失敗ばかりのドジメイドなのに、泉さんは僕なんかのどこがいいんだろう。え、えっちだってまだしてないのに。庶民の僕でも知ってるイタリアンブランドの指輪の重みに気持ちと身体が焦っちゃう。幾らするんだろうこれ…いや、こわいからネットで調べるのはやめておこう。うん。気分転換にホテル内の庭園でもお散歩しに行こうかなぁ。そうだ、どうせお外出るならそのまま歩いて市場に行ってみよう。ガイドブックで見てちょっと行ってみたかったんだよね。前に僕が居ないって泉さんパニックになって警察呼ぼうとしたから一応どこに行くかメッセージだけ送っておこう。後で怒られるかもしれないけどホテルからそんなに遠い場所じゃないし、それに僕だってもうちっちゃい子供じゃないんだから大丈夫だよ。少し皺のよったご主人様のベッドをささっと手直して自分の部屋のスーツケースを開ける。
    実は持って来たんだよね、メイド服。これ着てお帰りなさいってお出迎えしたら泉さん喜ぶかなぁ。

    僕はまだ子供で。この時は自分の軽率な行動に後ですごく後悔する事になるなんて全然考えもしなかった。






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    眺めるだけでも楽しい宝石にキラキラしてるみたいなフルーツ。おいしいチーズの匂いに誘われてつい食べ過ぎちゃったお肉がたっぷり挟まったパニーニ。あとやっぱり欠かせないのは本場のジェラート。初日に食べてからすっかりお気に入りで、今日は口煩いご主人様もいないからオプションの生クリームもたっぷり乗せて貰っちゃう。

    「Buona giornata! (良い一日を)」
    「ありがとう!…え~っとGrazie!!」

    慣れない翻訳アプリを使いながら泉さんへのお土産を選ぶと、恰幅の良いお店の女の人がウインクをしながら紙袋にトマトをサービスで詰めてくれたので手を振ってその場を離れる。楽しかったなぁ。かしこまった美術館やレストランも貴重な体験だけど、僕は現地の人達に触れ合えるこっちの場所の方がゲームのダンジョンみたいで好きかも。


    賑やかな騒音から少し離れた裏路地に、トマトが入った紙袋を落とさないように思わず両手で握り締める。来る時も思ったんだけど、ここ薄暗くて苦手なんだよね。でもホテルに戻るには近道だし。日中見掛けた怖そうな男の人達も今は居ないから大丈夫。大丈夫。

    大丈夫……。背後から忍び寄る足音に、気付いた時にはもう遅くって。

    僕は硬い石の上に散らばった赤いトマトがぐちゃっと踏み潰されるのを声も出せずにただ見ていることしか出来なかった。




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    「ただいま。ごめんね、ちょっと遅くなっちゃった。市場までちゃんと行けた?返事も既読にならないから心配で心配で……ゆうくん?もう寝てるの?」


    泉さん、帰って来ちゃった。こんな真っ暗な部屋に閉じこもってないで、ちゃんとお出迎えして謝らないといけないのに。思い出すだけで体が震えて動けない。控え目なノックと共に現れたご主人様の顔を見て緊張の糸が解けたのか、新しい涙が止まらなくなってしまった。

    「ふっ…うっうぇ…」
    「どうしたのゆうくん?泣いてるの?まさか…っ」
    「泉さ…ごめんなさっ…ごめんなさい…僕っ」
    「ゆうくん落ち着いて。まずはゆっくり息を吐いて」

    上手く呼吸出来なくてしゃっくり上げている僕の背中を優しい手が摩ってくれる。ちゃんとこの人の言う事を聞いて大人しくしていれば良かったんだ。でも、今更後悔なんかしてももう遅い。

    「話したくない事は言わなくて良いから何があったのか俺に話してくれる?」

    震える僕の手に指がそっと絡む。あの時と同じなのに、僕の指にはもう、その資格は。

    「指輪…」
    「うん」
    「泉さんが僕にくれた大事な指輪……盗られちゃった。男の人達三人に囲まれて怖くて抵抗出来なくて…それでっ…んっ」

    もう無理して喋らなくて良いよ。優しく触れるような唇に塞がれて言葉が止まる。

    「ゆうくんが無事で良かった。逆に指輪のせいで怖い目に合わせちゃったね。ごめんね」
    「どうして泉さんが謝るの…?ひとりで出歩いた僕が悪いのに」
    「うぅん、ゆうくんは何も悪くないよ。ゆうくんの気持ちも考えないで強引に押し付けようとした俺が悪いの。それに下手に抵抗しなくて正解だったよ。最悪な場合レイプされたり命を奪われることだってあるんだから」
    「レ……」

    想像もしていなかった恐ろしい単語に思わず血の気が引く。興味を向けられたのがハイブランドの指輪と無けなしの小銭だけで良かった。いや、指輪奪われたのは良くないんだけど。

    「ゆうくんは自分が思ってるより魅力的なんだから。はやく結婚して俺だけのゆうくんにしておきたいぐらい」

    変なの。相手なんか選り取りみどりの筈なのに、お姫様に忠誠を誓う騎士みたいに嬉しそうに手の甲にキスなんかして。そんな事考えるの泉さんくらいだよ。

    「僕、男だよ」
    「知ってるよ」
    「おちんちん付いてるし」
    「ゆうくんにおちんちん付いてなかったら大変でしょ」
    「なんでそんなに僕のこと好きなの?」
    「愛してるじゃダメ?」
    「うん」

    これでメイド服が似合うからとか言われたら蹴り飛ばしてしまうかもしれない。

    「ん~。……これを言ったらまたゆうくんに変態って言われると思ったから黙ってるつもりだったんだけど。ゆうくんさぁ、ちっちゃい頃〇〇町に住んでたでしょ」
    「うん。5歳くらいまで住んでたけど…」

    お母さんに聞いたのかな。引っ越す前の話だ。

    「俺も近くに住んでたの。親の方針でキッズモデルを始めたんだけど、その頃は周りの期待に応えなくちゃとか、今考えるとつまんない子どものイジメなんだけど嫉妬に押し潰されそうになって、学校帰りに仕事に行くのがとにかく嫌で嫌で仕方なかった。でもそんな時、通り道にある写真館に飾られた朝顔の妖精の写真を見て目が離せなくなったんだ」
    「あ……」

    まだお父さんが居て、お母さんも笑顔だったあの頃。僕はふたりに手を繋がれて町のちいさな写真館に連れて来られたんだ。女の子と勘違いしたお店の人が僕にぴったりな衣装があるって朝顔のお花がたくさん散りばめられたドレスを持ってきて、かわいいかわいいって褒められたものだから僕もこれがいいって譲らなくて。しあわせな笑顔をしていたと思う。

    「その子の笑顔がね、凄く魅力的で見ているだけでしあわせで、俺もこんなふうに人を惹きつけるモデルになりたい。周りの視線なんかに負けるもんかって自分を奮い立たせるきっかけを作ってくれた。女の子だと思い込んでたけどあのパーティー会場でゆうくんを初めて見た時、ひと目であの子だって分かったよ。この前ゆうくんのママに写真を送って貰って確信した。あぁ、もうこれは運命だなって。メイド服は俺の趣味だけど」
    「変態」
    「うっ」

    こっちはいい迷惑だよ。勤めていた仕事は無理やり辞めさせられるし、男なのにメイド服は着せられるし。セクハラされるし。

    でも、自分がそんなに彼の運命に関わってるなんて言うならさ。

    「泉さん、話してくれてありがとう。僕…守られてばかりの子どもじゃなくてはやく大人になりたい。泉さんの手で大人にして欲しい」
    「ゆうくん…それって…」

    僕の運命も責任とって引き取って貰わないと困るよね。だけど僕には大人になる前に色々と準備がある。

    「でもその前にお風呂に入りたいな」







    -------------------------






    じわり、じわり。

    純白のリネンにイタリアントマト色の染みが映えていく。

    「どうしよう……血がっ」
    「大丈夫、これぐらい平気…痛っっ」
    「うぅぅ…」


    大変です。なんと億の価値があると言われているモデルの顔面を思いっきり蹴り飛ばしてしまいました。

    だって…!だってあんなところ舐められるなんて思ってなかったんだもんっっ!!

    「僕、やっぱり着いて来ない方が良かったのかも…」

    たくさん心配掛けさせた挙句、モデルの命とと言える顔に怪我までさせるなんて。こんな酷い運命の相手なんかやっぱり願い下げだよね。おそるおそる顔をあげると、赤く腫れた鼻を隠すように押さえたご主人様が「次は新婚旅行で来ようね」なんて笑ってくれるものだから、僕はまだまだ大人になるには程遠いなぁと泣きながら頷いた。

    大切な指輪は無くしてしまったけれど、僕はこの旅行でそれ以上に運命と言う大切な物を手に入れるのでした。






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    フィレンツェの知識は全くないので相変わらずのエアフィレンツェですが、ホテルはフィレンツェにあるフ〇ーシーズンズと言うお城みたいなホテルを想像して頂ければと。メイドゆうくん、脱・処女ならず。
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