願い
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深夜目覚めた可那子は、土方の気配がないことに気付き慌てて身繕いをしようとする。
しかし、廊下から聞こえてきた声にふと動きを止めた。
「夜明けを待って、必ず無事に家まで送り届けてくれ」
それは、残った数少ない隊士に指示を出す土方の声だった。
「――私の大切な女性だ。よろしく頼む」
鬼の副長と呼ばれた土方の口から出た言葉。
「歳さま…」
あふれた涙が、頬をすべり落ちた。
許婚だからという理由だけで抱いてくれたのだと思っていた。
しかしそうではなかったのだということを、可那子はこの時ようやく知ることができた。
土方はこのまま行ってしまうだろう。
別れの挨拶もさせてはくれないまま。
しかし土方の気持ちを知った今は、可那子もそれでいいと思えた。
戦いに勝たなくてもいい、自分のもとに戻ってくれなくてもいい。
どうか歳さま…!
遠ざかり見えなくなっていく背中に向けて、ただひとつだけを可那子は願った。
それが、唯一無二の願いだった。
――どうか、生きて――…
(14,4,15)
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