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その日、大吾と可那子、桐生と遥は4人で映画を観に行った。
その後、食事をし街を歩いている時、振り返った可那子はそこにふたりの姿がないことに気付いた。
心配し焦る可那子に大吾は、次の予定はミレニアムタワーだからそこに向かえば大丈夫だと言い安心させた。
結局ミレニアムタワーに着いても遥と桐生には会えなかったが、連れられて行った屋上で可那子は不覚にも一瞬そのことを忘れてしまった。
眼下に広がる美しすぎる夜景に心を奪われそうになり、『ミレニアムタワーの屋上にいます』と慌ててメールを送る。
そうしてからももう少し見ていていいですかと大吾にねだり、もちろんだと答えをもらった可那子は嬉しそうに再び地上の星々を瞳に宿した。
「…可那子」
その横顔をしばらく見つめていた大吾は、小さくその名前を呼んだ。
その大吾の真剣な表情に、振り向いた可那子のそれも自然と真剣なものになる。
「抱きしめてもいいか?」
「…っ、」
突然の大吾の問いに、可那子は小さく首を振った。
大吾に好意を抱いているのは確かだった。
けれどどうしてもあと一歩が踏み出せず、大吾も分かってくれてかふたりきりにならないように気遣ってくれていたのでそれに甘えていたのも確かだった。
そして先ほどの大吾の言葉を受けたことで大吾の男の部分を強く意識してしまい、癒え始めていた傷が疼いてしまった。
そのことが可那子の首を横に振らせてしまったのだった。
「…そうか」
しかしその後、大吾が静かに言うと可那子は知らず口を開いていた。
「――なぜ、抱きしめたいのですか?」
「…え?」
「抱きしめて、心があると思わせるためですか?勘違いした女を抱いて、自分が満足するためですか?捌け口にできる便利な女を手に入れるため、ですか…?」
大吾は驚愕し、言葉を失った。
サシでの紹介はできないと桐生に言われた時からなにかあるとは思っていたが、まさかそんな傷を持っていたなんて。
「ごめんなさい…堂島さんも同じだと、思ってるわけじゃないのに…」
そう申し訳なさそうに続けて俯く可那子にいや、と大吾は小さく答えながら逡巡する。
その傷を俺が癒やしてやる、などとおこがましいことは言えないと。
一緒に背負うなんて、きれいごとだと。
しかしそれでも、諦めることだけはできなかった。
「そうだな、すまない。順番を間違えたな」
大吾は小さく息を吐き、まっすぐに可那子を見た。
「俺はお前を愛している、可那子。だから抱きしめたいしキスしたいし抱きたいと思う。だがそれはお前の心も一緒にだ。お前が嫌だと言うならもちろん何もしないし、それでいい」
正直な想いを大吾は告げ、だから、と続ける。
「俺と、付き合ってくれないか」
傷の疼きはいつの間にか治まっていた。
大吾の気持ちが素直に嬉しいと思ったし、やっぱり自分も、と可那子は気付く。
「堂島さんをもっと…好きになっても、いいですか…?」
「ここまで言った俺が、NOと言うとでも?」
可那子の問いに大吾がふ、と笑ってみせると、可那子も小さくくすっと笑う。
そして大吾は可那子、と呼びながら腕を伸ばし、
「よろしく、お願いします…」
言いながら可那子は、その胸に包まれた。
会話は聞こえなかったが一部始終を見ていた遥と桐生は、ふたりの様子に安心しその場を後にしていた。
当然そうとは知らない可那子は、遥とそして花にメールを送った。
『堂島さんとお付き合いすることにしました』
そしてそのメールを最後に――…可那子は忽然と姿を消したのだった。
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