通い合う心
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店の裏口近くで待つと、お先に失礼しますと店の中に声をかけた可那子が振り返って俺に気付き、小走りにやって来た。
「お待たせしました」
「…いや」
店ではパンツスーツを着ている可那子。
見慣れない私服のスカートがしかしよく似合っていて、俺は思わず見入ってしまった。
それに気付いてかどうか、スカートをきゅっと握りながら可那子が言う。
「いつも顔合わせてるのに、改めてこうして外で会うのって、なんか照れますね」
はにかんだ笑顔がたまらなく可愛くて、俺は抱きしめてしまいたい衝動をかろうじて抑えた。
「さて、どこに行きますか?映画、ボウリング、カラオケ、呑み…」
「俺の部屋」
「…っ、」
何気なく発した俺の言葉に可那子が声を詰まらせる。
「冗談だ、本気にするな。映画でも行くか?」
俺は可那子の頭に一度ぽんと手を置いてから歩き出した。
「…こと、言わないで…」
この時間だと何を上映しているだろうかと考えていると、背中に小さく声が届いた。
「可那子?」
振り返ると、可那子は立ち止まったまま俺を見ていた。
怒ったような、それでいて涙をこらえているような顔で。
「…っ、」
「おい、可那子!?」
直後可那子は、踵を返し走り出した。
「待てって、どうしたんだよ」
「あたし、堂島さんが好きなんです…!」
「っ!?」
追いかけて捕まえ半ば無理やり体を向き合わせた可那子の口からは、俺が求めてやまなかった言葉が飛び出した。
しかし可那子は俯いたまま続ける。
「叶わないのなんて分かってるから諦めようと思ってるのに…、勘違いさせるようなこと、冗談でも言わないでください…!」
その言葉に俺は可那子の腕を掴んでいた手を離し、俯きその表情を隠している髪をかき上げるように頬をなでた。
そしてゆっくりと問う。
「どうして、叶わないと思うんだ?」
「だって、堂島さんとあたしじゃ住む世界が違う…」
持ち上げた視線が哀しげに揺れるが、
「そこに負い目を感じなきゃなんねえのは俺の方だ」
俺がそう答えると、可那子は慌てて首を横に振った。
「そんなことないです!だってあたしは…っ、」
「だったら諦めるなんて言わないでくれ」
俺は可那子の言葉を遮って言う。
「初めは危なっかしい妹みたいだと思ってたのに、いつの間にか女としてしか見れなくなってた。勘違いじゃない、冗談なんかじゃない。俺はお前が好きだ、可那子」
「堂島、さん…」
その時、可那子の瞳から涙がこぼれ落ちた。
しかしいまだ半信半疑の様子の可那子の目じりにひとつ口づけ、驚いて目を見開いた可那子をそっと抱き寄せて俺は訊く。
「なあ可那子、俺と付き合ってくれないか」
そこでようやく、可那子は俺の胸で小さく頷いてくれた。
想いが通じ合ったこの瞬間――…俺は可那子を抱きしめる腕に、少しだけ力を込めた。
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