①
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
明け方目覚めた大吾の腕の中に、可那子の姿はなかった。
大吾は慌てて起き上がりその姿を捜すが、残されていたのはテーブルの上の大吾への手紙だけだった。
読まなくても分かるその別れの手紙に、絶望的な思いで大吾は目を落とした。
『大吾さんに逢えて、本当によかったです。気持ちも、本当に嬉しかった。
でもやっぱり一緒にはいられません。大吾さんに迷惑をかけるからとかじゃなくて…、どうあってもこの先兄妹には戻れないから。どうしようもなく大吾さんを愛してしまったから。
大吾さんは東城会のためになくてはならない人です。その大吾さんの未来を、やっぱり私は守りたいのです。
ありがとう、大吾さん。言えなかったけれど、私も大吾さんを愛しています。 可那子』
「どうして…っ」
大吾は苦しげに呟き、手の中のそれをぐしゃりと握りしめた。
そう、それは別れの手紙などではなく、ただひたすらに大吾を愛していると書かれたラブレターだった。
それなのに、それでも、確かに手に入れたはずの愛しいものがその手をすり抜け消えていくのを――、大吾には止めることができなかった…。
***
その日を境に、可那子は神室町から姿を消した。
バンタムのマスターのもとに届いた手紙には、勝手を許してくださいとだけ書かれていた。
大吾もそれきりバンタムへは姿を現さなかった。
可那子が姿を消した理由も大吾が姿を現さなくなった理由も、戸部には分からなかった。
ただひとつ、ふたりの関係が何らかの形で今までとは変わってしまったのだろうということだけを、漠然と理解した。
そして火の消えたようにさみしくなった仕事場で、今日も常連さんに酒を振舞うのだった――。
4/4ページ