③
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「入籍はお前の誕生日にしよう」
「え?どうして…」
自分の誕生日を大吾に話した覚えがなかった可那子は、その提案に驚く。
「あの事件の時、先生に免許証を見せてもらってな。その時に知ったんだが、ばたばたしてて最初の誕生日を祝ってやれなくて悪かったな」
「そんなこと気にしてないですから…!それに、私も大吾さんの誕生日を知りません…」
大吾の言葉に、可那子も申し訳なさそうに返す。
それを聞いてふ、と笑った大吾は、その耳もとで小さくそれに答えた。
「次の誕生日は、祝ってくれな」
***
数日後、約束通り可那子の誕生日に入籍を済ませたふたり。
その足で今回は東城会本部ではなく、弥生のマンションへと報告に向かった。
「…可那子」
その道中の車内で、大吾が言い難そうに口を開いた。
「必要ないと言っていたが…悪いな、式は覚悟しておいてくれ」
申し訳なさそうな大吾の声に、可那子は改めて思い出す。
大吾は東城会の会長なのだということを。
初めて本部に行った時のことを思い出しながら式を想像した可那子は、泣き出しそうな表情を浮かべるのだった――…。
***
結婚式から披露宴そして宴会へと、パーティーは三日三晩続いた。
体力的な疲れもさることながら、気の遣い過ぎとそれに影響された二日酔い等で可那子は式後体調を崩し、寝込んでしまった。
そのせいで『ご懐妊』の誤報が流れたりした、ある意味思い出深い結婚式から半年ほどが過ぎたある日のことだった。
「お帰りなさい、大吾さん」
大吾を笑顔で迎え、もう少しなので待ってくださいねと言い残しキッチンへと戻る可那子。
大吾はスーツのポケットから煙草とライターを取り出しテーブルに置く。
すると、そこにいつもあるはずの物がないことに気付いた大吾はキッチンに近付いた。
「可那子、俺に何か報告が?」
少しの間の後、可那子はこくりと頷く。
「まだ、自分で調べただけなんですけど…」
「そう、か…」
可那子の言葉に、大吾の中に強い想いが湧き上がった。
新しく芽生えた小さな命。
一度目は守れなかった命。
あんな苦しい想いは二度としたくないし、させたくない…!
大吾は静かにその体を抱きしめ、誓いにも似た言葉を紡いだ。
「今度は、必ず守るから――…!」
(15,8,27)
5/5ページ