雨と虚
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私たちは雨をしのげる大木の下に移動した。
「申し訳ありません…!」
そこで隊長の腕の止血をしながら、私はひたすらに謝った。
「案ずるな。この程度、どうということはない」
隊長は何事もなかったかのように言う。
「本当に申し訳ありません…」
戦いの最中なのに、自分を見失った末の愚行。
自分が怪我をするならまだしも…隊長に庇われ、あまつさえ傷を負わせてしまうなんて。
自分が情けなくて、涙がこみ上げてくる。
だけど、泣けばいいと思っている女だとは思われたくなくて。
私は立ち上がり、隊長に背を向けた。
「…どこへ行く」
「少し…頭を冷やしてきます」
隊長の問いかけに、小さく答える。
「――行くな」
驚くほど優しい声だった。
ますます涙がこらえられなくなってしまう。
瞬きをしたら、こぼれてしまいそうな程に。
「一人に…なりたいんです」
声を震わせないようにするのが精一杯だった。
「行くなと言っている」
「…っ」
繰り返された隊長の言葉に、無礼だとは分かっていたけれどそれ以上答えられなかった私は、そのまま走り出した。
けれど、走り出したはずの私が辿り着いたのは…わずか一歩先の、朽木隊長の腕の中だった。
「…!」
見事なまでの瞬歩。
霊圧の揺らぎさえ感じられなかった。
「もう一度、言わせるつもりか?」
隊長は勢いのついた私の体を難なく抱き止めながら、同じ意味の言葉を更に重ねた。
「私のことなんて、ほっといて下さい…っ」
私は顔を逸らし、目の前に立ちはだかっている隊長から逃げようと試みた。
だけど隊長はそんな私を離すどころか、逆に私の腕を掴む手に力を込め
「泣くなら、ここで泣けばよい」
言いながら私の体を強く引き寄せ…気付けば私は、隊長に抱きしめられる格好になっていた。
「…っ!」
隊長のこの行動と言葉に、もうどうしてもこらえきれなくなった涙が堰を切ったようにあふれ出す。
私は声を殺したまま…隊長の腕の中で、泣いた。