好きなのに、好きだから
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
時間がゆっくりと流れていく。
長い夜になりそうだと仁が覚悟を決めてからしばらく後。
小さく音を立て、遠慮がちにドアが開いた。
開けたのは可那子だったが、リビングルームには入れずに入口で立ち尽くしていた。
「可那子さ…」
「一人はやだ…一緒にいて、仁…」
少しの沈黙の後、可那子が言う。
「…っ」
とても淋しげな様子の可那子を見た仁の中に湧き上がったのは、ただ愛しいという想いだけだった。
しかしすぐに唇を引き結び、静かに口を開く。
「…ごめんなさい」
ソファから動くことができない仁の口から出たのは、そんな言葉だった。
今可那子と一緒にいたら、きっと抱きしめてしまうから。
抱きしめてしまったら、自分を抑えることができないと思ったから。
「正直言って、本当は少し無理してました。俺は…あなたを抱きたくてたまらないです」
「…っ!」
その言葉を聞き仁の言わんとすることを悟った可那子は、
「ごめん私…、ほんと最低…!」
自らを嫌悪し、踵を返した。
「待ってください、可那子さん!」
同時に強く自己嫌悪に陥りながら仁は、慌てて立ち上がり可那子を追いかけた。
閉まりかけたドアを押し開け、その腕を捕まえる。
「ごめんなさい、最低なのは俺です。こんなことを言えば可那子さんがどんな気持ちになるか分かりきってたのに」
申し訳なさそうに言った後、
「抱きたいのは本心ですが――…大丈夫です、待てますから。だって俺は、あなたしか考えられないので」
言いながら可那子を安心させるように笑って見せ、腕を離した。
「――…っ」
その言葉その笑みに、胸がきゅうと苦しくなる。
次の瞬間には、可那子は仁を抱きしめていた。
「可那子さん!?」
「…私だって、仁しか考えられない…、だから…」
焦る仁をよそに紡がれた可那子の精一杯の言葉に、しかし仁はすぐに応えられなかった。
「だめです、俺…自信がないです」
細い肩にそっと手を置く。
「仁…?」
「今抱きしめたらもう…、やめてあげられる自信がありません」
抱きしめなくても今こうしているだけでも、愛しくてしょうがないのだから。
それを聞いて、可那子が小さく笑む。
「いいよ…仁だけのものに、して…」
言いながら、その胸に額をトンとぶつけた。
「可那子、さん…」
仁はその体におそるおそる腕を回した。
可那子の体からはもう、初めのような怯えは伝わってこない。
「…っ、」
ほっとすると同時に、腕に力を込めぎゅうと抱きしめた。
「仁…」
可那子の手が背中をなでる。
力を緩め見下ろすと、それでもまだ不安げに揺れる瞳と視線がぶつかった。
仁はゆっくりと身を屈めた。
二人の唇が一度触れて、すぐに離れる。
そして視線を絡め合い、深く深く口づけをかわした。
強く求めているのにそれでも一方的にはならない仁の優しいキスが、可那子の中から恐怖心を少しずつ取り去っていった。
仁は可那子を抱き上げてベッドに下ろし、キスをしながらそっとその体を押し倒した。
そのままバスローブの紐をほどき、胸もとに手を滑り込ませる。
一瞬びくりと体を震わせたがそれ以上は抵抗しない可那子の、バスローブの衿をゆっくりと開いた。
「見ない、で…」
見つめる仁の視線に耐え切れず、露わにされた胸を隠しながら恥ずかしそうに言う可那子。
「綺麗です、可那子さん」
仁はその腕を解きつつ唇を寄せた。
柔らかな感触を楽しむようにふくらみを揉み、舌で先端を転がす。
「…っ、や、ん…」
小さくこぼれる声すらも愛おしかった。
ついばむように口づけ、体の曲線に合わせて手を滑らせる。
「や…っ!」
仁の指がその中心に触れると、可那子の手が仁の腕を掴んだ。
仁は可那子の首の後ろに回していたもう片方の手で、可那子の顔を自分の方に向かせてキスをした。
そのまま、指先で入口をくすぐる。
「、ふ…っ、ぅ…」
唇の端からくぐもった声を漏らす可那子はしかし、仁の指先が埋め込まれた瞬間体を強ばらせた。
仁は指の動きを止め、軽く音を立てて唇を離し体をずらした。
「やっ!やだ仁、そんな…っ」
仁の目的に気付き焦った可那子が止めようとするが、
「あぁ…っ!」
直後、仁にそこを舐め上げられ声を上げた。
「いや、あ…あぁ、仁…っ」
手の甲で口もとを押さえながら声を漏らす可那子。
埋め込まれる熱い舌の感触に、奥がずくりと疼く。
敏感な突起を舌で転がされ指先でゆっくりと中をまさぐられると、溢れた愛液が仁の指を濡らした。
「仁…」
「…力、抜いてください」
体を起こし、仁は不安げに仁を呼ぶ可那子の頬をなでた。
同時に先端を可那子の中心に宛てがう。
「…っ!」
腰を押し進め先端を埋めると、可那子はぎゅっと目を閉じ顔をしかめた。
「俺を、見て…」
「、仁…っ」
仁はもう一度可那子の頬をなで、可那子の視線を絡め取る。
そして可那子の力が緩むのに合わせひと息に自身を埋め込むと、
「―――っ!!」
可那子は仰け反り、声にならない声を上げた。
ぽろぽろと涙をこぼし、浅く早い呼吸を繰り返す可那子。
「つらい、ですよね…ごめんなさい…」
涙を拭ってやりながら仁が苦しげに訊くと、可那子は小さく首を振り
「謝らないで、仁…大丈夫、だから…」
つらくないはずはないのに、気丈に笑みを浮かべてみせた。
仁は可那子の様子を見ながらゆっくりと抽挿を始める。
眉をしかめてはいるものの、初めほどつらくなさそうで少しだけ安堵した。
「あ、あ、や…っあ、…っ」
抽挿を繰り返すうち、可那子の声に少しずつ艶が混ざり始める。
そして可那子の中の熱さときつさに促されるように、仁の動きも少しずつ速くなっていく。
もう、止められない。
仁は深く深く可那子を抉った。
「あぁ、…っ、お願、…名前…呼んで、仁…っ」
苦しげに眉根を寄せ、可那子は腕を伸ばす。
「、可那子…、可那子…っ」
仁はそれに応え、可那子の体を強く抱きしめた。
「仁、…仁、大好き、だよ…っ」
「俺も…好きです、愛、してます…、可那子…っ!」
切なげに、狂おしげに言葉を絞り出す。
限界だった。
「すみません、もう…っ、」
仁は可那子を強く抱きしめたまま、熱い迸りを可那子の中に吐き出した――。