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蔵本可那子の父親が経営するK社は、このところの業績不振により経営状態が悪化していた。
八方手を尽くしたが事態は一向に改善されず、縋れるのはもうG社のみとなっていた。
アポを取ってからも数週間待たされ、蔵本はようやくG社の実質上の支配者、三島一八に会うことができた。
そこで頭を下げる蔵本に、一八が出した条件はひとつだった。
――蔵本のひとり娘、可那子を差し出すこと。
K社からアポがあった時点で一八は蔵本の目的に気付き、K社及びその周辺を調べ上げた。
そこで得た情報の中に可那子のことが含まれていたのは、至極当然の成り行きだった。
妻を亡くしてから男手ひとつで育ててきた大切な、大切な娘。
もちろん今でも愛している妻のためにも、可那子を差し出すなど考えたくもないことだった。
しかしこの条件を受け入れなければ、何千人もの社員が路頭に迷うことになる。
K社代表としてそれだけはどうしても避けなければならないと、蔵本は断腸の思いで決断した。
否、決断せざるを得なかった。
どこにでもある政略結婚かと思われたそれは、しかし婚姻届ではなく書類に判子ひとつで成立する契約だった。
――蔵本可那子を、三島一八の所有物とする。
ただそれだけの、契約だった。
数十分後、可那子がG社に連れて来られた。
契約が既に成立していたため父娘の会話は許されず、蔵本はむせび泣きうなだれたままG社を後にするしかなかった。
父親が今日ここに来ていることは知っていたが、何故自分までここに連れて来られたのか全く状況が飲み込めないまま一八の執務室に通された可那子は、困ったように目の前の紅い瞳の男を見つめていた。
「あの」
「ついて来い」
口を開くと同時にそう言われ、可那子は歩き出した一八の後を慌てて追った。
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