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本気で挑んだ勝負、仁に本気を出させることはできなかった。
正攻法では仁には勝てない。
力が欲しい。
圧倒的な――力が。
だから可那子はためらうことなく、この場所に足を踏み入れていた。
「なるほどな。それでその体、実験体として差し出すというのか」
目の前の男が僅かに口角を上げた。
左目に宿る真紅の光が、可那子にまっすぐ突き刺さる。
三島一八。
仁が憎む、仁の父親。
巨大企業G社を影で操り、世界を手に入れようと暗躍する男。
そして仁が何より憂うデビルの血、その因子を持つ男――。
「そう、あたしが欲しいのは仁を殺すための力だけ。それをくれるなら、後は好きにしてくれていい」
迷いのない瞳で、可那子は自分を呑み込もうとする紅を跳ね除けた。
「契約成立だ。おい、部屋を用意しろ」
満足げに更に口角を上げ、一八はデスクの上にいくつか並ぶスイッチのうちの一つを押し指示を出す。
「実験開始からは24時間監視する。実験体にプライバシーは存在しない」
「分かってます」
並の人間、ましてや女性に対して発するべきではない、しかし当然のように発せられた一八の言葉にも可那子は平然と頷く。
「よろしくお願いします…三島、さん」
「一八でいい、仁もそう呼んでいただろう」
一八は、可那子が仁と共に三島平八のもとで暮らしていたことも当然のように調べ上げていた。
だから可那子にそう言った一八は、可那子が自分に対し本来どのような感情を持ってここに来たかも全て分かっていた。
敬う気のない敬語も必要ないと言い捨て部屋を出ていく一八の背中を、可那子は複雑な表情で見送った。
こうして今までとは違った方向へ動き始める、可那子の運命。
仁を殺すために、決して最善とは言えずともおそらく一番手っ取り早い方法を可那子は自ら選んだ。
どんなリスクも厭わない。
たとえ命を落としたとしても、それが自分の限界でありそもそも仁に挑む資格すらなかった、ただそれだけのことと可那子は思っていた。
一八の、デビル因子を持つ一八の血を体内に取り込み、自らをデビル化させる――
言うだけなら一言で済んでしまうこの方法こそが、可那子の選んだ自らの運命だった。