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「あたし、行くね」
次の日の晩、可那子はそう切り出した。
急すぎるとも遅すぎるとも一八は言わなかった。
ただまっすぐに可那子を見る。
可那子もそれ以上何も言わず、少しの沈黙の後その姿をデビルのそれに変えた。
同時に一八が可那子の腕を掴む。
『一八…?』
「…行くな。仁は俺が殺す。お前はここにいて、俺のものになれ」
それを聞いた可那子は小さく笑い、そして静かに首を横に振った。
『あたしは仁を殺すために生きてる。だから、だめ』
「――…」
何かを言いかけて、一八は口をつぐむ。
仁の所へ飛んで行く羽だけを与えることはしないと決めていた。
だから、仁を愛し仁に愛された日々のことは教えてはやらない。
ただ以前抱いた疑問の答えが一八の想像通りなのだとしたら、隠したとしてもそれは無意味なのだということも承知の上だった。
初めてはっきりと形にされた一八の気持ちを、可那子は素直に受け止めることができた。
なぜなら可那子も、一八を愛しているから。
なにより失った記憶を取り戻した時から気付いていた。
この気持ちは今に始まったものではないということに。
だから一八と別れる前も再会した今も、こうして過ごしてきた日々はある意味幸せだったのだと可那子はようやく気付いていた。
けれど、それでも。
「ならば、仁を殺して――戻って来い」
その言葉にやわらかな笑みを浮かべた可那子は、背中の翼をゆっくりと大きく羽ばたかせた。
進化の過程に合わせ薄紫色から
「――死ぬつもり、か…」
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