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それにしても、と一八はいい加減イライラしていた。
可那子が一八のもとに来てから二週間ほどが過ぎた。
記憶は相変わらず戻らないまま、廊下で顔を合わせても会釈をするだけ。
「――次会う時は敵どうし、じゃなかったのか」
今もそのまま通り過ぎようとする可那子の腕を、すれ違いざまに掴んだ一八が言う。
瞬間的に体を強ばらせる可那子。
一八は小さく舌打ちし、その腕をぐいと引き寄せた。
「だめです、私…仁が好きなんです…っ」
頬に添えられた手と近付いて来る顔で一八の目的を悟り、可那子は顔をそらし腕を解こうとする。
一八はいい加減イライラしていた。
「お世話にはなってますけど…っや、三島、さ…っ」
気に入らない。
呼び方も、敬語を使う話し方も。
「やだ、…っ!」
無理やり自分の方に向かせ、泣き出しそうな声を呑み込むように口づける。
噛み付くようなキスで口内を犯し、逃げる可那子の舌を捉え蹂躙した。
と、その時。
「――…っ!」
自分の体の奥で何かがドクンと強く脈打つのを感じ、可那子は渾身の力で一八を突き放した。
案外すんなりと自由になった手で唇を拭い涙の滲んだ瞳で一八を睨むと、その場から逃げるように走り去る。
「…ふん、まぁいい」
一八は追いかけることまではしなかった。
ぽつりと独りごち、満足げに口角を上げるだけ。
「目的は果たせたようだからな」
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