⑥
夢小説設定
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そんな状態にある仁の心のタガは、いともたやすく外れてしまう。
「ねえ仁、今日はね」
玄関からリビングに向かう途中、可那子が仁を見上げる。
「いつものお礼に、今日はあたしがご飯作ったの。仁の好きなもの、いっぱい作ったんだよ」
言葉とともに仁に向けられた照れたような笑みが、かろうじて保たれていた理性の最後の砦をやすやすと崩した。
次の瞬間には、リビングのドアを開けようとしていた可那子を仁は抱きしめていた。
「仁…?」
「可那子…」
仁は狂おしげにその名を呼ぶ。
「お前を…、抱いていいか…?」
可那子の体が僅かに震えた。
が、それは決して怯えから来るものではなかった。
「うん…」
可那子の腕が仁の背中に回される。
「仁なら、…いいよ」
「…っ」
仁はぎゅっと目を閉じ、抱きしめる腕に力を込める。
そうした後その腕を緩めると、見上げた可那子の唇に自分のそれをそっと重ねた。
微かに震える唇を、初めはついばむように。
そして少しずつ、その口づけは深くなっていく。
遠慮がちに仁に応えていた可那子の舌が徐々に甘く絡みつき、唇の端からは吐息がこぼれ落ちた。
「――…っ」
「、可那子?」
膝に力が入らなくなった可那子がずるりと崩折れるまで、仁はその唇を貪った。
「ごめ、力抜けちゃった…」
恥ずかしそうに言う可那子に、目眩にも似た感覚を覚えた。
「可那子…」
もう一度その体を抱きしめ、抱き上げる。
向かった先はもちろん、自分の寝室だった。
仁はそこで可那子を抱いた。
ただ可那子が愛しかった。
他には何も考えられなかった。
自分の愚かさに苦笑いが浮かぶほどに――…ただ、愛してしまっていた。
この時、可那子が初めてではないことに仁は気が付いていた。
もちろんそれをどうこう言おうとは思わないし、言えるはずもない。
しかしあの日別れるまで可那子に恋人がいたことはなく、その後は一八のもとにいた。
仁は直感的に確信していた。
可那子の初めての相手は、一八であると。
「可那子、」
「…な、あに?」
「…いや」
記憶のない可那子に何を訊こうというのか。
それに、誰に抱かれようが今となっては関係ない。
今可那子を抱いているのは、他でもない自分自身なのだから。
仁は自分の下で甘く啼く可那子を見つめ――二度とこのぬくもりを離したくない、のに…と、強く抱きしめた――。