⑥
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「お帰りなさい、仁」
「ただいま、可那子」
仁は三島財閥の持てる全ての力を使い、その甲斐あってか可那子はかろうじて一命を取り留めた。
仁に向けられる笑顔だけをとってみれば、それは二人が袂を分かつ前となんら変わることはなかった。
だが、可那子は一つとても大切なものを失っていた。
それは、記憶のすべて。
数十箇所の骨折が癒えリハビリが済んだ今になっても、それは戻らなかった。
同時に可那子の中のデビルも鳴りを潜めていたが、それとてどのようなきっかけで目覚めるか分からない状態だった。
ただ体に染み込んだ記憶は残っているようで、リハビリの一環として、そしてそれが終わってからも可那子は毎日仁と組手をした。
仁にしか相手ができないほどの強さを誇る可那子の格闘スタイルは、やはり三島流喧嘩空手だった。
仁のことも一八のこともそれらに関する全てのことも、何一つ覚えていない可那子。
だから今、可那子は目覚めた時からずっとそばにいてくれる仁を慕っていた。
何も憶えていなかったから。
仁が自分を助けてくれたと信じていたから。
可那子を傷付けたのは自分だという罪悪感に苛まれる仁を、知らなかったから。
仁は可那子を自分のマンションに連れて来て、そこで一緒に暮らしていた。
が、最近はそれを後悔するようになっていた。
なぜなら、仁は可那子を愛しているから。
あの時の可那子の言葉を、自分の都合のいいように解釈してしまいそうになるから。
可那子の全てを自分のものにしてしまいたいという衝動が抑えられなくなってしまいそうだから。
その可那子自身は、記憶を失っているというのに。
1/3ページ