⑤
夢小説設定
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そこからの戦いは壮絶を極めた。
お互い一歩もひけを取らず、それは永遠に続くとも思われた。
――が。
「…?」
仁は可那子の動きにわずかな異変を感じ取った。
攻防を繰り返すうち、その違和感は少しずつ大きくなっていく。
パワーが、増している?
MAXかと思われた力がここに来て更に増していた。
ただ、それだけなら仁が驚異に感じることはあっても違和感として感じることはない。
だが、精度が落ちている…。
そう、それこそが仁の感じた違和感だった。
くらった攻撃は数分前より確実に重い。
しかし数分前より確実に攻撃は当たらなくなっている。
仁は可那子を蹴り飛ばした。
「…!!」
数メートル先に浮かぶ可那子に、仁は少し前の自分の姿を見る。
「しっかりしろ、可那子!!」
仁は叫ぶ。
が、にごった赤銅色の瞳は既に仁を見ていない。
力の、暴走。
『うがああぁ…っ!!』
奇声を発し仁に向かって飛び込んでいく可那子。
仁はそれをかわし、可那子の背後に拳を打ち込む。
地面に叩きつけられる直前でなんとかこらえた可那子が仁を振り返った瞬間、仁は今度はその胸に拳を打ち込んだ。
地面に貼り付けるように繰り出される連撃。
いつの間にか戻った人間の姿で、苦しげな表情のまま、しかし仁はその手を休めることはなかった。
可那子はこのままヒトには戻れない気がした。
ならば、俺の手で殺す…!
可那子の首に仁が手をかけた、その時だった。
「じ、ん…」
自らの血で彩られた可那子の唇から、かすかな声が漏れた。
同時に、その姿は人間のそれへと戻っていく。
「可那子!?分かるのか!?」
馬乗りの体勢だった仁は、慌てて可那子の上から下りるとその体を抱き起こした。
焦点の合わない可那子の視線を、頬に手を添えて誘導する。
「悔しいな…やっぱ、敵わない…」
可那子はその手を弱々しく握った。
そして今にも消え入りそうな、儚く哀しげな笑みを浮かべる。
「ごめん…でも、――だよ、じん…」
空気が漏れるようにこぼれ落ちた言葉。
同時に可那子の手から力が抜ける。
「―――…っ!!」
その体を強く抱きしめ、仁は声にならない叫びを上げた――。
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